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20230121_風姿花伝プロデュース vol.9『おやすみ、お母さん』

作品概要

風姿花伝プロデュース vol.9 『おやすみ、お母さん』
(原題:'night, Mother)
作:マーシャ・ノーマン
翻訳・演出:小川絵梨子
出演:那須 凛…ジェーン・メイツ
   那須佐代子…セルマ・ケイツ
公演日:2023年1月18日(水)~2月6日(月)
シアター:シアター風姿花伝 http://www.fuusikaden.com/
上演時間:1時間45分

作品について

「おやすみ、お母さん」はアメリカの劇作家マーシャ・ノーマンによる母と娘の二人芝居で、「親と子」「生と死」という究極の問題に真正面から向き合いピューリッツァー賞(1983)を受賞した作品である。

母セルマ役には那須佐代子、娘ジェシー役には期待の新人に贈られる読売演劇大賞杉村春子賞を受賞した那須凜が演じる。

翻訳・演出は、昨年度の風姿花伝プロデュース VOL.8「ダウト〜疑いについての寓話」を小田島雄志翻訳戯曲賞、ハヤカワ悲劇喜劇賞の受賞に導いた小川絵梨子が再び担当する。

公演HPより http://www.fuusikaden.com/mother/

いままで日本でも、青年座(2006年上演時公演名『おやすみ、母さん』訳=酒井洋子 演出=須藤黄英)、メジャーリーグ(2011年『おやすみ、かあさん』訳:酒井洋子 演出:青山真治)等でも上演

観劇所感

いままでの日本上演は観ていなかったので、今回作品自体は初見でした。
鉄板の風姿花伝プロデュースで、一昨年末衝撃を受けた『ダウト』に引き続き、小川翻訳・演出、そして何と言っても小川演出作品に今やなくてはならない那須佐代子、飛ぶ鳥を落とす勢いの那須 凛、母娘二人芝居。
「これは観に行くしかねーだろ!」
と昨年からチケットを取り、わくわくしながら風姿花伝へ。

結果。やー-------、新年からいいもの見せてもらった。
強烈にしんどいけど。

本作の作家は、マーシャ・ノーマン。
この作品でピューリッツァー賞を受賞していますが、ミュージカルオタク目線でいうと、ミュージカル版の『秘密の花園(The Secret Garden)』(1991年)、『赤い靴(The Red Shoes)』(1993年)、『カラー・パープル(The Color Purple』(2005年)、『マディソン郡の橋(The Bridges of Madison County)』(2013年)の脚本や作詞で知っている方も多いのではないかと思います。

特に、ジェイソン・ロバート・ブラウン(JRB)とはoffで上演された『白鳥のトランペット(The Trumpet of the Swan)』と前述の『マディソン郡の橋』でもタッグを組んでいるので…
「もしかして「鬱」作品作るとすごいのでは?」というおかしな期待もしてしまうわけです。(ほめてる)

【観劇後の所感】(以下ネタバレあります)
「母娘もの」という以外、前情報を入れずに観に行ったのですが、
想像以上にしんどい(いい意味で)作品でした。

ある土曜の夜8時15分から物語が始まります。
とあるアメリカの家庭のダイニングリビングで展開される完全1幕もの、ノンストップの二人芝居。
演出上なのか、脚本指定なのかは確認が必要ですが、リビングには8時15分から始まる壁掛け時計があり、上演時間がほぼ1時間45分というのもミソ。

リビングでいつもの土曜の夜を過ごそうとする母セルマ、
せわしく「何か」の準備をしている娘ジェシー。
「何か」をするために準備をするジェシーとセルマの会話で、ジェシーが「パパのピストルはどこ?」というところから、「あれ?」となりはじめ、
娘ジェシーが準備してる「何か」が自殺で、「今夜10時にベットルームで自殺する」という宣言から、この作品の題名『おやすみ、お母さん』というセリフに至るまでの、母と娘の1室で繰り広げられるある時は静かで、ある時は激しいバトルです。

パンフレットに小川さんのコメントで「本作は母娘の物語でありながら、個人の尊厳についての物語でもあると思っています」
とあります。
尊厳、死を自ら選ぶ尊厳、その選択をさせまいとする母。
正解は????
解を導くのはできるのかな?できないだろうな。と。この作品を観て強烈に思いました。
私はひとりの娘の母でもあるので、娘と同じ状況に立ったら、やはりセルマのようにギリギリまで娘には生きることを選んでほしいと思うし、狼狽しつつ何とかして止めようとするのは当たり前だと思う反面、
娘ジェシーが抱える「もう私が私の人生の中で自分の思い通りに成功されられるのは死ぬことだけ」という思いに至る絶望感というより虚無感も…わかると言ったらいけないのかもしれないけど、痛いほど伝わる…。

答えはないです。

この年になると、友人・知人の中にも自ら死を選んでしまった人が数人います。そんな彼らを少し思い出しながら帰路につきました。

那須母娘の関係性や俳優としての信頼感に裏付けられた間合いと呼吸、感服いたしました。

映画版あるんだ!

1986年に映画化されているんですね。
興行的には芳しくなかったみたいですが、評価はよい感じですね。
なにせ、主演がシシー・スペイセクとアン・バンクロフトだもんね!
こりゃあすごいや。探してみようかな。
シシー・スペイセクの母娘ものって…ものを発火させちゃったりしないよな…とか冗談で思いつつ(笑)


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