「小市民」シリーズを読んで。
オススメされた文庫本「小市民」シリーズ。
「春季限定いちごタルト事件」
「夏期限定トロピカルパフェ事件」
「秋期限定栗きんとん事件」
まだ発売されていないみたいだけど「冬期限定」もあるらしい。
ツイッターの方では、呟きました。
なぜ読むことになったのか。とか、読み終わった感想が、おいしかった。とかご馳走様でした。とか。
まあ、全部ではないので少し経過を書いてから、感想をだらだらと書いていこうかな。
なぜ読むに至ったか。
それは、僕個人が活字を欲していたから。想像の世界に逃げ込みたかった。
あと、文庫読んでるんだ。面白かったよー。の一言を、尊敬する方から聞いたから。
その方が読んだのは、辻堂ゆめさんの「いなくなった私へ」というミステリー。
僕は感化されやすい。
好きな人だったり、尊敬する人だったり、親しい人がおすすめするモノや表現に感化される。
感化され過ぎるので手に取らなかったり、そういうのを勧めるんだな。と理解をするだけが多かったけど、今回は自分の活字欲と気持ちが相まって、活字を読みたい。と行動に出た。
とはいえ、何から手を付けていいのかわからない。自分で発見したい欲がありつつ、わからないから動けない。そうやって、時間が経っているの間にか動くのもやめて、理解だけをして。といつものようになってしまいそうになったので、ツイッターで話してくださった方に無理強いをし、オススメを聞いた。
それが米澤穂信さんの「小市民」シリーズ。
「氷菓」を書いた方ということで、ちょっと興味をそそられたのも手に取るきっかけになったかもしれない。
「氷菓」はアニメで見た。面白かったです!
さて、話を戻します。
まずは「春期限定いちごタルト事件」
最初の印象は、ミステリーとは聞いていたものの甘い感じなのかな?
まさか恋愛が絡んで、いちゃいちゃしたカップル話じゃないよね?
とか思ってた。
何か物語を読むとき、僕はその世界に入り込む癖がある。
人物や建物、風景。頭の中で想像して入り込む癖。
その癖のせいで、いちゃいちゃしたカップルの話は何かいけないものを盗み見てんじゃないかと恥ずかしくなったり、僕の目の前でいちゃいちゃしているのに対し、嫌悪感を抱いてしまうの(電車の中や道端で、いちゃいちゃしているカップルを見た時のような気持ち)ので、苦手だったりもする。
主人公は高校生になったばかりの、小鳩常悟朗(こばとじょうごろう)。そして、小佐内ゆき(おさないゆき)。
表紙をめくると、こんな一文が書いてある。
「小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが、互恵関係にある高校一年生。」
なんだか安心した。
互恵関係。
いまいち意味が分からなかったので調べると、お互いに利益を得る。利益を与える関係。と書いてあった。
これもまた、どんな感じかわからなかったけど、読みすすめることによってわかってきた。
説明しないよ。読めばわかることだから。もしくは、どんな感じかわかる方もいるだろうし。
いちごタルト事件では、いくつかの事件が起きます。
でもそれが、巡り巡り「いちごタルト事件」の中に組み込まれている。
と、僕は思いました。
これが良い。
過去は今を作り、今は未来を作る。そんな大それたことじゃないけれど、過去、現在、未来。と繋がっていく様は、とても素敵に感じるのです。
それに、常悟朗の友達でもなく、クラスメイトでもないけれど、頻繁に出てくる堂島健吾。この子も良い。
男勝りというか、頼れる兄貴。な存在なんだけど、常悟朗と友達じゃない。ってところが良い。友達じゃないのに、なんだか頼るポジション。不思議だけど、そういう繋がりって、グッとくるのです。
赤の他人ってわけでもない。この感じ。
そうそう、常悟朗という名前は、とても言いにくそうだと思った。
悟朗じゃなく、常悟朗。
なぜこの名前になったのかはわからないのだけど、ツネゴロウって振り仮名じゃなくてよかったな。とも思った。
そして、なぜ「小市民」シリーズと呼ばれるのかも理解できた。
ついつい知恵を出してしまう性格で、そのせいで過去に叱咤や嫌悪を受けた小鳩くん。
やられたことに対して、完膚なきまでに相手を叩き潰す小佐内さん。
片や「狐」
片や「狼」
その2人が目指す「小市民」
とくに目立つこともなく、とくに騒動に巻き込まれず、もし騒動に巻き込まれそうなら黙ってその場から去る。
なんでもない、オンリーワンでもナンバーワンでもない、有象無象の一人。
それを目指している。
「夏期限定トロピカルパフェ事件」
小鳩くんと小佐内さんの関係性や癖を理解できた「いちごタルト事件」だったけど、この「トロピカルパフェ事件」では、小佐内さんのことを理解できていた気になっていた僕には、衝撃的だった。
やっぱり小佐内さんは「狼」だった。
全編通して「トロピカルパフェ事件」
最後はやっぱり震えた。
たぶん小鳩くんが気付かなければ、そのまま流れていただろう。
やっぱり小鳩くんも「狐」である。
たぶん読む人によって、小鳩くん側・小佐内さん側に分かれるんじゃないかなー。なんて感じてます。
2人の互恵関係が別れたように。
でね、このトロピカルパフェ事件には、数多くのスイーツの名前や食べる描写が出てくる。
どれもこれも、めちゃくちゃおいしそう。
読んでいるだけで、甘いもの食べたい。という欲求が出てくる。
たぶん、おなかいっぱいであったり、事前に自分の好きな甘いものを食べた後に読んだ方が良いと思います。
それでも、出てくる甘いものに興味をそそられるけど。
その中で、小鳩くんも大絶賛していた「シャルロット」というケーキは、あー食べてみたい。と思った。「夏期限定~」というタイトル通り、夏の話。
暑い中、シャルロット買いに行く小鳩くん。
冷房の効く中、汗を抑えつつ食べるシャルロットの描写。
甘いものがそこまで好きなじゃない小鳩くん。
でも、手が伸びてしまう。
絶対おいしい!って思ったね。
「秋期限定栗きんとん事件」
上下巻に分かれた事件。
互恵関係が解消された2人に、それぞれ彼氏・彼女ができます。
めでたい!とか、うわ、僕の苦手な奴だ!とかは全く思いませんでした。
だって、狐と狼だもの。
2人をここまで見てきたのなら、すぐわかる。
恋愛という形じゃない。
好意はあっただろうけど、恋はしてないって。
もしかすると、これが2人の恋愛の形の一つなのかもしれないけど、僕にはそう感じなかったんだよね。狐と狼を隠す隠れ蓑だと感じてた。
この上下巻では、2人の視点が交互に書かれます。
1人は、小鳩常悟朗くん視点。
1人は、小佐内ゆきさんの彼氏、瓜野高彦くん視点。
たまに、あれ?今どっち視点だっけ?って、脳が追い付かないときがあって、歳を感じましたね。
この事件で主人公のように書かれている瓜野くん。
瓜野くんは真っ直ぐなんだ。
いや、その真っ直ぐさは、半ば誘導されてるようにも感じる。
今後の学校生活、牙を抜かれたみたいに、有象無象の1人。小市民として、生きていくんだろうなぁ。と思います。
小佐内さんとの恋愛を根に、引きずるかもしれない。
小鳩くんの彼女、仲丸十希子さん。
たぶん、小鳩くんのこと一生忘れないと思う。
そこそこ恋愛をしてきているみたいだけど、きっと今後もしていくのだろうけど、小鳩くんのこと、ちらつくことがあるんじゃないかなぁ。なんて思います。
「わたしもそうだけど、きみも最低だった。」
この一言に、グッときた。
さて、やっぱりここでも甘いスイーツの名前が出てきます。
栗きんとん事件だから、栗きんとんはちゃんと出てくる。
あとね、マロングラッセ。
栗きんとんって聞くと、おせち料理の方を思い浮かべちゃったのだけど、違う方の栗きんとん。和菓子の栗きんとん。
栗を砂糖で煮るのが、おせちの栗きんとんに対し、
和菓子の栗きんとんは、煮た栗を裏ごしして、砂糖と一緒に火にかけて、栗から出る水分だけで煮る。そして、巾着の形に絞り出す。というモノ。
僕、食べたことない。
マロングラッセは、栗を煮て、シロップに漬け込む。シロップの薄い膜が栗を覆ったら、それ以上に濃いシロップに漬け込む。さらに膜で覆われたら、さらに濃いシロップに漬け込む。これは何回か繰り返して、できあがり。
僕、食べたことない。
この2つのスイーツ。
栗きんとん事件を読み終わった後、その意味に気付く。
のわー。ってなった。
総合的な感想を言えば「冬期限定」は一体どんなスイーツなのか。
クリスマスケーキとか、白い大福とか、チョコレートフォンデュかもしれない。
どうやら、この冬期限定が最終巻らしいので、とても楽しみにしています。
これが僕の「小市民シリーズ」を読んでの感想でした。