深海のお話/4.夏の風鈴

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「風鈴だ...こんなところでも、夏はやっぱり来るんだねぇ。」
「そうっすね...あんたがこの世界を作ったってんなら、何もかも知ってるんじゃないんすか?」
「いやいや。僕は全知全能じゃないさ。神ではあるかもしれないけどね。僕はただ...「作って」「維持して」いるだけさ。少し懲らしめてあげることもあるけどね」
「はは...ま、そんなもんっすよねぇ...ところで雪原さんは寒暖を感じないんですよね?味覚とかどうなってるんです?」
「感じないのは体だけだよ。味はちゃんとわかるさ。僕の「子供達」が作り出した物を何も味わわずに食べるだなんて残念じゃないか」
「...確かに。あ、そこの角敵いますよ。グレ投げてください」
「了解...ほんとだ、やるねぇデコルト。僕でも気づかないや」
「まあ...実地訓練の成果ですかねぇ...よし、キーアイテム取ったんで次行きましょ」
「はは、了解。しかしゲームとなると僕でも適わないなぁ...少し不思議な気分だ」

扇風機が静かに回っている...
風鈴が揺れている...
「あの世界を崩壊させたら、君はこっちでお話してくれる?」
「さぁ...でも僕はこれからもその日暮らしでいくつもりですよ。何事も「適応」が肝心ですから」
「はは、これは「mother」も気に入るわけだ...君はきっと忘れられない人になれるよ、良くも悪くも...」
「...motherってなんです?」
「ふふ、秘密。そこに多分ボックスがあるんじゃないかな?もし銃弾入ってたらいくつか欲しい」
「ありました...あー、銃弾は小口で大丈夫っすか?今使ってるのT-44か何かですよね」
「いや、今スナイパーにハマっててさー...AK使ってる」
「うっわ、どうせサイトつけてないんでしょ?強いなー...」
「いやいや、流石に2倍はつけてるって」
はは、と笑いながら彼は続ける。
「はいこれ、長口...ていうかさっきから見てる彼等は放っておいていいんですか」

「いいんだよ。彼らがいないと僕らは行動できないんだから...」
「ふぅん...クリアですね、次どうします?」
「一旦休憩しよう。お茶でもどうかな?今日はアールグレイだよ」
「いいですね、じゃあこのケーキも一緒に」
グニャリ、と彼は腕を体の中に突っ込んで、紙袋を取り出した。
「いつ見ても気持ち悪いねそれ...嫌いじゃないよ」
「どっちですか...まあいいです。頂いちゃいましょ。これ迷宮の冷蔵庫に入ってたんで多分ボス達のですけど」
「これ「TRUE&easily」のやつでしょ?美味しいやつじゃん。大丈夫大丈夫、後でいい感じに混ぜとくから」
「うわぁ...腹黒いですね」
はは、と彼は笑う。
「君もだろう?本当のこと隠してまであそこにいる必要ある?」
「いいんですよ、どうせお遊びみたいなもんですから。ここまで足突っ込んだら戻れませんし」
「ははは!君らしくていいね。さ、紅茶が入ったよ。休憩にしよう」

「君もどうかな?そんな四角い小さな画面から水面下を覗き込んで...1度立ち止まってみなよ。まだ戻れるはずだからさ..........」
「早く行きましょ、紅茶冷めます」
「はいはい、夏は氷をたっぷり入れたのに熱々のを入れるのが格別だって知らないの?全く...」

風鈴が揺れている。
日差しが暑く、揺れる木漏れ日が思い出をなぞっていく.......

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