牧野と塩

NSC大阪の首席テキサスマウンテンローレルの牧野晃歩、同期で友達が一番多いマニピュレートの塩コウジは親友であり恋愛対象としてお互い意識していた。しかし、二人は同期恋愛批判派。いつもどこかもどかしい想いを胸に抱いていた。
塩コウジはいつも奔放にボケ続ける牧野を鬱陶しげにつっこみながらもはにかんでいた。
ある日牧野が塩コウジがいないところで、
「あいつのすごい所は、ずっと人に興味を持ってる所なんよねぇ。」
と言っていた。そしてのちに塩コウジが牧野の近くで
「湊郁海、興味あんねんな。飲んであいつの人生掘り下げてみたいねん。」
そう言う塩コウジの顔をまるで実兄のように微笑んで見ていた。牧野もまた塩コウジのそう言った面に惹かれていた。
しかし、悲劇が起きる。塩コウジが同期の女性と交際を始めてしまう。いつもの牧野ならこういった同期の恋愛事情を言いふらすはずなのだが最愛の人、塩コウジのこととあってはいつもの調子を出せなかった。
その夜、牧野は涙を流しながら塩コウジの埋め合わせのために付き合った女性を激しく抱いた。
行為を終えた後ヤケを起こした牧野は普段は吸わないタバコを彼女から一本もらい二吸いほどして、タバコの火を消して灰皿に置き、
「やっぱ俺はこれやな。」
と言い、点鼻薬を鼻にさした。彼女と解散し、一人で暗い東成区を歩いて気持ちの整理がついた牧野は、
「今までありがとう。」
と塩コウジの実家がある方向につぶやいた。
後日、同期の間で塩コウジの同期女性との交際の噂が広まっていた。塩コウジはこれは牧野が噂を広めたに違いないとすぐさま牧野がいるであろうZAZAに向かった。
ZAZAの楽屋に押し入ると、同期から好奇の目を向けられ、同期は口々に
「同期と付き合うんどうのこうの言うてたやんけぇ」
「結局お前もかよ」
などと塩コウジを罵倒した。
すると、そこに牧野が来た。罵倒する同期の肩を掴み、
「そういうのやめようや。」
同期は驚愕した。今まで全ての噂、ゴシップは牧野から聞いてきたものだったからだ。しかし、牧野のただならぬ表情に気圧されて、罵倒をやめた。
同期が去っていたあと二人きりになると、塩コウジは涙ながらに牧野を抱きしめた。疑ったことを謝ろうとする塩コウジの口を牧野は自身の唇で塞いだ。
いつもより長かった。
唇を離し、牧野は塩コウジの涙を親指でぬぐい、
「そういうのやめようや…」
と言い、手を繋いでZAZAを後にした。
再縁した二人を真っ赤な夕陽が祝福しているようだった。

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