菊穴パンチ

NSC大阪43期の正統派漫才コンビ、頭脳パンチ。
強いツッコミが持ち味のおーにしと飄々としたボケが特徴のなかじま。
この二人は仲が悪いように見えてお互いを信頼し、愛し合っているコンビだ。
しかし、まだコンビとしての友情のような愛情しか伝えられていない状況と好きな気持ちに気付く素振りを見せないなかじまの態度におーにしは、やきもきしていた。
ネタ合わせと称して、なかじまの家に上がり込み手料理を振る舞って、恋人として振り向かせようともしたが出前に頼るなかじまの性格が、それを邪魔する。キッチンの前でおーにしはパーマ頭を掻きむしる。
そんな日々が続いていた。
ある日のネタ合わせ。おーにしは今日こそはと思い、なかじまの家に上がるなり最近ではあまり見ないあの挨拶をしてみた。
「どもぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
落ち着いた様子のなかじまは、
「久しぶりに見たわ。急にどないしてん。」
いつも通りのなかじまを見て、急に恥ずかしくなったおーにしはもじもじして、
「いやぁ…あのさぁ…」ども
二人は会話を始める。
「どないしたん?もじもじして。」
「今日ネタ合わせした後さぁ、予定あんの?」
「いや、ないけど。」
「彼女が家くるとかない?」
「ないよ。」
「飯食った?」
「まだよ。先飯食おか。出前でええやろ?」
「いや今日はわた…俺が作るわ。」
そう言って、おーにしはおもむろに持参した筑前煮の材料を調理し、手際よく筑前煮を作り、なかじまに振る舞った。筑前煮を食べるなかじまをおーにしはトロンとした目で見つめていた。
なかじまは何かを察知した。その気になれないなかじまは、
「ゲームしよか。」
と言って、何か言いたげなおーにしをよそに「パワフルプロ野球」の準備を始めた。
おーにしは決心した。
なかじまの手をギュッと握り、
「なんで気づいてくれへんの?!」
と叫んだ。なかじまは深いため息をつくと、おーにしの手を握り返し、ベッドのある寝室へと連れて行き、押し倒した。
なかじまは普段は着痩せしてばれていない贅肉のついた腹を引っこめた状態で服を脱いだ。
おーにしはうれしかった。好きな人が自分の前で短所を隠そうと頑張ってくれている。そのことにおーにしは感動した。
部屋を暗くして欲しいというおーにしの要求をなかじまは快諾し、その暗い部屋の中でなかじまはおーにしの下着を脱がせた。
おーにしの腰元は自然と浮いていた。
二人は抱きしめ合い、愛し合った。正面から、後ろから体の持つ限り愛し合った。
2時間経った頃だろうか、全裸の二人は息を切らせてうつ伏せで並んで横になっていた。
おーにしは自然と感謝の気持ちを述べた。
「気持ちに応えてくれてほんまありがとうな。頭脳パンチでよかったわ。」
普段言わないような言葉が無意識に出たおーにしは顔を赤らめた。
その言葉になかじまが返した。
「あの挨拶これからもやっていかへん?」
おーにしは驚いた。なかじまが続ける。
「あの挨拶なかったら、今日こんな気になれてないと思うねん。漫才する時にあの挨拶しよや。」
何も言わずにおーにしは頷いた。
さらになかじまはある決め事を話した。
「ほんでまたシたくなったら、そん時もあの挨拶することにしよ。」
おーにしはすぐさま、
「どもぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
と叫んだ。
今は暗い場所で漫才と性行為をシているが、いつかは明るい場所でシようなと二人は誓い合った。


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