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王道を征かないがちのオタクは『結合男子』をプレイしよう!の段


皆さんは『結合男子』というゲームをご存知だろうか?

結合男子とは、友情結合シミュレーションアドベンチャーというケレン味溢れるジャンル名の、化学元素の擬人化(厳密に言えば擬人化ではないが)のキャラクターが登場する、2023年6月29日に発売されたゲームだ。
イラストレーターには人気イラストレーターのスオウ先生を起用しており、キービジュアルの美しさが何とも目を惹く。

美しい……

作品の括りとしてもヘタリア、刀剣乱舞、ウマ娘などが代表的ないわゆる擬人化モノなので、取っ付きやすさもある。
音楽もうたプリやバンドリで有名なelements gardenが担当しており、クオリティが高い。

だが、実際のプレイ人口は、作品の総合的な訴求力と釣り合っているようには今のところ思えないのが現実だ。

この記事では、結合男子の現状を捉えつつ、実際にプレイしたレビューを織り交ぜながら、ゲームの概観や、どんな人にオススメできるのか、気になる点はどこか、などについて書いていこうと思う。

結合男子って知ってる?


思い返せばこの結合男子が一番取り沙汰されていたのは、発売当日でも発売後でもなく、発表時〜発売ちょっと前だったように思える。


結合男子がNintendo Directで発表されたのが2022年9月13日だったのだが、ほんの数日前に某野球選手の某LINE(○○確定)の流出が大いにインターネットを湧かせており、その語感があまりに結合男子と似すぎていたせいで、意図しない形で話題になってしまった背景がある。
何とも気の毒な話だったが、結合男子という作品が拡散され、色々な人に知れ渡る結果にはなった。

その後、不名誉な取り上げられ方をされてからしばらくすると、ネットのオモチャにしていた外野が消失し、純粋に結合男子を楽しみにする人達のみが残った。
ゲームの発売はずっと先だというのに、AGFで売り出されたアクスタは即完売。阿鼻叫喚の声が溢れていた。

クリアファイルも含め全部売り切れていた


当時の話題性やイラストレーターの人気から、『結合男子』というゲーム名自体を知っている人は多いだろうと思う。
だが、実際に現在ゲームをプレイしている層の規模はどれくらいなのだろうか?

私の周辺にはゲーム好き、夢創作好き、CP創作好きの人間が何人もいる訳だが、誰も結合男子をプレイしていない。Twitterでパブサをしてみても、とある出来事のせいもあり(後述)感想ツイートが思ったほど見つからない。実に勿体ない話だ。

全人類……とはいかないが、結合男子に向いている人は是非結合男子をやって欲しい!と思える程度には面白いゲームだったので、取り敢えずどんなゲームかを書いてみようと思う。


ただ、一過性の話題だけで終わってしまっては勿体ないゲームだと強く思っている一方で、手放しで薦められるゲームでもない難しさがあるとも考えているので、もし結合男子が気になってこのnoteを開いた人がいれば参考にして欲しい。

どんな感じで進むゲームなのか

まずは上のイラストを見て欲しい。(綺麗だね)
ざっくりと言ってしまえば、結合男子とはこの中から2人選び、ひたすらに仲良くさせて、エンディングを迎えさせるゲームである。

最大5人パーティが組めるので、特に仲良くさせたい2人をパーティに加え入れ、マンツーマンで訓練させていけばどんどん絆を深めてくれる。
そのため、「公式だとあんまりフィーチャーされないタイプの組み合わせが好き」という生きづらめなオタクでも好きなように楽しめるのは凄いことだ。

絆を深めた後は敵と戦うバトル要素も入ってくるが、キャラクターに割り当てられた元素を組み合わせてスキルを上手いタイミングで発動し、戦局を有利に進める必要がある。

画面下の六角形がスキル名

スキルの効果は元素の組み合わせによって変わるので、特に仲良くさせたい2人以外のパーティ構成もしっかり考えて組んだり、どのスキルをどのタイミングで発動するか考えたりすると、ちゃんと戦闘もスムーズに進むようになっている。シミュレーションゲームにたまにあるゲーム性皆無なタイプではない


なお、どの組み合わせでもOKと書いたが、結合男子には公式からうっすらと推されている組み合わせというものが存在する。
例えば炭素とベリリウムがそれで、結合率(仲良し度みたいなもの)の上がり幅がやたら大きく設定されている。

ベリリウム-リチウムだと0.48%なのに対し、炭素-ベリリウムだと上がり幅が1.45%なので、かなりの差が付けられていることが分かる。
しかも、上がり幅の少ない方のベリリウム-リチウムはなんと元素同士の性質上分子術(スキル)が存在しない
寂しい……いいルートっぽいのに……。


まずは公式の推しコンビでゲーム性に慣れてから、自分の好きな組み合わせを試してみてねというメッセージなのだろうが、私が1周目に選んだのは……

はい!!!!!!!水素と炭素!!!!!!!

頭でっかちの猪突猛進真面目人間と心ちっさちの優柔不断気弱人間の組み合わせ、萌え〜^(^-^)
という不純な動機のもと公式の推薦をガン無視しつつ手探りで1周目を始めたものの、特に詰むことなくクリア出来た。

皆さんも自分の心の赴くままに推しコンビを仲良くさせちゃおう!!!!!!!!!!!

良かったところ

取り敢えず大まかな流れを説明したところで、1周目→水素-炭素ルート、2週目→リチウム-窒素ルート、3週目→水素-酸素ルートをクリアしたので、まずは良かったところを書いていこうと思う。

①どこをどう組み合わせてもいい

前述の通りここが一番デカい。
物語には、得てして大きく取り上げられがちな関係性というものが存在するが、それ以外の、相関図の端っこにあるような関係性をピックアップできるのは他には無い明確な強みだ。
プレイヤー代理である主人公と誰か、というのではなく、作品内のキャラクター同士で好きなように組み合わせられるのは珍しいと思う。

ここで1つ例を挙げて説明していこうと思う。

このキャラクターは窒素の七瀬くんというのだが、この子は酸素の栄都くん(通称兄さま)というキャラに重い感情を抱いている。

ちなみに栄都くんは右の人。マジでいいやつ。

窒素くんの酸素くんへの愛は、有り体に言えば"依存"であり、まあまあの割合のオタクが反応するのではないかと思う。
(※現に、発売前のアンケートの気になる結合ランキングでは酸素-窒素が2位だった)
ただ、私はそこまで依存というキーワードにピンと来ないタイプの人間なので、もし結合男子が窒素-酸素固定で進むゲームであればプレイしなかったかもしれない。

そんな私が2週目に選んだ組み合わせがリチウムと窒素だった。
三宙ことリチウムはチャラけた見た目に反した鋭い観察眼を持つキャラクターで、窒素が酸素に抱く依存を、「激重じゃん」とズバリ指摘する。
その一方で、「誰かに依存しなくとも、意外と一人でもやっていけたりする」という啓蒙を彼に施す。

窒素は決して無感情な人間ではない。
キャラクターの中でも肉体的、精神的にもまだ幼い分、可能性だって沢山広がっている。

閉じた世界で生きたままでは恐らく知りえなかったことを窒素は学ぶ。そして、花壇の片隅に咲くスミレを見て、「この花の色は三宙さんの髪の色に似ている」というふとした気づきを得る。そして、摘んできた花を不器用ながらもプレゼントする。

……と、ここまで書いてきたが、窒素にとってリチウムは取り分けて大切な存在ではない
先程の酸素はもちろん、酸素に目をかけられているという理由で一方的に目の敵にしている炭素など、それがプラスであれマイナスであれ、窒素が大きな感情を抱いている人間は他にもいるということだ。

リチウムと窒素のようなお互いに大きな感情のない関係は、普通ならほんの一幕でしか出番のないものだが、結合男子なら、そんな彼らに注目し、どんな結末を迎えるのかを見届けることができる

もちろん、王道ともいえるルートの出来も素晴らしいものであったので、そういったものが好きな人にもオススメできるゲームだが、私は寧ろ横道にそれがちなオタクにこそ結合男子を進めたい
自分がいいと思った関係性が全て肯定されていくのはなかなかできない体験だし、私はこの点だけでも買ってよかったと強く感じている。

②一定以上のゲーム性がある

これは人によって評価が分かれる点だと思うが、私は普段ゲームをジャンル問わずよくやるオタクなので、ゲーム性がちゃんとあることが良かったと思っている。
乙女ゲームやエロゲーなどのシミュレーションゲームも時々やるが、ある程度管理の必要なゲームの方が好きだ。(乙女ゲームで言えば金色のコルダ、エロゲーで言えばドーナドーナなどが好き)

結合男子も、育成自体は簡単なものだが、バトルは適当にやっていると普通に負けそうになることもあるといういい塩梅の難易度だったので、適度に緊張感を持ってプレイできた。

スキルにはそれぞれ性能の違いがあり、なおかつスキルを使用するための必要コスト(水=H2Oなら水素が2回、酸素が1回攻撃をすると使用可能になる)という概念もあるので、特定の元素に依存しすぎるスキル構成にすると苦戦しかねないというバランスになっている。

特性上周回が必要になるゲームなので、雑魚戦の場合戦闘スキップも任意で出来れば良かったのではと思ったりもするが、ボス戦の歯ごたえはなかなかあるので、どの組み合わせでやっても同じという虚無感は無かったのは評価できる。

水素、炭素、酸素あたりは発動できるスキルの種類が多い分、キャラ自体の性能は控えめであり、ベリリウム、リチウムあたりはその逆というレベルデザインも良かった。

③ボイスがいい

キャラの組み合わせによって分岐が多数に分かれるのだが、ちゃんと大筋のストーリーはフルボイスになっているのが偉い。
個別ルートに入ると組み合わせたキャラ同士の新規ボイスが沢山聴けるのは単純にテンションが上がるし、ご褒美感もある。
推しの声優さんがいる場合、めちゃくちゃな物量のボイスが聴けるので全ルート制覇してもいいかもしれない。

自分としてはフルボイスを聴き続けることをしんどく思ってしまうタイプの人間ではあるが、ゆったり喋るキャラが少ないのでストレスなしでプレイすることができた。

伊東健人さん、榎木淳弥さん、田丸篤志さん、古川慎さんを始め、全員存じ上げている声優さんばかりだったので、皆様演技が上手だなぁ〜と聴き入っていた。
特に窒素役の堀江瞬さんの演技がすごく良かったです。かわい〜。

④絵がいい

まあ〜〜〜絵が良すぎる。
スオウ先生の絵を沢山見られるだけでも幸せだし、買ってよかったと思う。

3Dポリゴンがなく、大きなモーションもないゲームの場合、キャラのイラストはモチベーションに直結するものになるので、キャラの立ち絵が綺麗なことは大きな売りになる。
スチル(一枚絵)が少なかったのは残念ではあるが、一番見る機会が多くなる立ち絵や戦闘イラストに力を入れられているので、推しの勇姿を味わう機会は多く感じた。

後述の理由につきイラストだけで買うのはなかなか厳しいものがあるが、システムがまあまあ気になっており、イラストの画風も好きだという場合は強く購入をオススメしたい。

気になったところ

前述の通りいい所が沢山あるゲームではあるが、気になる点もかなりあるゲームなのでそこも書いていきたい。
というよりこの気になる点がデカすぎるので、あんまり友人にも薦められていないとこはある。

①商法がいやらしすぎる

まずは下の図をご覧いただきたい。

これは結合男子の通常版を買い、そのままプレイしていた時のスクショなのだが、左から5番目以降のキャラクターに色が付いていないのがお分かりいただけたかと思う。
イラストの上に鍵のマークがある通り、モノクロ表示のキャラは編成することが不可能だ。

何を隠そうこのゲーム、キービジュアルにいる内の半分以上がDLCなのである。

嘘ではない。鉄の元素を持つリーダーも「俺を含め 自由に選抜してくれていい」とか何とか言っているが、何を隠そうこの人もDLCなのである。
だったら自由にとか言うんじゃないよ!

いくら通常版が3,300円だからといって、DLCを買わないと最大人数でパーティを組むことすらできないのはあまりに印象が悪すぎると思う。
せめて窒素くんを入れて最初から5人編成できるようにしといてくれたら、人に薦めやすくなるのに……と残念すぎる気持ちだ。

ちなみにDLCも1週間ごとに1人ずつ解禁される形なので、全員分プレイできるのは発売から約1ヶ月強も後。
恐らく長くプレイさせるための戦略なのだろうが、発売直後に買う熱心なオタクの熱が高いうちに、好きなルートをプレイさせてあちこち宣伝させ回った方が良かったのではと思ってしまった。

②主人公の扱い

これがマジで賛否両論だと思うので、敢えて"悪かったところ"ではなく"気になったところ"という項目立てにした。
このゲーム、とにかく主人公の影が薄い。

珍しい力を持っているので大切にはされているし選択肢も用意されているけど、決して深入りはされない。男子たちが友情を深めるのを(比喩抜きで)物陰から眺めるのが基本だし、主人公-キャラクターの好感度システムも存在しない。

不甲斐ない俺

巷ではよくDREAM!ingやエリオスやらと比較されているようだが、それよりかは存在感がある……が、運命の人は僕じゃないという壁も確かに存在する。
壁そのものになるドリミと、壁を隔てている結合男子という感じがする。どちらにしろキャラ同士のやり取りに集中できる利点はあるものの、乙女ゲームとしての楽しみ方はしづらい。

この件に関連して、公式のライターさんが「結合男子について大切なお知らせがある」とTwitterにて宣言。何故かツイート自体にはお知らせ内容を記載せず、「このゲームは乙女ゲームではありません」と書かれたヘッダーに誘導するという人をおちょくった謎ムーブをかましたことが話題になり、結合男子の感想や関連ツイよりも、謎ムーブについて言及したツイの方が目につくようになる異常事態になってしまう流れがあった。

この件はやり口がダメすぎるが、よしんば乙女ゲームではなかったとしても、乙女ゲーム「ではない」という否定形での触れ込みをするのが浅慮だったように思える。
言ってしまえば結合男子はBLゲームでもないので、乙女ゲーム好きな人だけが排斥されるような書き方ではなく、「恋愛要素はありません」程度に留めておけば良かったんじゃないだろうか。

ごめんなさい

主人公にもう少しだけ寄り添った形にしておいて、ある程度プレイヤーの感性に委ねるつくりにした方が、色んな人にプレイしてもらえそうなのにな……。

③周回ゲーという自覚がない

元素の組み合わせによって45通りものルートがあるこのゲームは、周回が前提となる。
組み合わせを変えては育成→戦闘→育成→戦闘を繰り返していくことになる訳だが、周を重ねようとも育成、戦闘の負担が軽くなることはない

ストーリー自体は既読スキップ(超高速早送り型)があるものの、育成や戦闘は手作業が必要になるので、まあ手間がかかる。

ボス戦とボス戦のインターバルに雑魚戦が挟まるのだが、結構強いし時間もかかるので、これは任意で飛ばせるように今からでもできんか!?!?!?と思ったりする。
45通りも組み合わせがあると、じっくり攻略したいルートとさくさく進めたいルートがどうしても分かれてしまうので、流れ作業での周回ができないのはかなりのストレスである。

ストーリーはちゃんと読むって約束するから!ちゃんと全ルートやるって約束するから!だから自分が周回ゲーだという意識を持って、ちゃんと戦闘スキップができるようになってよぉ〜ッ!

結合男子をやるか、やらないか

結論、「どんなキャラ同士でもエンディングを迎えられる唯一無二のコンセプト、ゲーム性もちゃんとあるし絵もめちゃくちゃ綺麗なゲーム」だが「DLC商法と公式のやり方が微妙でかなり根気がいるゲーム」という二面性を持った作品なので、良い点とそうでない点を見比べて、ヨシ!と思えば購入するといいし、うーん……と思えば様子を見るといいと思う。
DLC商法は気に入ったキャラだけ買えるというメリットでもある訳だからね。

とにかく私は私のような相関図の端っこのあたりの関係性を好きになりがちなオタクにはこのゲームの購入をオススメしたい。
あと好きな声優さんがメインキャラにいる人、スオウ先生の絵が好きな人も該当する。

けど、本当に商法とか周回とかが微妙なとこもあるゲームなので、その辺は自分の心と相談して決めてください。

私は、日頃の行いを良くしたらアップデートが入るかもしれないので、まずは1日1回感謝の周回を始めようと思います。次はリチウム-ベリリウムルートにお邪魔します。
それでは。

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