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20230422_ミュージカル『マチルダ』

作品概要

ミュージカル『マチルダ』
(原題:Matilda the Musical)
原作:ロアルド・ダール『マチルダは小さな大天才』
脚本:デニス・ケリー
音楽・作詞:ティム・ミンチン
脚色・演出:マシュー・ウォーチャス
振付:ピーター・ダーリング
デザイン:ロブ・ハウウェル
オーケストレーション・追加音楽:クリストファー・ナイチンゲール
照明:ヒュー・ヴァンストーン
音響:サイモン・ベーカー
イリュージョン:ポール・キーヴ

日本公演スタッフ
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
演出補:西 祐子 藤倉 梓
振付補:前田清実
音楽監督補:竹内 聡 

キャスト(2023/4/22 マチネ)
マチルダ:寺田美蘭
ミス・トランチプル:小野田龍之介
ミス・ハニー:咲妃みゆ
ミセス・ワームウッド:霧矢大夢
ミスター・ワームウッド:田代万里生
ミセス・フェルブス:岡 まゆみ
ブルース:後藤レイサ
エリック:廣門来輝

公演日:東京公演 2023年3月22日(水)~5月6日(土)
シアター:東急シアターオーブ
上演時間:1幕75分/休憩20分/2幕65分(2時間40分)
企画制作:ホリプロ

あらすじ

5歳のマチルダは、図書館にある難解な本も全部読みつくしてしまうほど、高い知能と豊かな想像力を持った少女。
しかし両親はそんなマチルダに関心を全く示さず、家庭は辛い場所だった。
図書館に居場所を求めたマチルダは、そこで教師のハニー先生に出会う。
翌日、マチルダとハニー先生は学校で再会する。
ハニー先生はすぐにマチルダが「天才」である事に気づき、その才能を伸ばしたいと願う。
しかし学校は、校長であるミス・トランチブルが恐怖で子どもたちを支配する『監獄』のような場所だった。マチルダは自らが持つ不思議な力を駆使して、子どもたちを苦しめる大人たちに仕返しを試みる。自身も苦しい子ども時代を過ごしたハニー先生は、マチルダの良き理解者となり、いつしか二人の絆は固いものになっていく―。

公演HPより<https://matilda2023.jp/about/>

ウエストエンドで観れなかったリベンジ達成!!

イギリス現地の劇場チケットBOXでチケボのお姉さまに「チケット?あるわけねーだろ」とケンモホロロに追い返されてから早8年(笑)。
やっと観たいみたいと思っていたRSC製作のミュージカル『マチルダ』を観ることが出来ました。
ありがとう。ホリプロさん。
今回実際作品を観てみて、あの頃イギリスで観れていても、娘っこもまだ小さすぎて楽しめなかったかもな。と感じたので、結果オーライかなと思いました。
何より、今回の公演を娘が楽しんでくれたので!
ファミリーミュージカルではあれど、そこはロアルド・ダール原作作品のシニカルさをきっちりと表現、かつRSCがしっかりと作りこんだ、テーマ(ストーリー)・音楽、振付、演出、美術、すべてが大人も見ごたえ十分。
というか、私がいつも「大人向け」であることがすなわち優れた作品であるというわけではないと思っているので。

映画版との比較

ミュージカル『マチルダ』はすでにネットフリックスで映画版が配信されているので、今回ホリプロ版を観る前に映画版を観るか、後に観るか迷いましたが、舞台版を新鮮に観たかったので映画版は後に回しました。
正解だったと思います。
舞台版を観た大興奮の娘っこが「映画版も観る!」と、その日のうちに映画版を観て「あーでもねー、こーでもねー」と話したことを以下に書きます。

わかりやすさ(それは改良とな言えないかも)
舞台版と映画版を比べると、はっきり言ってしまうと映画版は舞台版の「廉価版」「コンパクト版」と言っていいかと思いました。
確かにストーリーや設定は「わかりやすく」はなってますが、それにより、マチルダが持つ超能力に焦点が当たりすぎてしまっていたり、
最大の盛り上がりともいえる"Revolting Children"シーンで、本来マチルダの力というより、クラスメイトや学校生徒一人一人が立ち上がっていき、最終的にミス・トランチプルをとっちめるべき件が薄くなってるなぁと感じました。"School Song"などの「わぁ」と声が出そうなになる演出もないしね。

最大なのは登場人物ひとりひとり(クラスメイトもふくめたどんな小さな役)をつなげる関係性が希薄になってしまって、マチルダと両親(特に父)との関係性の描き方がありがちになってしまっている点は映画版のがっかりポイントですね。
とはいえ、映画版の"Revolting Children"の振り付けはかっこいいですね(笑)。舞台版もブルースはマイクじゃなくて拡声器にするとかっこいいかもと思いました。

子ども目線・大人目線で観た感想

こういったファミリーミュージカルは、やはり観る世代、立場によって各々持つ感想が違う。同じ作品でもその人が見た時のその人のステージによって違うことだと思います。
娘っこに聴くと、彼女が一番共感した部分はやはりクラスメイトと共に最終的にトランチプルをやっつけるまでの、学校で出来事、団結、革命にかかわるところでした。同世代の生徒たちに起こる出来事に「むかつくーーー!」「がんばれーーー!」「かっこいいーーー!」という共感を覚えるのは必然だと思います。
最終的にこの作品を観ていて元気でる!スッキリする!というのはこの部分ですしね。

一方私が一番気になったり気に入ったりしたのは、親にとっての子ども、子どもにとっての親ってなんだろうね。というところでしたね。
ロアルド・ダールの作品って『チャーリーとチョコレート工場』もそうですけど、親と子の関係性が極めて毒々しく描かれているんですよね。
子どもが親や大人の所有物のように扱われていることが多いですよね
(ダール本人の幼少自体にヒントがあるじゃないかなとも思うので、今度機会があったら自叙伝『Boy - Tales of Childhood』でも読んでみよう)。
特に『マチルダ』だと、父であるミスター・ワームウッドとマチルダの関係の描き方が、兄マイケルの存在の描き方も含めて好き(興味深いという意味で)でした。
映画版でマイケルをけずちゃったのホントもったいない。

ホリプロ版「もう少し再演までに何とかならないかな」と思ったこと

今回の公演、ホリプロさんとしては本当に上演に向けて長い時間をかけた交渉、準備をされてきたことひしひしと感じましたし、結果「ありがとうございます!」という公演になっていると思います。
願わくば、『ビリー・エリオット』のような重ねて再演される作品になってほしいなあと思いつつ、次回再演には「もう少し何とかならないなか」という点もあったので、書いておきます。
・クラスメイト全員子役にしてーー!
いろいろな方の感想も多くはこの点については不満でしたね。
確かにマチルダもふくめて9人の子役を舞台に上げる作業は、子役の子たち本人も周りも大人も本当にタフな仕事だとは理解していますが、やはり"Revolting Children"はリアルな子どもたちの叫びであってほしいです。
日本の子どもたちの技術レベルは本当に上がっていると感じるので、
ウェストエンドやBroadwayの高いレベルに持っていけないとは思えません。
↓もちろん他国版もクラスメイト以外は大人キャスト混ざっているけどね(おっさん?ってなるけどね)
やっぱり、クラスメイトは子どもが演じる肌感を残してほしいです

・劇場、なんとかならないのかなぁ
毎度他の作品においてもオーブは広すぎる、特に音響がきつすぎるとは思っているのですが、今回は如実に出ちゃったなぁと思います。
舞台装置をあえて枠を作る形にしているけど、もう少し間口が狭い劇業でやってほしい(多分劇場キャパは同じぐらいなんだろうけど)し、どうしても子役の子らの声が届きにくい、何言っているかわかない状況になるのはきつい。
オーブは確かにいい劇場だし、あそこがなくなったらそれはそれでミュージカルオタクとしては凄い困るんだけどね(笑)。


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