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夏ドラマ、振り返り

東京はきょうも気温29℃の夏日ですが、暦は、もう10月。
夏クールのドラマも終わりを迎えたので、感想を。
毎晩暑すぎたのと、コロナもあって家にいることが多く、ふだんよりたくさん見られた気がします。あくまでも個人的に面白かった順に、

「月子と羽男」

西田征史さん脚本+新井順子さんプロデュース+塚原あゆ子さん演出と、いまのテレビ業界最強といえるタッグで、面白いものが作れないわけがない!
そして、現に、最初から最後まで面白かった!
ただひとつ、主演の俳優さんの滑舌はひどすぎる……。わざとなのか。あれでいいと思っているのか。
よろしくお願いします → よろしくお願いちまちゅ
だよね → だうね
ちゃんと発音せんかい~!!
加えて、大事な大事な長回しのシーンにかぎって、噛む。
わざとなのか。あざといのか。
金曜ドラマだから、一番先に主演と相手役が決まって、この二人だからこういう作品にしようと考えられ、彼のために作られた脚本のはずが、まったくマッチしておらず。それ以外は、金曜の夜が待ち遠しくなる、いいテレビドラマでした。

「初恋の悪魔」

若手の警察関係者(刑事とはかぎらない)4人が、捜査難航中の事件を「自宅捜査会議」を開いて解決していくお話。
4人のうち一人が女性で、一人の中に二人の人格が存在する多重人格者。人格1を男性の一人が、人格2を別の男性が愛して、切ない三角関係になります。もう一人の男性は職場に好きな女性がいます。
このほか、自宅捜査会議を行う家から近所の不審者を見張る、その不審者は元刑事弁護士で、4人と同じ冤罪事件を追っているなど紐解かれる絡みが多く、かなり実験的な作品でした。土曜夜の地上波というより、配信ドラマだったらもっと視聴者が集まったかもしれません。
若手俳優が揃うなか、田中裕子さんの出演が効いていて、やっぱりベテランの存在って大事だなあと思います。女性は「ツミキ」という名字で、「ツミキっつぁん」と江戸流に呼ばれるのとか、ちょっとしたところも面白かったです。

「競争の番人」

日常生活で全く交わることのない仕事について知ることができるのもドラマの楽しさ。これは「公正取引委員会」という、わたしの人生には無縁の職業が描かれていて、公取の審査員って、こんなお仕事なのねと興味深く拝見しました。
なんだか、続編がありそうな……?
キャストが「鎌倉殿の13人」と複数かぶっており、ごっちゃになってしまうのがたまにきずでした。

「家庭教師のトラコ」

最初のうちは、合格見込みの少ない受験生3人をトラコ先生が合格へと導く受験ドラマでした。橋本愛ちゃん演じるトラコは、家庭教師先に応じてキャラを変え、コスプレするのですが、わたしが好きだったのは私立小学校受験を目指す家庭を訪問するときのメリーポピンズ風。
回を追うごとに、なぜトラコが家庭教師をしているのか、背景が明らかにされていきます。仕込みや伏線はさすがですが、親のない子どもは不幸、親のある子は幸せという線引きが極端すぎたかなと思います。親がいても不遇な状態の子どもはいますし、いないほうがマシな親も世の中には多いです。
女親の転職事情も、リストラされた新聞記者は転職先が見つからずフリーランス転向、元クラブママは病院の清掃業と、35歳を過ぎた女の就職先なんてこんなもんだろうと男性目線に描かれすぎた気がします。

「風よあらしよ」

わたし自身は日本近代史を研究したことなどありませんが、友だちが大学で専攻していて、伊藤野枝や大杉栄について熱く語っていたのを思い出しました。彼らは思想や政治活動を理由とした拷問により亡くなるという決してあってはならない死に方をします。遺体は井戸に捨てられました。野枝はまだ28歳でした。
野枝たちは、わたしの祖祖父母の世代にあたります。つまり、登場人物はまだ最近の人々で、百年前の日本はそのような国だったのです。
先に扼殺した大杉栄の亡骸に、野枝がすがりつくシーンがちょっと物足りなかったかなあ。実際の野枝の悲しみはあんなもんではなかったと思います。

このほか「ユニコーンに乗って」「魔法のリノベ」も見ました。

テレビドラマには、クライマックスを迎える直前、主人公による決めセリフというものがあります。今期は決めセリフがいいものが多かったです。
「初恋の悪魔」では、「自宅捜査会議開始!」「マーヤのヴェールをはぎとるんだ!」と言って、模型を使ったバーチャル捜査が始まります。
「魔法のリノベ」は「どうぞイメージしてください。ここでの生活を」。
「家庭教師のトラコ」は「わたしには嫌いな言葉が3つある」。これは回を追うごとに「わたしには嫌いな言葉が4つある」というふうに数が増えていき、最終回で「わたしには好きな言葉が3つある」になりました。



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