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キンバリーの少女時代

映画「希望のカタマリ」

「ブレイキングバッド」のスピンオフ「ベターコールソウル」のこれまたスピンオフがもしあるとしたら、キムことキンバリー・ウェクスラーのお話が見たいです。「ベターコールソウル」で、ハムリンハムリンマッギル法律事務所に勤務する以前のキムが描かれたのは、母親との2シークエンスのみ。ひとつは、クルマで迎えにきた母親が飲酒運転だったため乗車拒否して歩いて帰る場面。もうひとつは、キムにアクセサリーを万引きをさせて母親がスリルを味わう場面。母親のこうした行動はなんとなくジミーに似ているような?
これら2つのシークエンスから想像するしかないキムの少女時代はこんなふうだったのではと、重ね合わさったのが「希望のカタマリ」の主人公アンバーの暮らしぶりです。

アンバーを育てるのはシングルマザーのお母さん

高校生のアンバーは音楽の才能があり、名門カーネギーメロン大学から面接通知が届くほど。高校の先生もアンバーに期待を寄せています。友だちもいるし、放課後は外国人に英語を教えたり、老人ホームで働いたり、課外活動にも熱心です。充実した高校生活を送っているようにみえるアンバーですが、実は父親が死んでから住む家がないという問題を抱えています。
どこに寝泊まりしているかというと、バス車庫に停まっているスクールバス車中。夜、こっそり車庫に戻ると、隠しておいた荷物を取り出して、バスで寝て、朝がくるとまた荷物を隠して、友だちの家に寄り、そこから学校へ向かいます。洗面や入浴は出先の水道を借りて忍んでいます。
お母さんには彼氏がいて、酒を飲んで帰ってくるのをアンバーはすごく嫌っています。バス生活に疲れたお母さんは、彼氏の元に身を寄せようと提案しますが、アンバーは断固拒否。過去に一度、同居に失敗しているのです。彼氏がお母さんに暴力をふるうのを見てしまったアンバーは、その男の世話になりたくありません。そこでアンバーがとる行動が意外なものでした。なんと、母親に見切りをつけ、友だちの家に住まわせてもらえるよう直談判にでるのです。
……なんだか、キムっぽくありませんか?

ペットがアンバーの大事な家族

この映画は、アンバーが友だちに実情を打ち明けるのが中間点で、そこから先がクライマックスですが、わたし世代にうれしいのは登場人物に懐かしい面々がいること。アンバーのお母さんは「ER救急医療室」で、カウンティ総合病院に出入りしていた消防隊員役(もしくは警察官だったと思います。たしか、ERのドクターと付き合っていた)のジャスティナ・マシャド。アンバーの友だちのお母さんは「デビアスなメイドたち」のゾイラ役でお馴染みのジュディ・レイエスです。ふたりとも、いろんなテレビドラマにちょいちょい顔を出す息の長い役者さんです。ジャスティナはドラマ「One day at the time」では主演を張ってます。

人気キャラクターの過去を遡ってスピンオフした作品でちょっと残念だったのは、「SATC」のキャリー・ブラッドショーの高校時代を描いた「マンハッタンに恋をして~キャリーの日記」です。あのキャリーにしては、上品な優等生に描かれすぎでした。キャリーの育った家庭はあそこまで平均的なアメリカ東部の家庭には思えないし、キャリー自身もあそこまで勉強熱心でさまざまな活動に打ち込むタイプではなく、もっとはっちゃけた10代を送っていたに違いない。なにせキャリーは郊外からニューヨークに出て、セックスについて赤裸々なコラムを書くことで身を立て、お金に困った際には離婚した友だちに婚約指輪をよこせと要求するような人です。
既存キャラクターを過去へスピンして描くのは、かなり難しいのかもしれません。スピンオフ作品では「Major Crimes」(「クローザー」からスピン)、「グッドファイト」(「グッドワイフ」からスピン)あたりが好きです。「コロンボ」のスピンオフで、うちのかみさんが事件を解決する「ミセス・コロンボ」は残念ながら一話も見たことがありません。

見出し画像はスピンオフとなんの関係もない、タカノの夜パフェです。お昼間に提供されるパフェにリキュールをかけていただきます。この日は桃のパフェにグリーンアップルリキュールが添えられていました。