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前十字靭帯損傷~手術する病院にたどり着くまで

どうも。八ヶ岳クライマーと言いつつ最近はまたスキー好きに回帰しつつある山小屋サンです。とはいえ、今は膝のケガのリハビリで夏山登りに取り組んでいます・・・おかげさまで夏山や簡単なロッククライミングができるくらいには回復してきています。

 今シーズン、スキーによる前十字靭帯損傷で首尾よく冬シーズンを棒に振った話のケガをした瞬間について前回書きましたが、今回はその後の手術することになる病院決定までの話を記事に書こうと思います。
 おそらく膝のケガをした人が気になるであろうこと、僕自身も受傷直後一番気になっていたのが、「今自分の経験している痛みは本当にあの前十字靭帯損傷なのか?」ということでした。膝のケガで強制シーズンアウトになったスノーヤーたちの参考になればいいなと思います。

ひとまず病院へ行こう

 膝が変な方向に曲がってほうほうのていで駐車場に戻ってきた僕は、パトさんに教えられた通り、麓のクリニックへと向かいました。思い出しても、僕は自然な膝の伸展はできなかったものの二本の足でヒョコヒョコ歩いており、病院でも看護師さんたちはまったくいつものこと、という感じで特段のことはなさそうです。
 周囲を見ればさすがHAKUBA、患者の国籍は様々でインターナショナルな雰囲気です。そして他の患者の多くも膝を負傷しており、互いに奇妙なシンパシーを感じているもよう。

 近くに座っていたおじさんはノルウェー人でお医者さんだそう。自分で勝手にアキレス腱の不完全断裂、と見立てをして看護師さんに説明している。(笑)僕は以前からなぜかACL(Anterior cruciate ligament)という前十字靭帯の略称は知っており、僕はたぶんACLの損傷です、と言うと、どうもノルウェー氏の感覚ではACLは必ず再建するというものでもなく、じゃあ筋トレをガッツリやることだね!という感じに返されました。ノルウェー氏はバックカントリーやクライミングもやる人で、いろいろ話を聞かせてもらえて膝のことを少し忘れて楽しいひと時を過ごせました。

 さて傷病者が多くかなり待たされた後、診察室に回されて、先生が徒手テストを多少行ってくれる。と言っても受傷直後で痛みが強いので大きなことはできず。先生曰く、
「動揺性や膨張が顕著ではないので明確な断裂ではないと思います。手術適応ではないレベルかもしれませんね」
 うーん、うれしいような嬉しくないような・・・ 手術するならして、きっぱりとリハビリモードになった方が前向きになれるんだけど。
 ・・・ところで、MRIとかしないの? どうやらここは基本的に救急処置だけで、手術などの本格的な治療につながることは他に紹介していくスタイルみたいです。

こんな感じでその日はこれと言った診断も出ずすっきりしない気持ちで運転して八ヶ岳山麓まで帰りました。
今からすれば一つ反省する点は、このくらい運転できるのであればもう少し根性をだして手術までできるタイプの病院で即日MRIなど踏み込んだ診断をしてもらえたらもう少し後の手間が省けたかなと思います。まあ一人で対処したにしては頑張った方かなと思いますが。

 家に帰って妻にことを報告するとあきれた表情をされましたが、もともと極度の慎重派で病院嫌いな妻にはACLの損傷、と言ってもあまりピンとこない様子で、実は近所にもACL損傷後手術していない人がいくらかいたため「まあ動いてるし手術するほどでもないんじゃない?」くらいに言われました。いや、まだ僕はスポーツとかいっぱいやりたいからね・・・

 さて、手術療法になることも考えて急いで最終的な手術にまでつながる受診計画を立てないといけません。
 グーグル先生で情報収集をすると、近くのエリアでACL再建術の実績がそこそこある病院は限られるようなので、XのFFさんも入院して詳細な記録を残してくれていて安心感のあった病院に目星をつけてそこに紹介してもらえるよう、近くの整形に翌日の診察予約の電話を入れてその日は終了しました。
 ちなみに、この日は寝るときは膝を軽屈曲位にするためのクッションが必要で、膝の不安定感と痛みで寝返りが打てずけっこう辛い状態です。ただ、人によってはちょっとした動きで膝が亜脱臼してしまうこともあるそうで僕はそこまでではなく、この手の受傷ではひどく重症なほうではないようです。

翌日

仕事が午後からなので、午前中に近所の整形外科に受診。たしかこの時は自分で運転し、前からランナー膝が出た時に使っていたサポーターを着けてトレッキングポールなどを助けに歩いていたと思います。

さて診察室で先生にみてもらう。先生、少し徒手検査をした後、おもむろに注射器を取り出し、膝にプスリと・・・イタタ
果たして出てきた液体は黄色っぽい透明なもので、人によっては鮮血ドバアということもあるそうなので、この点でも大きな断裂ではない模様。量も小さじ一杯ないくらい。
「動揺性も大きくはないし、関節液も大きな損傷を示してはいないと思うけれどもMRIは撮ってもらったほうがいいよ。紹介状書きます。どこがいい?」
とおっしゃるので事前に考えてきた病院の名前を告げて紹介状を頂くことができました。早速電話をして予約を取りましたが、混んでいるようで受診は二週間後。やれやれ。

病院で松葉杖を貸していただき、えっちらおっちら出勤すると、職場の皆さんもアホスキーヤーを憐憫の目で見つめております。まあせめて力仕事の職場でなくって良かった・・・ちなみにデスクワークだと患部がうっ血したり固まったりする感覚があって、その辺は大変でした。足を挙上する台を出したりもしましたがめんどくさくてすぐやめてしまいました。

このころの自分のXのポストを振り返ると、最初の5日くらいで松葉づえが邪魔になって病院に返却し、15度‐100度くらいだった可動域が8日後に改善の兆しを見せ始め、階段も送り足で杖なしで上下していたようです。12日後のポストには、「もうすぐジョギングできそうだけど我慢」とあります。まあこれはおそらくただの強がりでしょう(笑)

受傷後15日 専門医へ


さて受傷後15日、専門医の診察を受けました。先生は「だいたい私は徒手検査で一発でわかる」と言っていてゴッドハンドの手腕に期待が高まります。
先生、まず膝の可動域を確認。これがもう日ごろ膝を切ったり貼ったりしてる感覚からか、なかなかハードコンタクト(笑)「-3度~140度、制限なし!」と機嫌よくカルテを書き込んでいくものの、そんなに膝を稼動させたのは久しぶりで、思わず叫びたくなる痛みで膝が飛んでいきそうでハラハラでした。

さて待望の徒手検査・・・ゴッドハンド、膝をコネコネして曲げ伸ばしして首を傾げ、「うん、なんか変な感じはするけど、わかりませんね」と一言。わからないんかーーい!!

ゴッドの言い分としては軽屈曲の膝の脛骨を前方引き出しする動きの中で、カツンとACLでストップするエンドポイントを知覚することでACLが機能していることを確かめるそうなのですが、受傷後の膨張や痛みをかばうことで学習してしまった防御緊張によってそもそも膝関節を脱力できず引き出し抵抗が大きすぎて明確な判断ができないことがあるそうです。

いちおうレントゲンを撮り、骨に損傷がないことは確認し、「次回MRIを取ってみたほうがいいですね」
・・・じかい? また待つんかーーい!

幸い、僕は仕事の都合上2月~3月に手術になってしまっても困る立場だったので結果的にこのスケジュールで全く問題なかったのですが、スケジュールがタイトな人はMRI検査~手術がパッパと進む病院を選んだ方がよさそうです。ちなみに僕は日ごろから物事に対して受動的な性格なのもあり、ここと決めたら後からセカンドオピニオン、サードオピニオン、と渡り歩くのは性に合わないので、なんか進みがおそいなーと思いつつもあまり考えずどっしり構えておくことにしました。

次回3月入ってすぐにMRI検査を予約して終了。早く診断がついてほしいのですが、なかなかすっきりしない時間が続き、このころはちょっとしんどい時期でした。

ACL不全膝の本人としての感覚

伝説のクソゲーQWOP。ACL不全膝の関節の動きの感覚に似ている?

もちろん専門医の徒手検査とMRI検査が一番で、患者の自己判断など大した足しにはなりませんが、今思うと靭帯損傷したことで一番本人が知覚できるのが、膝関節の奇妙な不安定感だと思います。

不安定感とか動揺性と聞くと膝の関節が壊れてさぞかし不安定になるのかと思ってしまうのですが、あくまで僕の感覚ではそれはちょっと違いました。

 膝の関節はもともと解剖学的にはハマりが浅く作られていて、そのかわりそれを脱臼させないようにACLのほかに後十字靭帯、側副靭帯や半月板、膝蓋骨・膝蓋腱、関節包や多種多様な筋肉など、多数の要素で支えられているので、ACLを単独損傷しただけでは歩行もできないほどの動揺性にはなりません。実際、積極的な運動をしない人なら再建しない選択をすることもありますし、褒められたことではないですが断裂したままスポーツを継続する人もいます。

僕が実際にACLを損傷してみて膝の不安定感で独特だったのは「膝が過伸展してしまう恐怖」でした。
日ごろ歩いている時、おそらく僕たちは何も考えずに左右の足を振り出して歩いているものの、「膝が伸びすぎて逆に曲がってケガしてしまった」なんて人はいませんが、ACL不全の膝で歩くとそういう恐怖があります。実際にそこまでいってはいないかと思うのですが、自覚的にはブレーキが効かず、そのまま反対側まで行ってしまうのでは、という感覚です。

QWOPという4つのキーだけでランナーのももとふくらはぎの動きを操作して走らせる非常にくだらないけどちょっとハマるゲームがあります。単純機械操作だけで複雑な人間の走りを行わせるのは難しく、初トライではだいたい関節が変な方向に曲がってその場で転倒してしまうのですが、ちょっとこの感覚に似ているかもしれません。

いろいろとグーグル先生で調べてみると、ACLは単に大腿骨・脛骨をつないでいる機械装置というだけでなく、膝関節にかかる緊張を感じ取り筋肉の動きにフィードバックする感覚器としての働きがあるそうです。こういう例はほかに膝蓋腱反射などが有名ですが、筋肉や腱などはそれ自体が瞬時の過大な外力を感知し大脳の判断を経ずに対処し運動器官の損傷を防ぐ機能を持っています。

健全な脚であれば膝関節をコントロールしている伸展筋と屈曲筋が無意識でも出力のバランスをとってくれて膝が反対側にまでノーコンで曲がってしまうことはありませんが、ACL不全膝ではそういう無意識のコントロールに問題が出るようです。

 実際、僕も受傷後2週間から筋トレを始めるのですが、実は急性の痛みさえ取れてしまえばスクワットは問題なくできるのです。次回以降詳しく書きたいですが、僕のようなACL単独損傷においてはスクワットのような比較的ゆっくりした随意運動の範囲では何が問題なのかわかりませんし、一部の人が言うように筋トレでカバーできるように感じるかもしれません。
 が、スキーのような外力を受け止めコントロールすることが主眼の種目では不随意運動に支障が出た状態で取り組むのはとても危険です。上級者が荒れた斜面を滑るような時、おそらくは随意運動で体の基本的なポジショニングを決めつつ、下半身の不随意運動で板のバタつきを吸収している感覚があると思うのですが、そこで不適切な膝のアライメントで過大な外力を受け止めてしまったり、反応が遅れてスキーがすっぽ抜けてしまったりしたら、さらに追加の損傷につながるでしょう。

 このような膝関節の独特のノーコン感があるならば、医師の診断を受けるのはもちろんですが、もうACLに何らかの問題があるものと考えて再建術も視野に入れつつ術前リハビリに取り組んだほうが予後もいいし気分的にも前向きになれるように思います。

それでは今日はこのへんで。MRI診断~術前トレーニングについてもまた次回書いてみようと思います。




 

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