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ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN) 石上卯乃氏の投稿掲載後の流れ

 ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)に石上卯乃氏の投稿が掲載された8月12日(水)以降の動きについて、このnoteの後半に時系列でまとめてみました。

 個々の投稿については後日、改めて触れますが、「石上卯乃氏の投稿はトランスジェンダー排除・差別である」と主張する人々は、石上氏の投稿のどの部分が「排除・差別」にあたるかを具体的に示し、それを裏付ける根拠を示す必要があるのではないでしょうか。

 ちなみに、「ふぇみ・ゼミ×トランスライツ勉強会」(以下、勉強会)が8月17日(月)付でWAN宛に提出した「公開質問状」には以下の通り記載されています。

 石上氏による当該エッセイは、トランスジェンダーへの差別をフェミニズムの語彙を用いて正当化し、誤った印象操作をするものです。生理などの身体的特徴によって性別が決まるのだと主張して、ミスジェンダリング(誤った性別割り当て)を煽動するとともに、トランスジェンダー排除言説への批判を攻撃と読み替えたり、トランスジェンダー排除派フェミニストを被害者として逆転させたりなどのイメージ操作を行っています

 まず、「身体的特徴によって性別が決まるのだと主張して、ミスジェンダリング(誤った性別割り当て)を煽動するとともに…」の部分ですが、仲岡しゅん弁護士の8月27日(木)の投稿で述べられている通り、現行の公衆浴場が身体的特徴(具体的には「男性器」とされるペニス)によって性別を分けられていることは事実であるため、上記太線部分を根拠に「石上投稿はトランス排除・差別である」と主張することはできないのではないかと考えます。

 また、「トランスジェンダーへの差別をフェミニズムの語彙を用いて正当化し、誤った印象操作をするものです。」および「トランスジェンダー排除言説への批判を攻撃と読み替えたり、トランスジェンダー排除派フェミニストを被害者として逆転させたりなどのイメージ操作を行っています。」という主張については、公開質問状の中で「石上氏の投稿のうちどの部分が『排除・差別』にあたるか」が具体的に示されておらず、当然それを裏付ける根拠もないため、この点でも「石上投稿はトランス排除・差別である」という主張が成立しないと考えます。

 勉強会の公開質問状は「『石上投稿はトランス排除・差別である』という前提」で書き進められていますが、まずは、前提を確認し、共有する必要があるのではないでしょうか。

 また、岡野八代さんの8月19日の投稿の中で「差別とは社会構造の問題であって、個人の悪意や意識、理解力は二次的な問題だと考えています」とある通り、この問題は社会構造(公共のトイレ・更衣室・浴場が身体的性別に基づく男女二元論で設計されていること)が問題なのであり、社会のルールや法律を遵守し他者にも遵守を望む女性達(男性身体者の女性専用スペース利用を懸念する人々)を「差別主義者」扱いする行為は、問題の本質を見誤っていると思います。

 LGBT運動では「性はグラデーション/性はスペクトラム」という言葉をよく見聞きしますが、身体の性別と性自認の不一致により現行の男女二元論的施設に馴染めない人々(トランスジェンダー等)が一定数いることが広く認知されたのであれば、男女二元論的な施設に加えて「性はグラデーション/スペクトラム」に対応した施設を増設するという選択肢も考えられるのではないでしょうか。

 施設はそのままで男女の区分基準だけ「身体/戸籍」から「性自認/性表現」に変更しても、男女二元論的な社会であることには変わりありません。全ての人に「あなたの性自認は男性か?女性か?」と選択を迫って無理やり男女いずれかに分けることは「男女どちらでもない」という性自認を持つノンバイナリの人々に馴染まないと思われます。どのような性自認・性表現・身体・戸籍の人でも使用可能な「誰でもトイレ」や個室タイプの更衣室・浴場を増設することが、最も包括的で、無用な対立を生じさせない解決策だと考えます。

 最後に、仲岡しゅん弁護士の投稿より重要な箇所を引用します。

 MTFが女性用公衆浴場を使えるかどうかは、私が把握している限り、公衆浴場組合では戸籍変更の有無にかかわらず、男性器の有無、すなわち性別適合手術をしているかどうかを基準としているようです。不特定多数が他人に裸体を晒す場の管理者としては、事の性質上やむを得ない判断であり、また合理的な見解と思われます。
 そして、そのことを前提とすると、冒頭のような、
 「男性器は付いてるけど、女性用浴場に入りたい、入らせろ」
 という主張を実践した場合、何らかの合意を得ているなど特別な事情のない限り、建造物侵入罪の被疑事実で逮捕されるか、少なくとも直ちに立ち入りを拒否される可能性が極めて高いといえます。もし私がそのような法律相談を受けたとしたら、「やめときなさい」と言わざるを得ません。

 この仲岡弁護士の「法律実務の現場から」出された助言と対立するのは、石上さんの投稿ではなく、勉強会側の公開質問状の方ではないでしょうか。

 個人的な感想ですが、勉強会は仲岡弁護士に対しても「『身体的特徴によって性別が決まるのだと主張して、ミスジェンダリング(誤った性別割り当て)を煽動する』ことは『トランス排除・差別である』」と言わないと筋が通らないと思いますし、仲岡弁護士が「落ち着いてください」と言うべき相手は石上さんや「TERF」のレッテル貼られた女性達ではなく勉強会の方ではないかと思うのです。

 女性専用スペースや法的性別のあり方については、言いたいことが多すぎて言語化するのが難しいのですが、少しずつトランスジェンダリズムに対する疑問点などを記録していきたいと思います。ブログに慣れておらず恐縮ですが、引き続きどうぞ宜しくお願いします。

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【時系列まとめ 8.12〜8.31】

●2020.8.12(水)WAN 石上卯乃氏の投稿を掲載

●2020.8.17(月)ふぇみ・ゼミ×トランスライツ勉強会 WANへの公開質問状を提出

●2020.8.18(火)WAN 伊田久美子氏(WAN副理事長)の投稿を掲載

●2020.8.19(水)WAN編集担当 石上投稿の掲載経緯を投稿

●2020.8.19(水)WAN 岡野八代氏(WAN理事)の投稿を掲載

●2020.8.19(水)〜8.20(木)ふぇみ・ゼミ×トランスライツ勉強会とWAN編集担当とのやり取り

●2020.8.20(木)WAN 遠藤まめた氏(LGBT活動家)の投稿を掲載

●2020.8.25(火)ふぇみ・ゼミ×トランスライツ勉強会 プレスリリース

●2020.8.27(木)WAN 仲岡しゅん氏の投稿(前編)を掲載

●2020.8.28(金)WAN 仲岡しゅん氏の投稿(後編)を掲載

●2020.8.31(月)WAN編集担当 公開質問状への回答

●2020.8.31(月)ふぇみ・ゼミ×トランスライツ勉強会 WAN編集担当 公開質問状への回答の報告


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