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「性別記載変更法(仮称)」の提言公表と新たなフェミニズムサイト立ち上げの動き

 お久しぶりです。個人的なことで恐縮ですが、9月下旬より仕事の繁忙期を迎えまして、これから3ヵ月間は基本的には週末1回のみの投稿となりそうです。時には、今回のように「近況まとめ」的な内容になることもあると思いますが、トランスジェンダリズムの動向の記録と自分自身の感情・思考の整理のため、細々とnoteを継続していきたいと思います。

「性別記載変更法(仮称)」の提言公表

 さて、9月7日配信の以下の投稿で「日本学術会議 法学委員会 社会と教育におけるLGBTIの権利保障分科会がトランスジェンダーの法的性別変更のための新法案を提言予定である」とお伝えしましたが、その提言が早くも9月23日に公表されました。

 以下がその提言のポイントです(リンク先の末尾に提言全文のPDFファイル全73ページが添付されています)。

 提言内容は大きく分けて以下の3点で、女性専用スペースの問題に影響がありそうなのは①「性別記載変更法(仮称)」の部分になります。

提言内容
①「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の廃止とそれに代わる新法(「性別記載変更法(仮称)」)の制定

②多様な分野で生じている人権侵害を防止するための性的マイノリティに特化した人権保障法の制定と実効性の高い政策の実施
③あらゆる差別の解消を目指す包括的な差別解消法の成立

 提言のポイントおよび本文から、重要な箇所を以下に抜粋します。

●提言のポイント「1 本提言の背景」より
 とくにトランスジェンダーの権利保障については、環境は改善が進められている国・地域(EU諸国など)と停滞・後退している国・地域の差が広がっている。一部のフェミニストのあいだには、「女性」をシスジェンダー(身体と性自認が一致)の女性に限定し、トランス女性を排除する動きがある。トランスジェンダーに対する理解を深めるための法整備は、トランスジェンダーの人びとの生命と尊厳を確保するための喫緊の課題なのである。
●提言のポイント「3 提言」より
提言1  トランスジェンダーの権利保障のために、国際人権基準に照らして、性同一性障害者特例法に代わる性別記載の変更手続に係る新法の成立が必須である。国会議員あるいは内閣府による速やかな発議を経て、立法府での迅速な法律制定を求めたい。
 トランスジェンダーの人権保障のためには、本人の性自認のあり方に焦点をあてる「人権モデル」に則った性別変更手続の保障が必須である。現行特例法は、「性同一性障害」(2019年WHO総会で「国際疾病分類」からの削除を決定)という「精神疾患」の診断・治療に主眼を置く「医学モデル」に立脚しており、速やかに廃止されるべきである。特例法に代わる新法は「性別記載の変更手続に関する法律(仮称)」とし、国際人権基準に則した形での性別変更手続の簡素化が求められる。以上の見地から、国会議員あるいは内閣府(法務省による法案作成)による速やかな発議と立法府での迅速な法律制定を求めたい。
●提言本文 pp.11-12より
(5) 新法制定の必要性――性別記載変更の手続に特化した法
 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」を廃止して新法を制定すべき理由は、以下の三つ
である。1)「性同一性障害」という語を削除すべきであること、2)法的性別変更の手続に特化した法であることを明示したほうがわかりやすいこと、3)特例法の根幹をなす5要件を削除するため改正の範囲を超えていること、である。

1)DSM、ICD ともトランスジェンダーを精神疾患から除外し、「性同一性障害」概念を削除している現在、性別取扱いの変更に関する法律において、国際的な医療水準において使用されていない概念を用いるべきではない 。新法においては、トランスジェンダーを「出生時に割り当てられた性別と異なる性自認をもち、他性で生きている者」と定義すべきである。

2)法的性別の変更を諸外国では「法律上の性別の変更・変換・転換」などとする。法的性別変更の記載が戸籍あるいは出生証明書になされることから、法律の名称は「性別記載の変更手続に関する法律(仮称)」(略称「性別記載変更法」)とするほうがわかりやすい。また、法の趣旨を「本法は、出生時に割り当てられた性別と異なる性自認をもち、他性で生活する者の性別記載を変更する手続を定めるものとする」ことを提案する。

3)5要件については上記(3)で述べた通りである。以下でさらに2点を補足しておきたい。第一に、戸籍事務管掌者への届出制(自己申告)とすることを提案する。性自認はその人のアイデンティティであり、自己の意思によって左右されない。これゆえ、本人が医師の診断を受け、トランスジェンダーであることを認識すれば、その者の希望=自己決定によって変更を申告すればよく、現行法のように家裁の審判による必要はない。トランスジェンダーの人びとは、出生時に割り当てられた性別と異なる性自認を自覚した後、相当の時間と負担を引き受けて他性を生きているのであるから、そのプロセスと本人の意思を尊重する手続が望ましい。配偶者や子が、相手方や親がトランスジェンダーであることを受け入れ難い場合もありうるが、性別が人権に属する以上、配偶者や子の同意よりも、本人の意思を尊重すべきであろう。
(中略)
第二に、性別の再変更は、ドイツ法に倣って、認められるべきである。
(以下略)

 提言内容に対する疑問点等は後日改めて投稿しますが、トランスジェンダリズム(性別の自己決定権とその尊重)という思想、性自認に基づく法的性別変更の新法、新法により生じる女性専用スペースの影響などの問題に関心のある皆さんには、ぜひ提言の本文だけでもお読みいただきたいと思います(提言全文73ページのうち20ページ分)。

 提言には「国会議員あるいは内閣府による速やかな発議を経て、立法府での迅速な法律制定を求めたい」と書いてありますが、日本学術会議の提言がどこまで影響力があるのか、私には分かりません。

 ただ、TRA(Trans Rights Actvist:トランスジェンダーの権利のために活動する人)がLGBT議員連盟や各政党へのロビー活動を熱心に行っていること、LGBT法連合会が2019年7月に公表したアンケート結果によると公明党・立憲民主党・日本共産党・社会民主党が法的性別変更の手術要件の削除について「積極的に見直して改正すべき」と回答していることは、以下の通り事実です。

 その一方で、女性専用スペースの運用に懸念・不安を抱く一般女性の声を積極的に拾い上げてくれる政党やフェミニスト学者、女性団体は日本国内には「ポルノ・買春問題研究会(APP研)」以外に見当らず、女性にとっては非常に心細い状況です。

 女性側に何の説明もせず意見も聞かないまま勝手に女性専用スペースの運用を変更されないよう、女性達の懸念・不安を「無かったこと」にされないよう、私たち女性も、声を上げ、働きかけを行い、政治に参加していく必要性を感じます。

 個人的にも各政党の本部や地元の議員などに上記の新法に対する見解を問い合わせたり、陳状として疑問点や意見を伝えたりするなどのアクションを起こしていきたいと思いますし、そのような取り組みが日本全国の女性の間に広まっていってほしいと願っています。

新たなフェミニズムサイト立ち上げの動き

 上記の通りトランスジェンダリズムの思想が徐々に学術界や法律に影響を広げつつあるなか、先週、2つのフェミニズムサイトが新たにオープンしました。

①2020年9月20日開設
The Experienced Rock'n roll Feminism

 これは、さまざまなフェミニズムの課題について、率直に議論をするためのサイトです。
 とくに日本では、性別変更をどのように認めるかについての議論をめぐって、危機的な状況にあると認識しています。そこにフェミニズムがどのような役割を果たすのかについて、さまざまな議論すらなされていない状況です。
 私たちはこのような状況に風穴を開け、トランス問題やフェミニズムの進展に貢献し、多くの議論や情報を蓄積する場にもなりたいと思います。

②2020年9月26日開設
Female Liberation Japan

このサイトの目的
・世間に「私たちの声」を広めて、私たちおよび私たちの考えについての誤解を解くこと
トランスジェンダリズムとそれが引き起こしている諸問題について、女性(female)の権利と安全を守る立場から考え、世間に広く情報伝達をしていくこと

 上記の目的のために、具体的には以下のことを行っていきます
①トランスジェンダリズムへの批判を行うことができる言論空間(=私たちの声)を運営し、広めていく
②国内でのトランスジェンダー関連の法改正や政治の動きに注視して、その意味や問題点を伝えていく
③国内での反トランスジェンダリズムの動きに連帯する

 私のこのnoteも「『トランスジェンダリズム』(「性別の自己決定権とその尊重」という思想)に対する疑問や感想を少しずつ言語化していきたい」という主旨で2020年9月3日にスタートしました。私自身はフェミニストを自認していませんが、理念としては上記2サイトに近いと思っています。

 トランスジェンダリズムに疑問を持つ女性、女性の権利や安全を守りたいと願う女性の皆さんが、これらのサイトを閲覧して各投稿についてTwitter上で意見交換したり、ご自身でも寄稿したりして、この問題に関心を持つ女性の輪がどんどん広がってほしいです。

英国のような社会的混乱を日本で起こさないために

 日本に先行して法的性別変更における性別適合手術の要件を撤廃した英国では、女性専用スペースの運用に関する混乱・トラブルが生じているにもかかわらず、更に「セルフID」(性別適合手術も医師の診断も必要とせず自己申告のみで法的性別を変更できる制度)の導入を検討していましたが、つい先日、導入の撤回が発表されました。

 英国のような女性専用スペースの運用上の混乱・トラブルを日本で生じさせないためには、「性別記載変更法(仮称)」の拙速な立法に歯止めをかけ、利用当事者である女性に対する丁寧な説明と意見聴取が行われるべきであると考えます。

 トランス女性以外の女性達を一方的に「差別主義者のTERF(トランス排除的ラディカル・フェミニスト)」として悪魔化して法案を通しても、無用な対立を煽るだけで双方にとって良い結果は生まれません。政治家や学者の方々には慎重な判断を求めるとともに、適切な判断がなされるためには女性達が団結して働きかける必要があると感じています

 英国の先行事例を教訓とし今後の社会的混乱を回避するには、今が正念場だと思います。より多くの女性にこの問題を知っていただき、女性の権利と安全を守るアクションが少しずつ日本全国に広がることを期待しています。


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