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20230305_『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

作品概要

2022年製作/139分/G/アメリカ
原題:Everything Everywhere All at Once
配給:ギャガ
公式サイト:

あらすじ

経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、
盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、
「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。
まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!
カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、
なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!

公式サイトより

作品所感

・「なんでも、どこでも、お好きなように。」
公開してからも、普段「ネタバレOK」派の私も皆さんのレビューや感想を観ないように、なるべく早く観に行きました。
大雑把な感想としては、大好き!最高!です!
やはり、「ヘンテコ映画」大好き!、香港カンフー映画大好き!そしてアジア人である自分にとってはたまらない作品であったと思います。

題名である『Everything Everywhere All at Once』。
これだけ観て、映画に臨むといわゆるマルチバースものなので、
「すべてがどこでも即時に」つながる世界なのですが…。
ENDの瞬間、ドーンとでる中国語題名『天馬行空』とでた瞬間、
心の中で「あああああああああああ!!!!!なるほど!」となった人でした。
『天馬行空』

天馬が大空を勢いよく駆け回るように、思想や行動などが自由なこと。また、文章などがのびのびとしているさま。

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%A4%A9%E9%A6%AC%E8%A1%8C%E7%A9%BA/

私が高校生の時に、恩師である国語の先生(女性)が、全生徒(特に女性とへだったと私は理解しました)
「皆さんの未来はどんなことがあるかわからないけれど、『天馬行空』で行きなさい」
と言った記憶が個人的にわぁーーーと蘇る物語でした。
主人公であるエヴィリン、また娘のジョイ(いい名前だね)に向けた言葉なのだと。
なんとなく日本語に訳すとふにゃふにゃした感じですが、自分的にピッタリきたのは
「なんでも、どこでも、お好きなように。」
でした。

他のレビューにもありますが、これは大きな意味での、家族、夫婦、親子の破綻した関係からの再構築の物語であると同時に、エヴィリンという人生八方ふさがり、自分の選択に後悔しっぱなしの中年女性が「なんでも、どこでも、お好きなように。」と、自分に、そしてジョイ(娘)に向けた花束のような物語なのですよね。
※これ以上詳しくは言いませんw

・現在における「カンフー映画」の是非
前述もしましたが、私は世代的にも自身の映画鑑賞歴史からみても、情操教育並みに香港カンフー映画で育ちました。
この映画自体も最初ジャッキー・チェンが主人公を演じる前提で描かれたとのことですが、監督、製作陣の熱量は理解に難くなく「わかるーーー!ありがとうーーー!!」と心中感涙しておりました。
ただ、香港返還からやはり香港カンフー映画は衰退しましたし、大きいのはカンフー映画そのものが「暴力」を描いていることに変わりないので、
この世相の流れからきつい向かい風に立たされていることは把握しています。
この作品、特に前半のウェイモンドと警備員たちが繰り広げるアクションシーンには「なんで?そこまでやるの?」という声が上がるだろう(現に上がったようですね)とは思いました。
でもーーー、実はあれもこの映画の計算なんだな。とラストシーンに向けて気づくわけです。
ウェイモンドの「争わない」戦い方。本当の強さって何だろうね?と、ふと私の思考が集中する瞬間がありました。
ウェイモンドを演じたキー・フォイ・クアン自身、生計を立てるためにハリウッドでカンフーアクション指導をしていたという背景もあり、
カンフー映画におけるアクションと暴力描写とは?という部分には説得力を感じましたし、カンフー映画を愛する人たちの「現代への解」があったと思っています。

カンフーアクションのスタントマンの盛衰を描いたこのドキュメンタリーも面白いのでぜひ。

・ミュージカルオタクから。ステファニー・スー、サイコーーーーー!!!
もちろん、ミシェル・ヨー、キー・フォイ・クアンの演技は素晴らしかったです。
でもね、やっぱりBwayミュオタから言わせてもらうと、
ステファニー・スー、最高にクール!最高にかわいい!
でした。
ミュオタ目線のステファニー・スーは
スポンジ・ボブ・ミュージカルでのカレン、Be More Chillのクリスティンでも最高にキュートでクールでイカしてたので、今回の作品でオスカーノミネートは納得です。
というか、キャスティングディレクター、絶対上記2作観てたでしょ!
ってなりました。

スポンジ・ボブ・ミュージカル最高!

・お衣装サイコー!
今作で個人的ヒットは、前述のステファニー演じるジョイがマルチバースで着こなすお衣装の数々でした。
ミシェル・ヨーとキー・フォイ・クアンが違うバースで見せる、ウォン・カーウァイの『花様年華』を思わせるお衣装も素敵でした。

https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-features/stephanie-hsu-fashions-everything-everywhere-all-at-once-1235272041/

costume designはシャーリー・クラタ。日系アメリカ人の方。
今回映画衣装は初めてとのことですが、本当に素晴らしい!
尊敬するアーティストが石岡瑛子と草間彌生というのは納得。
なんと衣装の準備期間はたったの1カ月半だったそうで!

インスタも素敵だった。

https://www.instagram.com/shirleykurata/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D


アジア人キャスト&スタッフという点の評価や深堀についてはもう少し必要そう。エヴィリン&ウェイモンドの1世と、ジョイの2世のカルチャーの違いとか…
『ジョイ・ラック・クラブ』観なおしたくなっちゃったな。
そういえば、ジョイの名前ってこの映画から来てる?とか地味に思いました。

と、まあ、書きたいことを書きましたが、
とても心熱くなる作品だったのでぜひ観て確かめていただきたいですね。
愛すべき「ヘンテコ映画」
特に、「思いもしない変なことをするとジャンプできる」設定は、あれ、製作過程のネタだしで相当盛り上がっただろうなぁとか、心の中で手をたたいて笑っていましたよ。
いい意味でこんな「ヘンテコ映画」で、アクション映画で、アジアンキャスト&クルー中心の作品がオスカーを獲ったら!
と思うと、なかなかにワクワクします。

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