TRPG ダブルクロス The 3rd Edition「陰日向」その13

この小説は、掲載不許可が発行した「初海乃書」に掲載されている「TRPG ダブルクロス The 3rd Edeition 陰日向」を、以前プレイさせていただいた経験を元に製作されています。

「陰日向」というシナリオ作者のきなり様には許可をいただいきました。

また、掲載不許可所属、サリ様にも協力していただきました。

とても感謝しております。

つたない文章力ではありますが、お楽しみいただきましたら、とても嬉しいです。

尚、ダブルクロスというTRPGを知っているという上で書かせていただきますので、わからない用語などあるかもしれません。少しは説明を入れる予定ですが、進行上省かせていただくこともございますので、ご了承くださいませ。

それでは、前回の続きから。




待ち合わせ場所に着いた。

結衣ちゃんがちょこんと座り、空を見上げている。

「大丈夫、結衣ちゃん!」私は結衣ちゃんを見つけると、すぐに駆け寄った。

「なにかあったの?」結衣ちゃんは、不思議そうな顔をして答えた。

「田辺がいなくなったって!」私はもう一人の友達のことを、結衣ちゃんに話す。結衣ちゃんまでいなくならなくて、良かった。と少しだけ安堵した。

それでも。

「え!?そんな。で、でも。ど、どういうこと?早く探しに行かないと。」結衣ちゃんは、顔を少ししかめ、大切なものを失いそうな顔をする。

「何か心当たりはありませんか?」と檜山さんが、結衣ちゃんに尋ねる。

「心当たりですか?」結衣ちゃんは、顔を沈ませ、静かに頭を巡らせたみたい。

「ええ。彼がいなくなるような心当たり、それから、彼が行きそうな場所の心当たりです。」檜山さんは再度、結衣ちゃんに尋ねる。その表情は、険しさをにじませていた。

「それは・・・。」結衣ちゃんが何か言いかけた時、

「何か知っていますね。」檜山さんの言葉から、少しだけ焦っているような気がした。時間がそれほど残されていないような。

「結衣ちゃん。」私は、ただただ心配する。結衣ちゃんの気持ちと、もう一人の友達、田辺のことを。

「もし彼が暴走をしてしまえば、私たちは彼を怪物として、殺さなければならなくなります。」

檜山さんの発言があまりにも酷く感じ「そんなこと言わないでよ!」私は声を荒げる。目には涙が溢れてきた。

「黙っていてください。」檜山さんは、私のことを一蹴する。

「芦屋さん、それでもよろしいんですか?」恐らく、檜山さんは何度も経験してきたことなのだろう。冷静に状況を判断していた。

「たぶん、港に向かったのかな、って思います。」結衣ちゃんが、思うままに答える。

「港?」朝比奈が首をかしげた。

「きっと事故があったから。」結衣ちゃんは、苦痛の表情を浮かべていた。

思い出したくない過去。田辺を一度失った過去。

「田辺・・」私は、田辺のことを考える。今どうしているのか、なんでいなくなってしまったのか。を。

「車の手配はできますか?」檜山さんはすぐに、自分の持っている携帯で部下に指示を出す。

「支部長、僕、バイクで先行きますよ。」佐野さんは、ここまで来るのに乗ってきたバイクに、跨っていた。

「よろしくお願いします。」こくり。と、檜山さんは頷く。

「道に迷わないですかね?」朝比奈さんが心配する。

「私も行きたい!田辺のことが・・・」私はいち早く、田辺のところに行きたかった。

「ちゃんと考えてますよ、誰かついてきてください。」佐野さんが、私の方をじっと見る。

「いく!いく!田辺が、田辺が!!!」私は、佐野さんのところへ駆け寄り、ヘルメットを受け取るとすぐにかぶり、佐野さんの背中に体を預けた。

「では、ナナさん、一緒にお願いします。」檜山さんは、冷静な表情を浮かべる。

「うん!」私は、佐野さんのバイクでその場を去った。


田辺、すぐに行くからね。



次回へ続く