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架け橋を作るひと ダルデンヌ兄弟

どうもこんにちは。映画チア部の井上です。

気付いたら海外映画ばかり紹介していますね。懲りずに今日も今日とて海外映画。お気に入りのダルデンヌ兄弟作品についてです。

なぜダルデンヌ兄弟かというと、本来なら5/22(金)に彼らの新作『その手に触れるまで』の全国ロードショーが決定していたんです。この騒ぎで延期が決定してますが……しかも来日予定だったらしい……(涙)

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小さな憧れと楽しみ

私、いつかカンヌ国際映画祭に行ってみたいというふわっとした憧れを持ち始めました。自分が面白いな、好きだなと思う映画はカンヌ国際映画受賞作品が多いことに気づいたんです。別に映画祭自体について詳しいわけでもないので、本当に少しずつですがただいま勉強中。

去年もとりあえず開催期間中の注目作品はチェックしてました。『パラサイト 半地下の家族』『家族を想うとき』『デッド・ドント・ダイ』(この作品も延期が決定してましたね)などなど……

ダルデンヌ兄弟の新作情報もその時に知り、嬉しくて嬉しくて心待ちにしてました。日本では2019年12月13日から家族を想うときが公開され、パラサイトフィーバーも乗り越え、まさかだけど劇場公開はないの?と思っていた時に舞い込んだ新作公開情報。やったー!とニマニマ待っていたら延期。泣きました。誰も悪くないけど、いつまで待たなきゃいけないんだ…かれこれ1年以上待っている……

他の作品でも、私のような思いを抱えている映画好きは多いでしょう。待っていればいつの日か見れると分かっていても、楽しみにしている作品の延期が決定するのは悲しいことです。ああ、早く映画館で見たい……

という、この思いを払拭すべく、ダルデンヌ兄弟作品について語りたいと思います!

カンヌ国際映画祭なしで彼らは語れない

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彼らはベルギー出身。ジャン=ピエール・ダルデンヌ(兄)とリュック・ダルデンヌ(弟)の兄弟監督です。約40年間ずっと2人で映画を制作しています。日本でもその名を聞く機会は多いのではないでしょうか。私がカンヌ国際映画祭に注目することになったのも、彼らの映画がきっかけのひとつです。

カンヌ国際映画祭と彼らの関わりは深く、注目を浴びた『ロゼッタ』(1999)でパルムドール・主演女優賞、『息子のまなざし』(2002)で主演男優賞、『ある子供』(2005)でパルムドール(2度目)、『ロルナの祈り』(2008)で脚本賞、『少年と自転車』(2011)でグランプリ…。作品発表するたびに何か賞をとっていく…いやすごい猛者。ほとんどの賞をあげ尽くしてしまったのではないでしょうか。受賞やレビューで見る映画を決めるのは苦手という人もいますが、自分のお気に入りを特定のジャンルに絞りこめない私からすると、これってかなり助かる指標なのです。カンヌが認めた、ということは自分が好きになれる映画かも!というひとつのポイントになるので。

余談ですが、パルムドールは最高賞、グランプリは最高賞に次ぐ賞です。

突き詰めたリアリズムとその中にある娯楽性

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私が彼らの映画に出会ったのは数年前ですが、その表現手法にとにかく驚きました。

音楽はなし。変わったカメラワークもなし。詩的なセリフもシーンもなし。

そういう映画を見るのはほとんど初めてだったので、なんだこの素っ気なさ…随分と地味だなというのが第一印象でした。でも、彼らの映画を見ていくうちに、どんどん引き込まれていくものがある。特に音。物語に音楽っていらないんですよ。(すいません、暴論ですね。そんなことは絶対にないですが。)音楽があると、感情に寄り添え寄り添えと強制されてるようで、かえって冷めてしまう時があるんです。その場の雰囲気になんだかついていけなくて、蚊帳の外にひとり追い出された気になってしまう。

ダルデンヌ兄弟は、元々ドキュメンタリーを制作していたこともあり、どこにでもいるような人物が、社会問題の一部分にかすかに気づかされていく物語を制作し続けています。彼らにとって大切なものは、今を生きるひとと社会の関わり、それから数人の間だけで起こる小さなドラマ。邪魔になりそうなものすべてを切り落として、ただひたすらに人を追いかけていく。その中にちりばめられた思いやすれ違い。

自分たちのすぐそばにある社会問題が「教養ある人だけの難しい問題」として捉えられてしまうのはあまりにも悲しい。

彼らの映画って、困難にある人の背中をさすって、「大丈夫。君ならできる。君だからできるよ」と励ましてる映画なんです。ダルデンヌ兄弟の作品たちは、わたしのような若造と社会とをつなぐ架け橋になってくれているのだと感じます。

映画チア部 井上

引用・参考


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