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『メグとばけもの』レビュー「打席に立ったら全球ど真ん中ストレートだった気分を味わえる超王道泣きゲー」

結論

 以下の要素が当てはまる人におすすめです。
 (1)王道で泣けるストーリーを楽しみたい人
 (2)サクッとプレイできるボリュームのゲームを探している人

長所

(1)ベタにも程があるが、胸に響く切ないストーリー

 本作のストーリーは魔界に迷い込んだ人間の少女メグと一匹の魔物ロイの心温まる交流がテーマになっています。はっきり言って、題材や展開は他の創作物で腐るほど見たので新鮮味自体はまったくありません。

 それでも、ベタだからこそストレートにプレイヤーの心に響くものがあり、純粋に泣けます。

 例えばドラクエシリーズなどもそうですが、ど真ん中の王道でも極めれば人の心を動かすことができるということを本作はその身をもって証明しています。

(2)魅力的なキャラクターと光るユーモアのセンス

 本作はシリアスとギャグを上手く使い分けて、緩急をしっかり意識した作りなのは好印象。

 ほのぼのしたパートがあるからこそシリアスなパートが生かされており、思わずクスっとするような笑えるセンスも存分に堪能できました。ロイももちろん魅力的ですが、個人的にはゴランの心境の変化には心を動かされました。

(3)切なく心を震わせる音楽

 BGMはあまりキャッチーな部類ではありませんが、切ない旋律がゲームの雰囲気に良く合っているのが好印象でした。

(4)ギミックの効いたマップ進行や戦闘

 本作は基本的にマップ間を移動してストーリーを楽しむテキストアドベンチャー的な要素が強いですが、メグを守りながらの戦闘やギミックを乗り越えていくシチュエーションが用意されています。

 戦闘自体は状況に合わせて最適な選択肢を選んだり、突然目押しやカードシャッフルなどのミニゲームをクリアしていくというギミック志向の強いもので、遊び心が感じられて結構楽しめました。

 マップ進行時にも操作キャラ三人を上手く切り替えて進むというFF6辺りを彷彿させるようなギミックが用意されており、昔ながらのゲーマーならば思わず口元が緩んでしまうのは間違いないでしょう。

(5)シンプルな実績設定

 実績はサブストーリーのクリアだけに注意すればいいので、余計な収集物実績などはなく、純粋にストーリーを楽しむだけで実績コンプできるのは好印象でした。

 ちなみに本作はゲームクリア後にチャプターセレクト機能が解放されますので、サブストーリーを見逃した場合はこちらを使用して回収することが可能です。

短所

(1)ボリュームは少ない

 本作は定価1,650円という価格設定からわかる通り、かなり小規模な作品です。前述しましたが、サブストーリーがいくつか用意されている程度で、やり込み要素は皆無です。

 本作にやり応えを期待するのは間違いなので、その辺りを気にする方は要注意です。セール時に買えば損をしたと感じる人はまずいないでしょうが、定価だともう少しボリュームが欲しかったと不満を感じる人も多そうな印象でした。

(2)RPG要素を求めすぎると落胆する

 一応、本作はRPGを自称してはいますが、プレイ感覚はミニゲームを寄せ集めたほぼ一本道の探索型アドベンチャーだと認識した方が良いでしょう。

 RPG特有の収集&育成要素、スキルの組み合わせによるビルド、ボスに合わせた事前の対策などは一切ありませんので、その辺りの要素を求めて本作に手を出すのはおすすめできません。

(3)戦闘のリトライが少し面倒

 戦闘は中盤以降は難易度がかなり高いものがあったりして、メグが泣かされる事故死が頻発します。戦闘にある程度のリトライが要求される作り自体は良いのですが、戦闘中の台詞などは一切スキップできないので、多少テンポが悪く感じました。そもそも一発ネタであるギミック前提の戦闘を何度もやるのは純粋に面倒というのは否定できません。

(4)ストーリーや設定に説明不足も感じる

 人間達は何故あのような研究をしていたのか?魔物とは何なのか?花畑はどういう場所なのか?など、謎を多く残してゲームはエンディングを迎えます。

 エンディングを迎えて、世界に変化があったような描写はありませんし、メグとロイ(とゴラン)の関係性だけ描ければ良かったのかもしれませんが、SFやファンタジーものとして見ればあまりにあっさりしすぎて物足りなく感じる部分もありました。なんだか続編もありそうな終わり方なので、もしかしたら同一の世界観で続編が出るかしれませんね。

★まとめ

 設定や世界観に浅いものがありますし、ストーリーは超王道でまったくひねりがなく、ボリュームも少ない作品です。それでもプレイ後に純粋に良いゲームだったとしみじみできました。

  本作もそうですが、インディーズゲームは本当に作り手の心意気を直に感じられるのがすごく良いですね。開発のOdencatさんは今後も応援させていただきます。

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