国家財政についての妄言

「日銀は政府の子会社だ」。安倍晋三元首相の発言が波紋を広げている。市場に混乱が広がる恐れもあり、慌てた政府は火消しに躍起だ。安倍発言はそれほどの危険性をはらんでいる。問題の発言は9日に大分市で開かれた講演で飛び出した。安倍氏は「(政府の)1000兆円の借金(国債)の半分は日銀が買っている」としたうえで「『日銀は政府の子会社』なので(返済の)満期が来たら、返さないで借り換えて構わない。心配する必要はない」と語った。」(毎日新聞 2022/5/11 21:13)

小渕首相が普通国際残高が542兆円になった時に「世界一の借金王」と言ったことを覚えている。

その頃からだろうか?日本政府は赤字なんだ、大変なんだ、みんなの税金で賄おう、といって消費税をあげてみたりなんだり。

で、日銀のホームページを見ると令和2年度末の日銀の資産のうち、長期国債が4,957,770億円(約500兆円)と記載されている。

元年度との比較で222,356億円(約22兆円)の増額である。

財務省のホームページによれば「令和3年度予算における歳入のうち、公債金が435,970億円(約43兆円)」と記載されている。

およそ半分を日銀が債権として持っていることがわかる。

官庁の会計は複式簿記を採用しておらず、累積している債権債務が表示されないのでわかりづらいが、

日本政府がいわゆる「借金」と称して発行している国債の残高について、財務省のホームページには

「普通国債残高は、累増の一途をたどり、令和3年度末には990兆円に上ると見込まれています。」

と記載されている。

日銀が子会社だとすると、政府の赤字は子会社の決算と合わせて考える必要があって、で、政府と連結決算すると、普通国際残高990兆円のうちの500兆円を日銀が保有しているので、差し引くと、政府の累積赤字は490兆円となる。まあ、決して少ない金額ではないが、財務省の国家財政は赤字、というのが話半分で聞かないといけない、ということがわかる。

本来は子会社ではないのだが、内閣総理大臣経験者が「日銀は子会社」と言ってしまえば、連結決算をすると赤字額が小さくなってしまい、消費税率を引き上げたことなどに対する妥当性が問われてしまうので、財務省は大慌てしているのではないだろうか。

真正面から「日銀は政府の子会社ではない」と批判している人がいる。それはその通りである。

ただ、「国家財政が厳しい、累積赤字が990兆円に上ると見込まれています。」という言葉が、

本当にそうなのか?

また、財務省から国家財政は赤字であり、累積債務が膨らみ続けている、というレクチャーを長期にわたって受けていたはずの行政府の長だった人の認識が

「日銀は子会社。国債が満期になったら借り換えればよい」

ということであれば、連帯して責任を負わなければならない国会(特に自分の政権を支えてくれる議員)に対して有利になるように予算をつけ続け、予算規模が大きくなってきたのではないか、ということは想像できる。

はたして、今の内閣総理大臣の認識やいかに?

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