ひとりで食べる
テレビドラマ「0.5の男」
主人公は実家にひきこもって昼夜逆転の生活を送り、ゲームばかりしている40歳のマサハル。両親に手厚く世話されてきましたが、ある日、妹一家と同居するために住まいを建て替えることになるのがマサハルの日常に生じる転換点。追い出されるわけではなく、二世帯ならぬ「2.5世帯住宅」への建て替えです。0.5扱いされたことに憤ったマサハルに「抗いつづける」というスーパーオブジェクティブが生まれますが、同居を通じて家族と接していくうちに、変化していく展開です。
マサハルはニートのひきこもりですが、不潔な感じはしない人です。たいていが太っていて長髪、汚部屋で本人も不潔に表現されがちですが、マサハルはこざっぱりしています。新居でも、妹の夫は書斎を持てないのに、専用のシャワールーム付き個室をあてがわれます。ゲームの世界ではその才能からカリスマと慕われ、マンザラでもありません。
分析をする場合、二番目の人物は敵であるほうがしやすいので、姪のエマちゃんでしょうか。エマは得体の知れない伯父との同居が嫌でたまりません。見知らぬ子ばかりの中学に進学してストレスもたまっています。同居直後、食べ物を漁ろうと向かった深夜の台所でマサハルとはちあわせて悲鳴を上げますが、物語が進むにつれ、マサハルとエマの関係は温かいものにかわっていきます。敵が最強の同志になるのです。
核家族化で、親でも祖父母でも兄弟でもない人との同居は減っているのかと思いきや、2.5世帯住宅なんて用語が生まれるほど、プラス一人は新しいトレンドのようです。かく言うわたしも、実家に同居したら「0.5」扱いとなる立場です。マサハルと同じく、そんな呼ばわり方をされたら憤慨するいっぽうで、何かと闘う必要もなく、責任を負うこともなく、ただ静かに生きていけるのかもしれないなあとシンパシーを抱いてしまいました。
エンディングに流れる「ひとりで食べるおかしを選ぶ~」という歌も好きです。わたしが買うおかしはたいてい、ひとりで食べるおかしです。見出し画像は最近、お茶の水の画廊喫茶ミロでひとりで食べたプリンです。