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映画「スティルウォーター」について

どうも、P子です。
本日は現在公開中の「スティルウォーター」を取り上げたいと思います。
「スポットライト 世紀のスクープ」のトム・マッカーシー監督、
マット・デイモン主演ということで公開前からかなり楽しみにしておりました。構想から10年で、一度脚本を書いてから寝かせて全面的に改稿したそうです。

(あらすじ)
「人生は冷酷だ。」
アメリカ オクラホマ州のスティルウォーターに住むビル・ベイカー(マット・デイモン)。石油掘削作業員であったが失業し、竜巻被害のがれき撤去作業などをしながら、フランスのマルセイユで服役している娘アリソン(アビゲイル・ブレスリン)に定期的に会いに行っている。アリソンはマルセイユに留学で訪れたのだが、ガールフレンドのリナを殺害した罪で実刑判決を受け、すでに5年服役しているが無罪を訴えている。
彼女は真犯人に関する情報を書いた手紙をルパルク弁護士に渡して欲しいとビルに託し、ビルは苦労して弁護士に会うが、まともに取り合ってもらえない。アリソンを失望させないために自分が真犯人を見つけようとマルセイユに残り、ひょんなことから知り合ったヴィルジニーとマヤの協力を得て、独自に捜索を始める。


そう、これは事件の起こるところから始まるのではなく、すでに5年前に起こっていて、娘の無実を信じ、真犯人を探す父親を描いた物語なんです。
異国の地で言葉も文化も違う中、事件の真相に迫ることの大変さがすごくリアルに描かれています。
そもそもなぜ5年も経ってからビルは動き始め、娘のために奔走するのか。
物語が進むにつれ、少しずつ彼らの抱える問題が見えてくるんです。
一つの事件が一筋縄ではないスリラーであり、
そしてマット・デイモン演じるビルと、彼と事件を取り巻く人々の人生に迫る重厚な人間ドラマであるところに魅力を感じました。

ここからはラストには決して触れませんが、ほんの少しだけ私なりの解説&キャラクター紹介を。
ビルという人物は無骨でガタイがいい、ぶっきらぼうだが信心深く、アメリカの田舎町の男といったキャラクター。すごく孤独な人で、妻は娘が小さい頃に自殺しています。元石油掘削作業員で家にあまりいなかったし、ドラッグやアルコールに溺れていた過去があり、娘の事件当時もそういう生活をして負い目を感じていて立て直したいと思っている。だからこそ、娘を信じてビルは酒を断ち、娘の信頼を取り戻すべく奔走します。
マット・デイモンは昔からファンなのですが、最近特に深みが増していて、
今回の役は今までにない役柄で、言い尽くせないくらい、めちゃくちゃ良かったです。
一方娘アリソン。はたから見ると普通の子なんですが、幼少期から喪失感を感じていて、すごく色々抱え込んでいる人物。留学時にルームメイトであったリナを愛していたのに殺人の罪を疑われて捕まってしまう。彼女も異国で、疎遠になっている頼りない父しか頼れない。ちなみにアリソンを演じるアビゲイル・ブレスリンはどこかで観たことあると思ったら、「リトル・ミス・サンシャイン」のオリーブ役の子でした。難役ですが、すごくリアリティあって彼女にも感情移入してしまいました。それにしても、大人になっているー!
そのほか、偶然出会うヴィルジニーは、マルセイユの舞台女優で、英語も話せるのでビルのガイド役になっていく女性。いつも生き生きとしていて、シングルマザーで忙しいながらも自然に人助けをしてそれを厭わない女性です。こちら演じているカミーユ・コッタンは「House of GUCCI」でもパオラというマウリツィオの友人でのちに愛人となる女性を演じています。自然体な魅力があってどちらもハマっていました。
そのヴィルジニーの娘マヤがなんとも可愛いんです。
リル・シャウバウというダンサーで演技は本作で初めてらしいですが、
子供らしい可愛さも持ちながら、年齢のわりに大人びていて時にハッとさせられる表情をするので一気にファンになってしまいました。
演技続けて欲しい!これからがめちゃくちゃ楽しみです。

物語はビルのいる場所で大きく3部に分かれて構成されています。
パート1はオクラホマにいる時、
パート2は犯人探しでマルセイユにいる時、
パート3はオクラホマに戻った時。
タイトルである、「スティルウォーター」である意味、
劇中2度出てくる「人生は冷酷だ。」という言葉が、ラストに深く重く感じられます。
人はいろんな人と関わっていき、色んな体験をすることで
一目にはわからなくとも変化をしていく。自分でも気づかないうちに。
ラストの会話は、ぐわっとくるものがあって、終わってすぐにメモしてしまったほどです。

ビルの心情を表すようなカメラワークやシーンの作り方も素晴らしいです。
撮影監督は高柳雅暢さん。スポットライトでも担当されていて、日本の方なのか!と思ったら自分が好きな作品をたくさん撮影されていたので他の作品をチェックせねばと思いました。

スリラーでありながら、細かい人間描写がある、すごく深みのある映画です。公開2日目の昼過ぎに空いていたのが全く納得できません。
見応えあってとても面白い作品なので、ぜひ!!


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