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それぞれが向き合うべき映画「すずめの戸締まり」考察&個人的な感想(ネタばれ含む)

2022年度一番観た映画が「すずめの戸締まり」で3回も見ました。
観客者に先着順でもらえる限定の新海本が目当てというのもあったけど何回も観に行った作品は久々でした。

「すずめの戸締まり」は新海誠監督作品の「君の名は。」「天気の子」に続くディザスター三部作の完結編にあたる作品です。
前作の2作品と違うのは架空の災害を想定せずに東日本大震災をダイレクトにテーマにしているところです。
他にも新海誠監督作品ぽくない(独特な世界観や描写の癖がない)作品だったということもあって、いろいろな方の考察や感想も見たのですが新海誠監督作品の中でも賛否両論となっていて意見が真っ二つに分かれてますね。

私はざっくり言うと「賛」派

賛否両論の部分について個人的に言いたいことがあるので言わせてもらいますが…

前提として言いますが…
作品を見てどう感じどう考えるかは個人の自由です。
それをSNS等で発信するのも自由です。ですが東日本大震災の被災者当人でない方々が「被災者の方が作品を見たら…どうだろう?心にダメージが?トラウマが?問題だよね?だから駄作である」って言うのは違うと思います。

作品を見てショックを受けて最低な作品だと震災絡みの部分で強く批判できるのは被災者としての体験がある人に批判する資格があるのではないかと思います。

一応、地震警報アラームについての注意喚起はされてるし、注意喚起が足りないから知らないで見ちゃう危険があなどの意見もあるけど私自身が見る前に東日本大震災の描写があると理解して見ることができたということが注意喚起され周りに周知されてる証拠だと個人的には理解しました。

中には被災者の方が「被災者がショックを受ける映画だから見ないほうがよい」という感想を気にして作品を見たくても躊躇しちゃう人もたくさんいると思うんです。

個人的には見たい人が躊躇せずに多くの人が見れたなら賛否両論ではなくて「賛」の意見が増えるんじゃないかと思います。

今作はメッセージ性が強く万人受けに作られている作品なので本来は多くの人に見てもらうべき作品

  • 東日本大震災を経験していない若者に向けてのメッセージがあったり

  • 避けられない災害が起こる未来をこれからどう向き合っていくべきかという問題投棄がされている

  • ディザスターに限らずトラウマなどによってインナーチャイルド問題を抱えてる人に向けてのメッセージもあったりする

それらの人々へ向けてのメッセージがたくさんつまっていて監督がやりたかったことって未来へ進むために必要なメッセージを届けたいということで三部作の最後が「すずめの戸締まり」なんだと私は思いました。

意外にも前向きなメッセージ作品

公開当初は躊躇なく見れる人や新海誠監督作品信者や話題作は見ようって人が多めだから賛否両論になったんだと思います。

もし「すずめの戸締まり」を見るのを躊躇してる人がいるならば気になっているという時点で(インナーチャイルドからのメッセージかもしれないから)見たほうがいいと個人的には思っています。
誰にでも未来に進むためには向き合わなくてはならないことがある。
そのためにも自分自身を含めて「すずめの戸締まり」という作品に、それぞれが向き合ってほしい──

まずは、そこからですよね。

※2022年12月現在アマゾンプライムビデオにて「すずめの戸締まり」冒頭の12分がノーカットで公開されてるので見てない方で気になる人はこちらをチェックしてみるのもいいと思います。


ここからはネタバレありで個人的な感想や考察も含めた気づいたことを語っていきます。


【音響効果について思ったこと】

RADWIMPS✕陣内一真が良かったです。
どちらの方の曲も好きなのでリピートで聞いてます。
「すずめfeat十明」「東京上空」は特に好きです。
今回は新海作品の前作や前前作にあった作中の中での主題歌&挿入歌推しがなかったので物語に集中できました。
この方が逆に音楽にも集中できて曲の歌詞の意味も理解がしやすかったように思いました。

効果音も良くて映画館だから感じられたんですが何回見ても音がリアルすぎてビビった場面があります。
それは怪我した草太を手当てするために鈴芽の家に行き草太が2階に行く時の足音がめっちゃ日常の効果音でリアルでハッとしちゃいました。

あと戸締まりをする時に鍵穴を出現させるために過去にあった人の思いを振り返る場面で各キャラの過去のセリフが散りばめられてるようなんです。
廃校の戸締まりでは分かりやすく昔の千果ちゃんがいましたよね。

最初の場面で鈴芽が要石を外してしまう場面も要石から声っぽい囁きが聴こえるけど「すずめの子になりたい」って言ってるような…でも何かを囁いていますよね。
音響設備の良い映画館でないとかなり聞き取りづらいのですが、この作品では音響効果が大事な役割をはたしていたように思いました。

音が重要なヒントになってる場面も多くあったので「すずめの戸締まり」を映画館で見るならばIMAXかドルビーシネマでの視聴をオススメします。

【宗像草太について思ったこと】

最初の登場シーンの表情を見てください。
鈴芽は彼との出会いのシーンで草太を見て一目惚れしたのか「きれい」って言ってたけど私は彼の憂いの表情がとても気になりました。
閉じ師として全国を旅してる表情っぽくなくて、どこか冷めてるというか諦めてるというか閉じ師の才能があるから祖父と一緒に暮らしていたみたいで両親とは疎遠っぽいんです(新海誠本2より)それで父親が教師だから草太も教師を目指している。
それって父親への憧れのような思いがあって子供の頃に空いてしまった穴を埋めたい気持ちがあるから教師になりたいんだと思う。
鈴芽も母親が看護師をしていたから看護師を目指している。
鈴芽も母親との関係性で子供の頃に空いた穴を埋めたい気持ちがあるから看護師になりたいんだと思う。
二人共とても境遇が似ている。

草太は閉じ師の才能があるだけあって勘が冴えている。
どこかで要石になってしまうかもしれないとか閉じ師の仕事は一生やっていくことになるだろうって覚悟していたはず…だからイスになった草太は「もしかしたら…すでに僕は…分かっていたけど」って要石として凍りつきそうになりかけるシーンが何回もあった。

彼は閉じ師として生きるために自分の本音というか自分自身のインナーチャイルドを扉の奥にしまい固く扉を閉めて生きてきたんだと想う。

草太の友人の芹澤君が草太のことを「アイツは自分の扱いが雑なところがあるからアタマにくる」みたいなことを言ってたけど心の扉を閉め切って生きてきたのが昔の草太だったんじゃないかと。

その心の扉を開けたのが鈴芽だったんだと思います。

それがクライマックスの部分の草太の「やっと君に(鈴芽)会えたのに」というのは恋心というより自分の心の扉を開けてくれた初めての人が鈴芽であり草太にとっては、ちゃんと自分と向き合って生きていくことの大切さを気づかせてくれたのが鈴芽だったということです。
最後は「もっと生きたい」って心から叫んでたよね。

【芹澤朋也について思ったこと】

気遣いの芹澤君でしたよね。
鈴芽が扉を開ける人とするなら芹澤君はちゃんとドアをノックしてくれる人です。
ノックしてから相手の許可を得てから扉を開けようとする人です。
とても優しいし素敵な人でした。
記憶力も良くて忘れない人。
みんなが忘れてしまう大事なことを忘れないでいられる人。
それに大事なことをちゃんと気づける人。
環が「キミ意外と良い先生になるかもしれないね」と言ったのは大事なことに気づき忘れない先生は子供たちにも大事なことを教え伝えることができるからかなと思いました。

福島原発事故の描写を「この辺りって、こんなにきれいだったんだ」って芹澤君が言うシーンがとても印象的でしたよね。
芹澤君は大事なことを気づかせてくれる人なんだよね。

【岩戸環について思ったこと】

環さんが「鈴芽がいたから…私は」ってブラックモード全開で心の闇を鈴芽に吐露するシーンはとても重要で前に進むために必要な場面。
環さんみたいな思いを抱えている人は被災者に限らず現実にたくさんいると思う。
私も母親からは「あんたさえ、いなければ…」ってブラックモード全開でぶつかられたことは多々あります。
こういうことって避けがちだけど自分と向き合うためには必要なことなんですよね。
サダイジンは未来に進むために必要なことだと知っていたから環に本音を言わせたんだと思う。
環さんが自分の心の中を吐き出した後に鈴芽を自転車に乗せて鈴芽に言った言葉

「それだけじゃないとよ」

って言葉が深いなと

黒い気持ちとは逆に何倍もの「大事なこと」が環さんにはあったから頑張れたってこと…鈴芽にはそんな環さんが重かったかもしれないけど、鈴芽との時間が環さんにとってとても大切だったって意味なんだよね。

ダイジンと鈴芽の関係性と環さんと鈴芽の関係性については同じような考察をしている人が多いのですが私も同じ考えです。

鈴芽✕ダイジン=環✕鈴芽
鈴芽=環     環=鈴芽
ダイジン=鈴芽 鈴芽=ダイジン

(サダイジン✕ダイジン=環✕鈴芽)

「うちの子にならない?」という同じ意味のセリフもあって二組の関係性が実は対の描写になってるんですよね。

【ダイジンについて思ったこと】

ダイジンについての説明が作中にないんですよね〜だからダイジンが謎すぎて結局のところなんなのかということで考察している人がたくさんいますがダイジンって何者なんでしょうか?

分かっていることは
神様であり要石ですよね

名前がダイジンというだけあって「大臣」「大神」由来なのは確からしいのですが私が最初に思った名前の由来は最初に鈴芽の部屋にあった缶(草太が3本足のイスを安定させるために使った缶)鈴芽が子供の頃に土に埋めておいた缶(被災地にあったタイムカプセル缶)どちらの缶にも「すずめのだいじ」って書いてあったんです。

※追記(12/30にTwitterのスペースで新海誠監督が「すずめのだいじ」とダイジンについての質問に答えていました。監督的には無関係だそうです。)

だいじ=ダイジン

なんじゃないかと私は思いました。
ダイジンは『大事なことの象徴』じゃないかと思ってます。

ダイジンを忘れたり無視するということは大事なことを忘れてしまったり無視することに等しい。

要石ってとても大事ですよね。

ダイジンは要石として忘れさられていたから力がなくなりかけて鈴芽でも石を抜いちゃう事が安易だったのかもしれない。
人間の手で常世のミミズを抑え要石を置き直してほしくて選ばれたのが鈴芽だったのかもしれない。

でも、どうしてもダイジンのシーンで好きになれないシーンがあります。
東京の戸締まりのシーンです。
「人がたくさん死ぬよ」
「また繰り返すね」
ってとこだけは不快感が拭えません。
批判してる人の多くはこのシーンのセリフに嫌悪感があるんじゃないかと?ミミズに草太=要石を鈴芽に刺させるためだったとしてもダイジン煽りすぎだなと…ちょっと思いました。

でも最後の「すずめの子になれなかった」って言って要石の努めに戻るダイジンは切なかったですよね。

【岩戸鈴芽について思うこと】

鈴芽は扉を閉めるというよりも名前も日本神話のアメノウズメ由来らしく私は扉を開ける人ってイメージです。

子供の頃に常世に入った経験があったから常世のミミズも鈴芽だけには視えたんだよね。

子供の頃に常世で草太にも会っていたから忘れていてもインナーチャイルドである「小すずめ」が覚えていたから気になってしかたなくて無意識で学校にも行かず草太を追って廃墟に行ってしまったんだと思った。

それと運動神経がめちゃめちゃいいですよね〜スタントマン顔負けで突っ走ってくところが最初は違和感あったけど何回か見ていくうちに、こんな姿も彼女らしいねと思えるようになりました。

細かく観るといろいろなことに気づきます。

最初の鈴芽の常世のシーンも何回か見ると草太の靴を履いて草太の服を着ている未来の鈴芽だったということがなんとなく分かります。

同じく最初のシーンの東日本大震災の瓦礫そのものではなくて鈴芽が迷って入ってしまった常世の世界のシーンはあの瞬間の人の体験や想念から生まれた常世の背景であり瓦礫の世界だったということでいいんですよね?
草太が最後に「お返し申す」って常世での瓦礫混じりの灼けた土地をお返ししてたので私はそう解釈しました。

全ての時間が同時に存在する場所が常世だから慎重な解釈が必要だけど例の3本足のイスは常世にあったことになりますよね。

草太がイスになった3本足のイスはループしてないという解釈でよいのかな…あと何回か見直さないと分かりづらいとこありますね。

鈴芽と一緒に黄色いモンキ蝶が2匹飛んでる描写がたくさん出てくるんだけど鈴芽の亡くなった両親だって思う人もいるけど私は常世につながる扉の蝶番の象徴で常世からの使いだと思ってます。
蝶番は基本的に二つあるし鈴芽が常世に入れる扉は一つだけで『その扉には黄色いチョウツガイがついてるのかもしれない』って思ったのです。
物語の大事な場面や常世の扉と関係している場面で必ず蝶が飛んでいるので鈴芽を守ってるのは確かですよね。

自分だけが入れる常世の扉があるのなら自分だけの蝶番の使者がいて現実の世界でも蝶が飛んでいるのかもしれない。

作品の中でアゲハ蝶や紋白蝶いろいろな蝶が出てくるので蝶には何か意味があるんでしょうね。

「すずめの戸締まり」で一番泣いて一番心に刺さって一番好きなシーンが最後の常世で鈴芽が過去の自分(子鈴芽)と対話するシーンです。

これこそ未来に進むために必要な大事なことだと思った。

きちんと自分自身と向き合うことがとても大切だというメッセージがあった。

自分をゆるして
自分に感謝して
自分を大切にして
自分を愛すること

「私は、ずっと前に大事なものをもらっていたんだ」

鈴芽が自分と向き合うために鈴芽自身が頑張ってきたのは勿論だけれども…その背景には環さんが愛してくれたり新しい慣れない環境でも鈴芽を受け入れてくれた九州の人々あってのことで感謝することで人は生きていける。

感謝することが明日へつなぐ鍵となる──

刹那の中で生きてる私達はヒトであることを忘れてはならない
人との出会いに感謝をし場所に対しての悼みや慎みを忘れないで今を大切に生きていかねばならないというメッセージが伝わってきました。

2022年では私が一番感銘を受けた映画でした。
素敵な映画を作ってくれた新海誠監督とスタッフ皆様に感謝いたします。

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