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前十字靭帯損傷 MRI診断と術前リハビリ

どうも。夏休みには東北に遠征し、台風に邪魔されたもののいくつかの山に登ることができ、膝の回復もまあまあ確認でき最近上機嫌の山小屋サンです。

 今シーズン、スキーによる前十字靭帯損傷で首尾よく冬シーズンを棒に振った話を今まで書いてきましたが今日もその続きを書こうと思います。

 前回の記事でも書きましたが、病院が混んでいたこともあって僕は受傷してからMRIを受けるまで1か月以上を要しています。病院を選べばもっと早くことを進めることもできますし、一般的にはそのほうがベターでしょうが僕のようにそうもいかないケースもあるでしょう。そんなとき、診断まで、手術までをどのように過ごせばいいか?というのはスノーヤーにとって大きな問題だと思います。だいたい、ACL損傷するような人はもともとじっとしているのが苦手なのでとりあえず安静にしていろ、など受け入れがたいでしょうから・・・そして実際、ACL損傷の現在の標準的な治療においても、「手術まで安静を保っていればいい」という考えはされていません。むしろ受傷後早期にリハビリを開始し関節機能を発揮・維持させることが後の回復にきわめて重要であると考えられています。ただ、受傷したままプレーすることで関節に不可逆的なダメージを負う人がいるのもまた事実です。

 今回はそんな、「弱くならないように、でも悪化もさせないように」というわがままなじっとしていられない皆さんのために、MRI診断と術前リハビリについて書こうと思います。


専門医初回受診のあと

とりあえず前回の受診では診断がつかなかった

 ひとまず、受傷後15日の受診では神の手をもってしても診断には至らず、MRIは次回ということになりました。モヤモヤした気持ちを抱えたまま帰宅しましたが、最終的に切れてるにせよ切れてないにせよ、今のところやるべきは筋トレである、という結論に至りました。

ACLが切れてる場合
術前に可動域が正常化されていること、筋力が保たれていることが術後の回復に重要 →筋トレすべし!

ACLが切れてない場合(もっとも、受傷後の様子を見るとあまり期待できない)  →もちろん筋トレすべし!

というわけで話は単純です。ですが、実際に行うとなると不安な点は多くそう単純でもありません。なにせ、お医者さんからは「追加の損傷を避けるために穏やかに過ごすように」と言われていますので・・・

階段をゆっくり降りられるようになった受傷後18日ごろ、おそるおそるスクワットをしてみました。幸い、大きな痛み無く行うことができました。ただ、ACLが不全なので完全伸展させようとするとそのまま過伸展になりそうな恐怖があり、そこは伸ばしきることができません。クオータースクワットくらいまでがいいとも言われますが、明らかに負荷が物足りないのでハーフスクワットまで曲げましたが問題なさそうです。

久しぶりの筋力発揮はやはり気持ちよく、その日は久しぶりに筋肉痛がありました。・・・そして、膝の腫れ感熱感も出ました。

ちなみに筋力を発揮させるとどうしてもその後患部は腫れます。最初はちょっとビビりましたが、けっきょくだんだん気にしないでトレーニングをするようになりました。一時腫れても、しっかり動かした方が数日後のフィーリングはすぐれているように感じたからです。

それから僕はアイシングもしていません。いちおうアイスバッグも買いましたが、冷やしても特にメリットを感じられなかったので止めてしまいました。いろいろ調べてみてもアイシングのメリットは一般的に思われているほど絶対的なものではないようです。個人的な感想としては、トレーニングの強度にせよアイシングにせよ、腫れ感や熱感に合わせて自分の感覚でコントロールしてかまわないのではないかと思います。患部の膨張感や疼痛で不快感があるならば消炎鎮痛措置や、運動の中止をしてみればいいと思います。

もともとコツコツとしたトレーニングが好きではないこともあって、メニューやセット数はこれといって決めていませんでしたが、毎日何かしら時間を作ってスクワットやランジウォークをももにパンプ感を覚えるまで行っていました。真面目な方はもっとちゃんと計画的に行うと良いかと思います。

しかし、正直に言うとトレーニングを行ってはいたものの受傷側の大腿の筋肉は次第に落ちていきました。不思議な感覚なのですが、患側脚はトレーニングをしてもなかなかパンプするほど追い込めず、健全脚の方がパンプして終わることが多かったように思います。これはどういうことでしょう。

前回の記事にも書きましたが、ACLは膝運動の感覚器としての働きもあり、ACLが不全になるとACLからの神経的なフィードバックが失われることで大腿の筋力発揮が難しくなると言われています。ちゃんとスクワットは行えていましたし、鏡でポジションチェックをしても体重は左右均等に乗っているはずなのですが、おそらくは瞬間的な最大筋力の発揮という点では患側脚はサボっていたのでしょう。

こういう面からも、ACLの損傷が疑われるならば長期に放置するのは望ましくなく、早めに処置していくのがパフォーマンスの維持に重要だと思われます(もっとも、再建靭帯も基本的には神経的なつながりのない筋を物理的にぶち込んだだけなので長期に神経的な不具合は残存すると示唆されています。トホホ・・・)

術前に山に登るのはどうなんだ?

安静に、って言われたじゃん

ドクターはもちろんお勧めしませんし、僕も再建前の不用意なスポーツ活動復帰は推奨しません(笑)ただ、そうもいかないのが山屋の不養生・・・というか、今の時代、検索してみればけっこういろんなアスリートが早期のトレーニングや受傷後の運動を行っています。
もっとも、「アスリートもやっているのだからやってよいのだ」という安易な考えはもちろんよくありません。僕はこれに関しては二つの面から考えることにしています。「今後のパフォーマンスのためにあえて大きなリスクをとる」という考えと「だって大好きなんだから止められないじゃないか」という考えです。

僕は「今後のパフォーマンスのためにリスクをとる」という考えはあまりしません。自分が大したアスリートだとも思っていませんし、もともと30歳過ぎてから本格的に山をやりだした人間としては、日々パフォーマンスが低下していくことに特に積極的に抗う必要はないと思っています(笑) どっちかというと僕は「だって好きなんだから止められないじゃないか」という派です。

救いようのない嘆かわしい快楽主義のようですが、これは言ってみればQOL、Quality of Lifeというやつです。もともと登山など、フラットに考えてしまえば世間的には不要なリスクを取って個人的な満足を追求する行為です。というかそもそもACLなどなくても不活発ながら日常生活は送れるのですからACL再建は乱暴に言えば、いらん危ないことをするためでもあります。だとしたら、一見不要なリスクをとっても好きなことにまい進していく姿勢自体はわりとACL再建に関して核心的な要素のように感じています。

 実は僕は受傷後のほうがいつもよりも遠出して活発に動き回っていました。受傷後3週間半で谷川岳へ。4週間半で妙高方面へ。1か月半で野沢温泉へ、という感じで。強度の高い活動が制限されるなら、ふだんやらない観光旅行も兼ねてエンジョイ要素を増やしてみてはどうかという考えで、実際これはこれで楽しい期間でした。

谷川岳では天神平からトマの耳まで標高差600メートルの往復をしました。日常動作としては階段の上り下りがある程度普通にできるようになったころでした。谷川岳は僕がふだん活動している八ヶ岳のマイナーエリアと比べるともう観光地といった感じでトレースバッチリ、アイゼンとストレートシャフトの軽量ピッケルを持っていけば本当にお気楽な散歩という感じでした。久しぶりの運動なので多少息が切れたのと、下りでのぐずついた雪の踏み抜きなどはカクカクしたノーコンの膝では恐ろしかったのですが、無事に終えることができました。

妙高エリアでは1か月ぶりにスキーブーツを履きシール歩行とほんのちょっとなるい斜面の滑走。
これはちょっと失意の復帰となりました。というのは、固いスキーブーツを履いてカクカクと歩くと、踵を接地した時に反作用で脛骨が前方にぐにゃっと引き出される感覚があり、まだMRI診断前だったので、もしかしたら手術なしでもいけるのでは・・・なんて淡い期待も出ていたころだったので、この明らかな違和感には正直落胆しました。この時は脛骨に引き出し力がかからないように患側ブーツのカフを完全フリーにしてゆっくりとした動作に徹しました。しかしシール歩行自体は問題なく行え、滑りはてんでダメでしたがなんとか芸歴でテレマークターンとアルペンターンを左右交互に行って(外脚を患側脚で踏み込む時はテレマークターンのほうが負担がない)安全に下ることができました。

ACL損傷1か月で雪上復帰したが・・・

まあこんな感じで、強度としてはずいぶんとセーブしたレベルではありましたがACL不全状態でもそれなりに楽しい日々を過ごし、手術後のリハビリ期である今も同じような姿勢でできることを楽しんでいます。世間的には無駄に危なっかしいことをして、ということになるでしょうが、地味なトレーニングが苦手な僕にとってはモティベーションを保ち、リハビリ運動量を確保するにはとても有効だったと思っています。

なお前回の受診で、「穏やかに過ごすように」と言われましたが、「日常動作に制限なし」とも言われていました。もともと、ACLが損傷していても直線歩行や軽いジョギングには大きな影響はないと言われています。もっとも、ひねり動作などで関節の亜脱臼を繰り返すと軟骨や半月板が追加で損傷していきますので予後が悪くなるのは間違いありませんが、そうはいっても自分として楽しくもないのに単純なトレーニングや単なる安静を自分に課しても継続はできないものだと思います。これは慎重に経験を重ねるしかないのだと思いますが、自分の頭で考えて安全な範囲で一番リハビリ効果が狙える方法を探すということが回復には欠かせないのではないでしょうか。

MRI診断


さて、3月に入ってすぐ、とうとうMRI診断がありました。入念に所持品チェックをしてネットで千回くらい見てきたドーナツ型の機械の中へ・・・じっとしているのは苦手なので不安でしたが、大音量の異音を聞きながら、「なんかヘビメタのリフみたいだなあ」なんて考え事をしていたら終了。

その後の診察でゴッドハンド、「うん、連続性が見えませんね」
MRIでは膝関節に黒く映るACL、確かに、明瞭な黒い断面は確認できませんでした。ただ、僕も僕なりに気になるのでそれまで膝のMRI画像をネットでいっぱい見てきたのですが、なんだかよく見る「切れてる」画像に該当するコマが見当たらないような気がしました。実はこのこと、手術の時になって少しプレイバックされることになります。
ゴッド、おもむろにラックマンテスト。
「ほらね、前回もなんかおかしいと思ってたけどやっぱりなんかおかしいよね」← (前回はよくわからないっていってたじゃないか)

ゴッド:「さて、どうしましょうか。スポーツをしないで温存する人もいますが、活発な生活を送りたいなら再建術は不可避だと思います」
(0.5秒)「再建してください」

というわけで、手術入院がここで決定しました。仕事を休む期間が短くて済むようにGWを挟んで入院日程を仮予約し、次回の手術前重要事項説明の日取りを決めて帰ってきました。

本人はむしろ心晴れやかになって帰ってきたのですが、周囲で温存療法で済ませた人の話を聞いていた妻は、「こういう時は夫を病院に任せて妻は旅行に出かけるのだ」とか憎まれ口を叩いて強がっているものの、なんだか様子が変です。明らかに入院と聞いて取り乱しています。
職場でも、「手術が好きな先生に当たって手術が必要ということにされたんじゃないか」とはやし立てられ。膝をけがした割には元気に歩き回って週末のたびに日焼けして帰ってきたせいでしょうか。

無計画にも、手術が決まると同時に犬も飼い始めてしまった

さて、治療の先が見えた翌日、何の因果か我が家では5か月半の子犬を引き取りました。前の犬が秋に死んでしまい、15年の犬のお世話から解放された僕たちはそれなりに自由な日々を楽しんでいたのですが、すぐに妻が寂しいと言い出し、気が付けば保健所の保護犬情報ばかり見るようになっていました。以前仕事でいたことのある長野県の極南の自治体で子犬情報が出たのを見つけて連絡を取ってみると、あっという間に決まってしまったのでした。これから膝の手術だというのになんという無計画さ・・・

これから始まるであろう困難はとりあえず見ないフリ(笑)野沢温泉では犬も連れて雪上訓練をしました。少々の滑走、シール歩行にイグルーづくり。この日も一番の核心はチョロチョロ落ち着かない犬を連れてゴンドラに乗るところと、イグルーを作るためにスキー板を脱いでツボ足で埋まる雪を歩くところでした。
ACL再建珍道中にまさかの犬まで加わり、手術の日取りは刻々と近づいているのでありました。今日はこの辺まで。

 

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