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『Chorus』レビュー「こだわりこそリスペクトに値するが、宇宙STGとしては地味過ぎるのは否定できない」

結論

 宇宙空間でドッグファイトがしたいという方にはおすすめします。ただ、3Dフライトシューティングゆえ、難易度は高く、爽快感に重きは置いていないことに注意してください。本作をプレイするにあたって、銃を撃ちまくるトリガーハッピー気分や絶大な火力で敵を薙ぎ払う快感を求めない方が望ましいでしょう。

長所

(1)珍しいコンセプトには惹かれる

 SFを題材にしたゲームはそれほど多くないですし、スターウォーズのような世界観を戦闘機で飛び回れるだけでも貴重と言えます(敵の大型宇宙船を内部から破壊するといった、スターウォーズファンが大喜びしそうなギミックもあり)。

 ゲーム性や操作性は任天堂が生み出した伝説的シューティング『スターフォックス』に似ていますが、スターフォックスフォロワーゲーム自体がそもそも少ないので、希少価値は高いです。宇宙を舞台にした3Dシューティングと聞けば、涎を垂らして飛びつく好事家もそれなりにいるのではないでしょうか。

(2)グラフィックには見ごたえあり

 宇宙空間を上手く表現したグラフィックは確かなセンスとこだわりは感じられます。ただ、背景の変化やバリエーションには欠けるのは難点でした。

(3)スピリチュアルなファンタジー要素を落とし込んだシューティング部分

 主人公のナラはカルト教団のエース的存在だったのですが、カルトの名に相応しいスピリチュアルでファンタジックな「ライト」と呼ばれるスキルを扱うことができます。空間をスキャンしてアイテムを見つける、一瞬で相手の背後にワープする、相手のバリアを破るなどの魔法のようなアクションを楽しむことができます。

 ちなみに本作の難易度はイージーでもかなり高めで、「ライト」を全部使いこなせることが前提のゲームバランスになっています。「ライト」の使い方が頭で理解できるようになると、かなり楽しさが増すゲームと言えるでしょう。

(4)難易度調整は辛めだが、丁寧ではある

 難易度はイージーでも高めで、シューティングが苦手な人は何回もゲームオーバーになるバランスです。ミッションの内容も、特性を持った敵集団との戦闘、戦艦を内部から破壊、対象の護衛、対象物の破壊、追いかけっこ、ステルス、「ライト」を駆使したギミックなど、バリエーションには富んでいて、ゲーム内容に変化と緩急をつけようという開発側の創意工夫には好感がもてました。

 また、戦闘自体も無策の力押しでクリアするのは不可能。敵と真正面から戦えばボコボコにされますが、コツを理解すればスムーズにクリアできるようになっている調整もセンスが光る部分と言えます。

短所

(1)爽快感が薄い

 本作のシューティング要素はそれほど爽快感に重きは置いていません。「ライト」を使用した立ち回りに魅力を感じることができれば、本作とはかなり相性が良いと思いますが、相手を気持ちよく虐殺するようなトリガーハッピー気分は味わえるようなゲームデザインにはなっていません。

 もちろん、「ライト」の連発はできませんので、基本的には小さい敵をグルグルと追いかけまわしながら回避に気を遣うといった感じのプレイ感覚。おまけに常に障害物にガンガン当たる恐怖&ストレスと戦わなければいけません(加速して移動中、誤って基地に突っ込んでしまい、体力マックスの状態から派手に即死したのは笑うしかありませんでした)。つまり、自由自在に飛び回ってきもちいいー!というゲームではなく、わりとチマチマした感触なのが残念ではあります。

 グラフィックを筆頭にパッと見た感じは派手なシューティングゲームに見えますが、どちらかというゲーム性はフライトシミュレータのような操作が上手くなってきてようやく良さがわかってくるスルメ型(実際に操作体系もややフライトシミュレータ寄りです)。つまり、シンプルに重火器を撃ちまくって気持ちよくなりたいだけのプレーヤーには地味かつ渋くて、物足りなく感じる可能性は高いです。

 また、メインストーリー進行によって「ライト」を増やして、戦略の幅が出るタイプのゲームですが、その「ライト」が全部揃うまでがとにかく遅い。なにせ最後の「ライト」を入手するタイミングはラスボスとの最終決戦の一歩手前。つまり、尻上がりに調子を上げるスロースターターなゲーム。その為、序盤で面白さが理解できずにゲームを投げるプレイヤーも少なからずいそうな印象を受けました。

(2)面倒過ぎるサブミッション

 本作はメインのミッション以外に、サブミッションが用意されています。内容は単純なおつかい、アイテムを集める、戦闘、レース、ギミックをこなすなど。

 時間制限付きのサブミッションはかなりストレスが溜まりますし、収集系もかなりだるく、サブミッションのストーリーの結末は後味が悪いものが多いのも気分を盛り下げる要因にはなってます。

 サブミッション報酬は、中盤以降に関しては武器や改造パーツは良質なものがもらえたりしますが、クレジットは終盤は余るだけで全く使い道がないのも調整としては失敗しています。

(3)ストーリーは悪くはないが、特別面白くもない

 ストーリーは海外勢が好きそうな「過去に犯した罪を償う話」です。主人公の相棒かつ友人である喋る戦闘機とのやり取りはそこそこ楽しめますが、全編シリアスな重いストーリーでウェットに富んだような台詞もほとんどなく、唐突に出てくる固有名詞も多め。正直、テキストを読んで楽しいという感じのゲームではありません。おまけにスピリチュアル成分も盛り込まれているため、どうも抽象的でふわふわしていてわかりづらい。

 さらにメインストーリーの展開に新鮮味や意外性もあまりなく、淡々とした感じで進行するため、とにかく地味。グラフィック自体はリッチなのに、描写や表現、演出はかなりあっさりしているのが物足りない。宇宙を舞台にしているわりには壮大さに欠けているとは感じました(SFものにありがちな味方の戦死シーンを見てもなんだかピンとこず、あっさりとした気分)。

(4)ナビが不親切でわかりづらい

 本作には一応ナビ自体はあるのですが、とにかくわかりづらいです。ミッション進行時にどこへ行ったらいいかわからなくなるのは日常茶飯事。時間制限付きのミッションも頻発しますが、破壊すべき対象がよくわからずにゲームオーバーになってしまうことが多かったです。マーカー自体の視認性が悪い上に、白マーカーは岩などの障害物に重なると同化してしまい、判別不能になるのが痛い。

 シンプルに敵が強い、ギミックが難しいなどの条件ならやりがいはあるのですが、どこへ行ったらいいかわからない、何をしたらいいかわからない、そのうえでタイムアップでゲームオーバーというケースが多すぎて結構萎えました。

(5)細かいファストトラベルがない

 本作はマップ間移動は用意されていますが、マップ内の拠点に移動するファストトラベル機能はなく、目的地には必ず戦闘機で飛んで移動する必要があります。マップはそこそこ広い上に、自機の移動スピードはそれほど速くはないので、とにかく移動が面倒に感じました。

(6)チェックポイントが細かくない

 ミッション中はセーブが出来ないですし、チェックポイントはミッションクリア時になっていることが結構多いので、間違えてメインメニューに戻ってしまうとかなり前のデータまで戻されることが多いです。本作は難易度は高めかつ、敵もシールド持ちの硬いやつが多いので、一戦一戦がわりと大変なゲーム。もっとチェックポイントを細かく入れた方が遊びやすかったと思います。

 ちなみに定期的に神殿内の狭い通路で、後ろから「罪悪感」と呼ばれる捕まったら終わりの敵に追い掛け回されますが、壁に引っかかって死にまくるのは非常にストレスが溜まりました。この時のチェックポイントも直前からではなく、それよりもちょっと前に戻るので、リトライは苦痛でした。

(7)字幕が読みづらい

 本作は発売からしばらく経ってローカライズされ、翻訳のクオリティ自体は結構高いです。ただ、あまり見やすいフォントではないので、テキストを読むのにストレスがかかります。字幕自体は設定で大きくできますが、UIのテキストのサイズは変更できないのは残念。

 ちなみに、Xbox版では実績解除のポコン表示で字幕が完璧に読めなくなるケースが多発し、肝心の台詞が「ちょっと何言ってるかわからない」という洋ゲーのお約束もきっちり味わえます。

(8)RPG部分は中途半端

 RPG要素として、シールドや装甲のアップグレード、武器、改造パーツ、マスタリーがありますが、どうも中途半端に仕上がっているのが残念。武器や改造パーツにはレアリティが設定されていますが、普段の戦闘の報酬でそういったアイテムがドロップすることがなく、性能が高いだけを示しているだけの記号になってしまっています。そういえば、武器や改造パーツの買い替えはできるのに、それらのアップグレードがないのは何故なんでしょうか?こちらが強くなりすぎるから?

 そんなわけで武器にレアリティが設定されているから、ハクスラ的な要素があるんだなと思って、プレイし始めると失望することになります(ショップの品ぞろえはだんだんと増えていきますが、ランダムに品ぞろえが変わったりしません)。

 さらにまめに探索をするプレイヤーであれば、シールドや装甲もあっというまに強化上限に到達してしまいますし、そもそも武器や改造パーツ自体の種類が少ないので、ビルドに自由度なんてものは一切ありません。

(9)引継ぎプレイができない

 引継ぎプレイ不可なので、マスタリー関連の実績解除がかなり大変です。

★初心者向け攻略

(1)クレジットの使い道


 優先順位は 武器 > シールド or 装甲 >>> 改造

 改造パーツはサブミッションや探索で良質なものが入手できますので、後回し。ただ、終盤はクレジットが大量に余りますので、火力を上げる系の改造パーツは購入しておくのが良いでしょう。汎用性の高い、「全武器の攻撃力アップ」あたりは腐らないのでおすすめです。

 優先順位自体は上記のような感じですが、クレジットは常に使い切る感じでかまいません。

(2)ビルドの考え方

 改造パーツの組み合わせによるビルドの考え方は、以下のような感じになります。

 (1)雑魚敵用
  パッシブスキルの「不意打ち」+「反射リープ」+各種火力アップ系(ダブルダメージも強い)。大体のシチュエーションはこのビルドになり、ひたすらライト・オブ・ハントで敵の背後を取り、火力を上げて瞬殺というのが理想です。

 (2)ギミック用
 戦闘ではなく、「ライト」を駆使したギミックに挑戦する場合、ライトエネルギーアップ系をありったけ積むのがベストです。例えば、終盤はライト・オブ・コントロールでしか倒せない敵も登場しますが、その際はライト エネルギーアップ系のビルドで挑むのがおすすめです。

 (3)ボス戦用
 火力アップ系かシールドや装甲アップ系に固める。やられる前にやることが重要なゲームなので、どちらかというと火力優先です。ラスボス戦は背後から追いかけるギミックがあるので、そのタイミングでの「不意打ち」はありだと思います。

(3)戦闘の基本


 間違っても通常移動だけで戦うのはやめてください。前述しましたが、ライト・オブ・ハントで敵の背後をひたすら取るのが基本的な立ち回りです。「不意撃ち」ビルドなら背後にリープ後のレーザー一発で雑魚なら撃墜できたりもします。

 ただ、これをやりすぎるとレーザー以外のマスタリーが上がりませんので、ライト・オブ・ハント ⇒ ライト・オブ・ストームによるシールド剥がし ⇒ ガトリング or ミサイルで撃墜というコンボも適度にやることをおすすめします。

 もし、実績コンプを目指す場合は、「完全回避」などのマスタリーは序盤から意識していないと達成不可能ですので、常にメニュー画面でマスタリーの進捗を確認するのを推奨。

 ちなみによほど腕前に自信がなければ難易度イージー推奨です。

(5)探索の基本


 常にAボタンを長押しして「ライト・オブ・センス」を発動させる癖をつける。こうしないと落ちている改造パーツやクレジットを見つけるのはほぼ不可能です。

 また、各所の救難信号を受けてのサブミッションや、野良カルトとの戦闘は、報酬がほぼクレジットなので、クレジットが余っている場合はスルーしても問題ないと思います。

★まとめ

 一応、良作の部類には入りますが、スロースターターで地味かつ渋めのゲーム性と、定価が4000円超えなので、万人にはおすすめしづらい作品。

 ただ、例えばSteamのセールだと2000円を切っていますので、これくらいの価格であればSFモノや、3Dシューティング好きにはプッシュできます。

 とりあえず欠点や粗が多いので、本作は人を選ぶことは間違いありません。そして、こういうゲームが自分に合っているか判断するにあたって、Xbox Game Passというサービスが本当に最高。ゲームパスに加入している方は是非プレイしてみてください。いきなり口が悪くなりますが、「四の五の言わずにとりあえずやってみろ」。ゲームパスであれば、こんなことが簡単に言えちゃうんですよね(笑)。

 前述しましたが、欠点自体はかなり多く、プレイしていて物足りない部分やイライラした部分もありましたが、個人的にはわりと楽しめました。「Chorus」は一回は体験する価値はあるゲームでしょう。

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