「お前ら失明したらどうする?」への回答

はじめに

はてな匿名ダイアリーに投稿された記事「お前ら失明したらどうする?」への回答です。悩みましたが、中途で視覚障害者になった一人として答える義務がありそうなので投稿します。

https://anond.hatelabo.jp/20241004112542

ろくでもない記事や反応コメントを読むのは嫌いじゃないので定期的に巡回していたところ、今回の記事を発見した次第です。読み専で書き込みの勝手がわからずnoteに投稿することにしました。

スクリーンリーダー(画面読み上げ機能)の使い方を覚えろ

上から目線ですみません。緊急度が高そうなので先にスクリーンリーダー(画面読み上げ機能)についての話から。

元記事によると失明の可能性が高いとのことですので、まずは画面を水にスマホを操作する方法を覚えてください。スマホは必需品ですので、今後の生活を左右します。

  • iPhoneの場合、設定→アクセシビリティ→VoiceOverへ進みONにしてください。VoiceOverの操作練習という項目も近くに表示されているはずですので、そちらも試してみてください。

  • Androidスマホは機種によって操作方法が異なる場合があります。「機種名 TalkBack 使い方」と検索して、その指示に従ってください。

スクリーンリーダーの操作に慣れたら

スクリーンリーダーの操作に慣れたら、以下のアプリを使ってみてください。すべて無料で利用できます。iPhoneとAndroidスマホどちらにも対応しています。

Be My Eyes

写真の内容をAIが分析して、文章で説明してくれるアプリです。海外のアプリですが、日本語で利用できます。

Microsoft Seeing AI

書類を認識して内容を読み上げたり、紙幣の種類を判別して金額を読み上げたりしてくれるアプリです。画像認識はBe My Eyesより高速ですが、正確さは少々劣る印象です。

アクセシビリティストリーム

アプリではありませんが、紹介させてください。視覚障害者にとって役に立つ話題、特にiPhoneやAndroidスマホに関する話題を扱っているYouTubeチャネルです。

iPhoneをおすすめする理由

あくまで個人的な意見になりますが、スマホはiPhoneをお勧めします。理由は以下3点です。

  1. iPhoneには10年以上前からスクリーンリーダーが搭載されている。実績があり、突然スクリーンリーダーが利用できなくなる恐れがない。

  2. iPhoneを利用している人が多い。自力で操作不能になったとき、周囲の人にサポートしてもらえる確率が高い。

  3. 中古のiPhoneは安く入手できる。故障したり盗難されても代替機をすぐに用意できて経済的な負担が少ない。

Q&Aコーナー

ここから本題です。元記事の内容に回答してみます。具体的に日々の生活に役立ちそうな話は一歳ないので、気が向いたら読み進めてください。

Q. 点字で本は読めるのかもしれないがもう漫画は読めないのか

あくまで一個人の例ですが、残念ながら点字は死ぬほど難しいです。1年ほど練習した時期もありましたが、スラスラ本を読むなんてレベルには到達できず心折れました。

が、しかし、点字を読めなくても心配無用です。本についてはamazonのKindleなど電子書籍を購入して音声で読み上げすることで対処できます。記事の冒頭でスクリーンリーダーを覚えろと説明したのはこれが理由です。

もちろん、点字を覚えて損はないので挑戦してみるのは良いと思います。具体的なメリットとしては、資格試験は点字で受験できる場合があります。信じがたいことに、目で読むのと変わらないか、それより早いスピードで点字を読める人が存在します。自分は諦めましたが、全く不可能でもなさそうです。

漫画については画像認識AIが日々進歩しているので、単純なコマであれば言葉で説明してくれるかもしれません。ただやはり、純粋に漫画の絵を楽しむのは厳しい印象です。

試しにジョジョの奇妙な冒険で白杖に偽装したライフルを構えているコマをBe My Eyesで認識させたところ、ジョンガリ・A(ジョジョの奇妙な冒険第6部「ストーンオーシャン編」に登場する男性の囚人)を女性として識別してしまいました。

代替案としては、アニメ化されていれば、その音声を聞くのが確実です。というのも、昔からジョジョの奇妙な冒険を知っている書き方をしてしまいましたが、実は漫画を一度も読んだことがありません。目が見えなくなってからジョジョを知りましたが、それでも楽しめています。

漫画を楽しむ、というよりは漫画で描かれている内容を別の手段で追体験する、という考え方に切り替えると良いかと思います。

最近ですと「ドカ食いダイスキ!もちづきさん」の話題を目に(耳に?)します。ネットの感想を追いかけていると漫画で描かれている内容がある程度想像できます。そもそもタイトルが漢字の「大好き」ではなくカタカナの「ダイスキ」表記な点からも狂気が滲んでいます。

Q. ラジオは好きだけど映画はもう見れないのか

映画は趣味ではないので知識がありません。調べてみたところ、音声ガイドが利用できる映画が徐々に増えつつあるようでした。また、4DXやIMAXのような体験型の映画であれば、目が見えなくてもある程度は楽しめるかもしれません。

また、劇場まで出かけなくてもamazonプライムビデオやNETFLIXなどのアプリを使って映画を楽しむことはできるかもしれません。特定の映画館だけで上映されているマニアックな映画は見つからないかもしれませんが、大半の映画は揃っている印象です。

ちなみに、盲点なのがラジオです。radikoアプリを使えばスマホで全国のラジオを聞けますが、このアプリがスクリーンリーダーで使いづらい、もしくは全く使えない場合があります。最近は改善されているそうですが、今後もアプリがスクリーンリーダーで操作できるかは不透明です。

ラジオも趣味ではないので最近の事情をよく知りませんが、スマホのアプリではなく単体のラジオを使う方が良いかもしれません。

Q. ジョギングもサーフィンももう無理か

ジョギングの目的が走りながら景色を楽しむことであれば、どうしようもないかもしれません。思いついた代替案としては、走りながら適当にスマホで撮影して、後からBe My Eyesで画像認識して周りの様子がどうなっていたかを知ることはできるかもしれません。

ジョギングの目的がトレーニングであれば、自室にマシンを設置して安全にトレーニングできます。費用はかかりますが、安全を確保するための必要経費と考えれば安いかもしれません。

サーフィンは経験がないので想像できません。目が見えていた頃、プールでサーフィン(?)している様子を見たことがあるので、そのような施設であれば沖に流される心配なく安全にサーフィンが楽しめるかもしれません。知識がないので「視覚障害 サーフィン」で検索してみたところ、パラサーフィンというものがあるようでした。

経験がないので想像ですが、波に乗るのは目で見て楽しむ要素も含まれるかと思います。通常のサーフィンの楽しさを100 %として、パラサーフィンは5 %程度のたのしさしか味わえないかもしれません。が、もしかしたら50 %くらい楽しめる可能性もありますし、0 %で全く楽しめないかもしれません。

楽しめたらラッキーですし、楽しめなければブラインドサーフィン(仮)を創立する良い機会です。目が見えなくなってもサーフィンがしたくて仕方ないなら、それは才能かもしれません。ビジネスチャンスだと考えて、何とかしてサーフィンを楽しむ方法を考えてください。

Q. 人に迷惑をかけ続けて生きていかなければならないのか

障害が原因で周囲にかける迷惑は迷惑ではありません。好きで障害者をやっているわけではないので、自分でコントロールできず生じてしまう迷惑は気にせず図々しく暮らしましょう。ただし、横着に振る舞って良いわけではありませんので悪しからず。

Q. 痛いのは嫌だし、見えなくなったら首吊るのは難しそうなので...

ひとまず生存することを目標に暮らしてみてください。目が見えなくなると、歩道を進んでいるつもりが車道に侵入していて車にはねられて死ぬとか、まだ電車が到着していないのに勘違いしてホームから踏み出して死ぬとか、あっさり死ぬ確率がアップします。死に急ぐ必要はありません。

最後に

伝えたいことは山ほどありますが、括るのは首ではなく腹にしましょう。おそらく、今後普通の暮らしができないと悟る瞬間があるはずですので、そうなったら役所へ行きましょう。ただ、個人的な経験からアドバイスするなら、失明の可能性があり不安が積もっている状況はすでに赤信号なので、できるだけ早く役所へ相談しに行くことをお勧めします。

さらに追加でアドバイスするなら、役所が的外れな対応をする可能性があるので、近くの盲学校へ相談しに行くのも一つの手段です。最初に役所の案内で白杖を購入したのですが、とんでもない粗悪品でした。盲学校の方いわく、こんなにひどい白杖はみたことがないとのことでした。というか、白杖なのに緑色だったと記憶しています。

白杖は歩く際に地面を叩いたり先端をスライドさせたりして安全を確認する道具です。役所の担当者に悪意があったのではなく、単に知識不足で白杖の要件を満たさない杖を紹介されてしまった状況でした。

まとめると、中途の視覚障害にとって最も大きなハードルは適切な相談先を見つけることです。その点さえクリアしてしまえば、あとはどうにでもなります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?