重要度と緊急度で仕事を分ける暇があるなら優先順位をつけずにさっさと手を動かせ
仕事に対して重要度の有無と緊急度の有無で分類をして、第一領域や第二領域などと名前がつけられているのをよく見かける。
重要度はないが緊急度のある仕事で消耗をするのではなく、普段から緊急度はないものの重要度の高い仕事をやっておくことで困らないようにしておきましょうという文脈で語られることが多い。
しかし、このように分類をしてから仕事をしていく方法が有効な立場の人はほとんど存在しないように思われる。
今回は、この分類の無意味さについて語っていく。
仕事は理想通りにはいかない
仕事を緊急度と重要度で分類する方法はあくまで理想状態で考えられたものであり、仕事をこのように整理整頓した状態で行っていける立場の人はほとんどいない。
例えば、目の前で電話が鳴ってしまったら自分が直接取らなかったとしても音により集中が一度途切れてしまう。
特に零細企業や自営業の場合は、わざわざコールセンターを置くようなことは難しく、これは電話に限らずの問題であるため、結局人に仕事を任せることがやりにくく自分で仕事を巻き取ることになる。
高度に分業化された組織であれば、理想的な状態で自分の仕事に専念しやすいものの、権限についてはそういった組織のほとんどの人に対して与えられていない。
その仕事をするかしないかの判断が行えないので、結局上から言われた通りに仕事をせざるを得ない。
ということは、重要度と緊急度で仕事を分類していくやり方が有効なのは大きな組織で上の立場の人に限られており、零細企業や自営業、中間管理職以下の立場の勤め人にとってはあまり役に立たない。
緊急度のあることを放置すると脳のリソースが取られる
次の問題点として、この分類を元にした仕事術には緊急度のある仕事を後回しにしたとしても仕事のパフォーマンスが一定に保たれるという仮定が暗に含まれていることがある。
しかし、誰もが実感しているように緊急度があるものを放置したまま他のことをやろうとしても脳のリソースが取られてしまい100%コミットすることが難しくなってしまう。
多少遠回りになるかもしれないが、緊急度のあるものを捌いてある程度落ち着いた状況になってから重要な仕事に取り組んだほうがかえって早く終わる可能性すらある。
また、早く終わるかどうかではなく結果そのものが悪くなってしまうリスクもある。
マシュマロ実験では、我慢強い子が合理的な判断をして多くの報酬を得て、そうじゃない子は目の前のことに飛びついて損をすることになった、とされている。
が、実際には我慢ができない子は貧困な傾向にあったというオチであり、緊急性の高い問題を抱えてしまうと合理的な判断ができなくなるのだ。
まさに貧すれば鈍するであり、もともとの能力よりパフォーマンスが落ちてしまうのはもったいない。
仕事には答えがないから試行錯誤をするしかない
ペーパーテストであれば明確な答えが存在するのに対して、仕事は答えがない。
再現性に乏しく、結局は試行錯誤をしていくしかない場面も多い。
5年前は通用したやり方が今は全然ダメになってしまうということもある。
となると、重要度と緊急度についても普遍性のあるものではなく場面によって変わりうると言えよう。
このような状況だとキッチリ仕事を分けて整然と行っていくよりも、とにかくスピード感を持って捌いていきその都度軌道修正をするやり方のほうが機能しやすい。
あるやり方で成功した、と語ることはできるが、それはあくまで結果論に過ぎず、その成功した理由についても後付けでしかない。
なぜか良くわからないけど上手くいってしまったということも決して珍しくはない。
ビジョナリーカンパニーという本があるが、成功した会社の理念が優れてて失敗した会社の理念が劣っているというのは幻想である。
歴史は勝者が作るものであり、都合が良いところだけをピックアップしていけば見栄えが良くならない会社のほうがレアであろう。
そもそも第二領域の仕事とは一体なんなのか
緊急度がないけれども重要度の高い第二領域の仕事とは結局何になるのか。
目標を立てることや業務フローの改善がそれに当たるであろう。
逆説的な話だが、そういった仕事で結果を出していくには多くのムダを経なければならない。
経営の天才であれば何も見ずに一発で正解を出せるだろうが、ほとんどの人は普段の仕事から課題が浮き彫りになることで第二領域の解像度も上がっていく。
結局修正する羽目になるのなら早く手を動かしたほうが良い。
と考えれば、哲学的にはムダな仕事は存在しないのかも知れない。
結局はモグラ叩きをしていくほうが効率的
以上説明したように、仕事を緊急度と重要度で分類していく方法が役に立つ状況は限られており、大企業のトップなどを除くほとんどの人にとっては無縁である。
じゃあどうすれば良いのかということは非常にシンプルであり、優先順位をつける暇があるのなら目の前のタスクをガンガン消化していくのが良い。
とにかくスピードスピードスピードである。
ゆっくり物事を考えるのは、それで浮かせた時間を利用してやれば良いわけなのだから。
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