感覚と姿勢

意識されない感覚・姿勢


例えば机の上に置いてある本を手に取る時に、姿勢の調節や本を掴む手の形、肩の屈曲や外転、こうした運動のほとんどは自動的・無意識的に発生する。ウェイトトレーニングのように筋の収縮や弛緩を意図的に自覚する運動もあるが、それは負荷がかかっている個別筋に対する限定的なものである。

アームカールをする時に上腕二頭筋に意識を向ける事は容易だが、倒れないように身体を支えている脊柱起立筋群の働きが意識される事は無いだろう。

 感覚には働きを自覚しやすい「五感」と、そうではない「平衡感覚」と「固有覚」が存在する事は述べたが、生物の運動においては、これらの感覚が統合される事が重要となる。

 ボールの表面の滑り具合を触覚で感じ、固有覚の働きで適切な把持力でボールを掴む。ボールを投げる目標地点を視覚で確認し、平衡感覚と固有覚が働き投球姿勢を形成する。この時には、足底の触覚を通じて自己の重心位置を把握しているだろう。

 こうした一連の感覚-運動連関は、驚くべきことにほとんど無意識下で発生している。言い換えれば、一つの感覚が適切に働かない、または感覚が適切に統合されない状況下では、意図した運動の遂行は困難になる。

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