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デニス・ホッパー最後のマヌケコメディ『逃げる天使』

こんにちは、コードーです。自分はこの度のデニス・ホッパー特集では『イージー☆ライダー』『ラストムービー』と、合わせておよそ10000字に及ぶ二本の考察を上げてきました。なんともヘヴィーな二本なので、同様にヘヴィーな記事になっちゃいました。特にラストムービーは大変な作業でした…

デニス・ホッパー、最後となる今日は彼の最後の作品を、その雰囲気にふさわしくライトに紹介して終わろうと思います。その名も『逃げる天使』。

概要

ドタバタコメディロードムービー然としたドタバタコメディロードムービー

ここが良かった

・すぐウィリアム・マクナマラの顔芸に頼る所
・丁寧でベタな落とし穴のギャグ
・亀が寝返り打つだけの妙ちきりんなショット
・ボコボコの車がガコンガコン走る味
・にへっとした顔芸のバカ丸出しのエンディング
・その他多幸感いっぱいのふざけたギャグセンス
・あのデニス・ホッパーがこんな映画を…涙

雑感

『イージー☆ライダー』『ラストムービー』と立て続けに撮ったデニス・ホッパー。
その後10年の空白をあけて映画を撮り続け、逝去までに7作品を監督しました。

そのキャリア最後の映画がこの『逃げる天使』。VHSでは『チェイサーズ』の題名で販売されていました。この映画はDVD化もされておらずどこにも配信のない超レア作品。恐らく皆さんは観れません。ごめんなさい。
自分は友人が持っていたVHSで観ることができました。感謝…
観たい人が多ければ貸してもらって上映会とか、チア部として人に知られない映画を共有したりもしたいですね〜

この映画が凄いんですよ!あの二本の前衛的で破滅的な映画を撮った人間が撮ったとは思えないほどに、めちゃくちゃアホで誰でも楽しめるハッピーなコメディロードムービーなんです。冒頭に星条旗までデカデカと出しちゃう。ただ事じゃありません。だってあの『イージー☆ライダー』を撮った人ですよ!?泣けるなあ…

海軍で色々着服とかしてた野郎のエディ。彼は次の日に退職することが決まってたんですが、なんかお呼びがかかって堅物のライリー曹長となんだかんだで、めちゃくちゃかわいい囚人トニを護送をすることになりました。
映画で退職が次の日に決まってるやつが次の日ちゃんと退職できるわけがないので案の定ドタバタ劇が始まるわけです。脱走しまくるトニ演じるエリカ・エレニアックがめちゃくちゃにかわいいです。

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かわいいんですよこの人!

で、この映画が本当アホ丸出しなんですよ。本当にいかにもなドタバタロードムービー然としてる所がもうなんかアホで。

例えば落とし穴のシーン。「ANGER?誰が怒ってんのかしら?」「いやDANGERだ」「DANGERってどこがよ」顔を見合わせる。\ボコーン/
いやいくらなんでもベタ過ぎる。アホすぎる。でもそれがめっちゃ面白いんですね。愚直です。
他にもボコンボコン音立てるボコボコの車がボコンボコン走ってるのとかたまらんですよ。あとはデニス・ホッパー本人がダッチワイフ抱えて出てきたりもします。あからさまなギャグがとても清々しいです。

その一方でなんか妙ちきりんなズレたギャグも外さない。
車が走ってる道路で亀がゆっくり寝返り打つのをアップで撮る謎すぎるショットが唐突に挟まってきたりして、何なんだよ!ってめちゃくちゃ笑えます。

あとエディを演じるウィリアム・マクナマラが、中々どうして哀愁のあるしょぼくれた顔をしやがるもんで。だからってすぐ哀愁ある顔させるんですよ。これも面白すぎる。
で、エディ自身もものすごいバカのバカで。マジで反省しないで好き勝手やって勝手にしょぼくれた顔するもんだから、もう何か笑えます。

そしてこのお気楽なハッピー感!!色々と抱えてる問題が各々にあるんですが、それらを各々破綻なく精彩なドラマを経て描きあげることは特になく、なんだかんだで映画的に明らかなハッピーに向かってゴリ押しでハッピー!!
ご都合主義の極みに到達するエンディングを飾る、トム・ベレンジャーのニヤニヤのマヌケ顔がハッピー過ぎて、バカ笑えます。
そして泣けてしまいます…あのデニス・ホッパーが、冒頭に星条旗を掲げた映画を、こんなにマヌケな最高のコメディに仕立て上げて終わらせたこと。『ラストムービー』の記事でも言及されたホドロフスキーとは違う形で、ある程度人生に救われた部分があったのかな〜と思いました。

DVD化されてくれ…デニス・ホッパーに光を…

(コードー)

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