東大の科類毎のコスパに関する考察

2024年度東京大学合格最低点
文一 331.0222
文二 332.2333
文三 331.0889
理一 326.2444
理二 314.1444
理三 380.4778

全ての科類において、共通テストの点数を110点満点に圧縮して、440点満点の二次試験を加算する形式となっている。

今回は東大入学に対するコスパを科類毎に考察していく。

特に東大の場合は他大学ではあまりない「進振り」という入学後の成績により進学先の学部学科が決まるが、入学する科類によって進振りの枠が大きく異なるため、それによる歪みもまた生じている。


文一・文二・文三

いきなり東大文系を全てまとめてしまって申し訳ないが、文系については語ることが少ないためこのような形を取らせてもらった。

というのも、まずそもそもとして東大理系と比べて東大文系は合格最低点の差が非常に小さく、年度によっても順位が変動するくらいである。

年度による点数差の揺らぎは多少あれども、理三>>理一>理二という合格最低点の序列は東大理系の場合はまず変わらない。

かつて、東大文系の合格最低点は文一>文二>文三で固まっていたが、最近はどうも文一が凋落しているようである。

その理由として最も語られがちなのは官僚の不人気であるが、私は別の要因のほうが大きいと考えている。

「文系の場合はどこを専門にしても一緒であり、欲しいのは大学で勉強したことではなく難関大学に入学できたポテンシャルである」と民間企業のほとんどが考えていることが最大の要因ではなかろうか。

現に文系の場合はどの科類に入っても卒業後の出口はさほど変わりはない。

財務事務次官を目指すとか四大法律事務所に入るとかであれば文一に入らなければならないが、そのようなレベルを目指すには楽勝で東大に合格できる学力がないとお話にならないため、コスパがどうこうを論じるのがこの場合そもそも無意味である。

文系大学院に入った後の進路の予後が悪いことも文系の専門性は民間では役に立たないことも物語っている。

それでもあえて東大文系内におけるコスパを語るのであれば、文二>文一>文三という順番になるだろうか。

文一は法学部、文二は経済学部への進振りの枠が緩いのに対して、文三は新振り競争が激しいために文三はどうしてもコスパという面では劣る。

ただそれでも前述したように文系の専門性は卒業後の待遇にはさほど影響をしないため、後述する理一ほど進振りはシビアではない。

もちろん弁護士や公認会計士などの超強力な業務独占資格を有しているとかなりのアドバンテージになるが、医師免許と違ってどの学科からでも取れるためそういった点からも科類選択はシビアではない。

理一

さて、ここから理系の話をしていくがここからが本番である。

理系については語ることが文系より多いが、その理由として理系は文系より専門性が重視されやすいことと他大学の医学部医学科の存在という2つがあるだろう。

まず、理系の場合は大学院を経ても進路の予後が概ね良好であり、学部レベルにおいても東大理系の不人気学科よりも東工大情報のほうが就活でアドバンテージを取れたりすることが示しているように、理系の場合は専門性が重視される。

また、医師免許は少なくとも現在の日本における資格としては最強クラスではあるが、医師国家試験の合格率は9割程度と高いものの医学部医学科を卒業した者しか受験できないという特殊性がある。

学力的には東大理一理二の卒業生は医師国家試験を受けても問題ないはずだが、医学部の座学と実習をこなさないと参加チケットすら与えられないため、医学部医学科の合格が実質資格試験のようなものである。

さて、前置きが長くなってしまったが、理一について語っていこう。

理一は主に工学部や理学部へ進む科類であるが、そこで待遇のトップというと情報系学科に進学して卒業後はGAFAなどへのビッグテックへの就職になるだろう。

ただ、そういった学科は非常に人気が高く、入学後の成績がかなり高くないと進めないし、仮に上手く進めたとしても情報系学科の上澄みでないとGAFAなどへは入れない。

一般論として進振りの点数については、もちろん本人の努力である程度どうにかなる部分もあるが、大学入学時の成績とかなり相関関係があるように見える。

理一で最高の待遇を得ようとなると、理三にも入れるくらいの学力がないと厳しく、ほとんどの理一の学生はその果実を享受できない。

それどころか卒業後は早慶と同レベルの待遇になるのが多数派なのが現実である。

民間就職ではガクチカが基本的に求められて需要の高い理系の専門性があれば有利になるゲームである。

理一にギリギリで入ってしまうと、進振りで消耗してガクチカの積み上げが不十分になりがちで専門性を深めるのも中途半端になるリスクも高い。

となると、東工大情報やガクチカの充実した早慶に就活でアッサリと負けてしまう。

私はtwitterで理一はコスパ最悪だからやめとけと発言して炎上したことが複数回あるがこの認識は今でも変わっていない。

理一に絶対に入ってはダメというわけではないが、理三最低点くらい取れるレベルの学力はないとその後に苦しむ可能性が高いと考えている。

また、卒後の待遇において医学部医学科との比較においても多くの理一出身者は劣後する。

大事なことなので繰り返すが、理一はコスパ最悪である。

理三は置いとくとして、理一は理二より明らかに合格難易度が高いし、問題が違うとはいえ東大文系のいずれの科類よりも難易度が高い。

これは文理共通の学年の駿台模試などの結果が物語っている。

理二

理一にはビッグテックというロマンがあるが、理二の場合は医学部医学科への進学というロマンがある。

一学年に10人程度と人数制限はキツめではあるものの医学部医学科への枠があるのが理二の最大の特徴である。

むろん実際に進学する難易度としてはかなりハードではあり、理二にギリギリ合格したというレベルではかなりキツイ。

先述したように、大学入試を余裕でパスできるくらいじゃないと大学入学後に好成績を取って人気学科へ進振りするのは厳しい。

現に理二から医学部医学科へ進学を狙う者の中には、高校時代の模試で理三C判定くらいだったため大学受験でのギャンブルを避けていったん理二で利確しておいて医学部医学科を狙うという者がいたりして、理二ボーダーの学力だと容赦なく蹴散らされる。

医学部医学科以外については、理一の非情報系と卒業後の待遇の良さはさほど変わらない。

となると上澄みの形は多少異なるものの、全体として見れば理一と理二の待遇の差はあまりない。

そうなると、「東大理系」というラベルを手に入れやすい理二のほうがコスパに優れている。

世間の大多数は東大の科類による違いなど興味ないのが現実である。

理三

ある意味、東大理三が全ての大学の学部学科を含めてコスパ最悪と言えるかもしれない。

理三に進振りはないようなものでありほぼ全員が医学部医学科に進学し、ごく一部は理学部数学科などに進学する。

東大教授を目指すとかであれば話は別だが、普通に臨床医として働くぶんには卒業大学がどこかは関係ない。

医師免許そのものに価値があるのであり、東京大学医学部と帝京大学医学部で収入は変わらないどころか後者のほうが卒業後の年収は高いであろう。

合格最低点の違いが物語っているように東大の他の科類と比較して合格難易度は圧倒的に高いが、そこからコスパが悪いとか語るのも野暮な気もする。

いわば理三は大学受験界における裏ボスのようなものであり、普通だと東大や医学部医学科に入れた時点で大学受験ゲームは全クリと言っても良いだろう。

裏ボスが理不尽に強いとかゲームバランスが狂ってるとか文句を言うほうがおかしいのである。

そういった意味で、理三の受験において面接が復活して、筆記試験で合格最低点を明らかに上回っている受験生が落とされたというのは実に嘆かわしい。

頭がおかしい受験生を集めておいて、お前は頭がおかしいから不合格だというのはあまりに非人道的ではなかろうか。

他大学の医学部医学科

さて、ここから東大から少し離れるが、卒後の待遇のコスパを語るのであれば、医学部医学科と早慶非医学部の話も避けられない。

医学部医学科に入学すると医師免許獲得がほぼ約束されている点が何より強力である。

アベノミクス以降は民間就職の待遇が良くなって医学部の難易度が下降トレンドには入っているが、それでも都市部の医学部の難易度は比較的高止まりしている。

田舎にわざわざ行ってまでは医師免許は要らないが、都会の大学であれば医師免許は欲しいというのが大学受験生の本音であろう。

医師の待遇そのものは悪化傾向だが、それでも現時点においては他の職業と比べると金銭的にはまだ恵まれている。

皆保険制度が怪しくなっている中で将来の見通しは明るくはないが、平成不況のようなことがあると2000年代のように医学部医学科の偏差値が暴騰する可能性もあるであろう。

千葉大学や横浜市立大学の医学部は難関であるものの理一理二を志望する受験生としては選択肢として頭の中に入れておいていただきたい。

早慶非医学部

民間就職において東大生と競合するのは主に早慶となる。

民間就職において学歴フィルターはあるものの、東大卒というのは明らかにオーバースペックと考えられる。

理一に関する項目で先述したようにガリ勉して東大に入ろうが情報系などの上澄みを除くとガクチカたっぷりの早慶に簡単に負けうるのが民間就職の世界である。

SAPIX鉄緑会と課金して東大に入り込むくらいなら、そのレベルの子なら普通にしてて早慶付属に入れて浮いた分のお金を高校卒業してからの美容整形に課金したほうが就活が上手くいく説すらある。

(※女子の場合は早慶付属の中高の枠が少ないため、私文専願で科目を絞って大学受験する戦略もアリだろう)

300万円とか美容に課金すれば就活でかなりのアドバンテージを取れるだろうが、民間就職の結果を見るとあながち冗談とは言えないのではなかろうか。

まとめ

全体として東大のコスパは悪く、他大学の医学部医学科や早慶非医学部のほうがコスパという観点からは優れているであろう。

ただそれでも東大が最も高い偏差値を誇っているのは東大というブランドを皆が求めていることの証なのではなかろうか。

そもそもブランドに対して役に立つとか立たないとか語るのが野暮なのである。

物を入れて持ち運ぶのにバーキンを買ったり時間を知るためにパテックフィリップを買ったりするのは無意味である。

それでも人はブランド品に対して高い価値を感じて高いお金を投じる。

ブランドとはそういったものではなかろうか。

ただ、その中でも東大理一の今の偏差値はバブルといっても良いほど高いと私は考えている。

卒後の待遇の差を考えて、阪大医学部と同等以上の偏差値があるというのはいくらなんでもやり過ぎな気はする。

私の感覚が正しいのか、これからの医者の待遇悪化を織り込んだ正当な評価なのかはこれからの歴史が答え合わせをしてくれるであろう。

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