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認知症と共に生きる! ~認知症世界の歩き方~

「認知症世界の歩き方 認知症のある人の頭をのぞいてみたら?」を読むまでは、「認知症」になったら絶望しかないと思っていました。
しかし読んだあと「認知症」の母を持つ私は、希望が持てました。

母が認知症⁉ そんなことない!

母が「認知症」と診断された時、私は「な、わけはないでしょう」と否定から始まりました。

うちの母は80歳。
60代で多発性脳梗塞を発症し、足がやや不自由になり、ときどきトンチンカンなことを言うものの「天然」と理解し、特に気にもしていませんでした。

母はオシャレで、大好きなブランドはユニクロ。お気に入りの色はピンクで、今は可愛いピンクのマスクを集めています。
「おばあちゃん」と人に呼ばれても絶対に返事をしないけれど、「かわいいね」と言う褒め言葉が大好物。
そんな乙女な母が認知症になんかなるわけないと思っていました。

いやいや、本音を言えばどこかで「もしかして?」と頭の隅にはありました。でも認めるのが怖くて、勇気がなくて、見てみないフリしていたのです。

そんな母が最近、ちょっと様子がかわってきました。
具体的には……

  • 明日の予定がわからない

  • 言葉が思うように出てこない(意志と違うことを言ってしまう)

  • 時間の経過がわからない

  • 環境の変化に対応が難しい

そんな時「認知症世界の歩き方 認知症のある人の頭をのぞいてみたら?」に出合いました。
そしてこれは明らかに「認知症」だと認めざる得なくなりました。

認知症世界って不思議

うちの母が特に認識しづらくなっているのが、曜日や時間の感覚。この本によると「朝」という認識のズレからおきている現象のようです。

外界と、体内にはそれぞれ時計があり、ズレが生じるそうです。それを脳にあるマスター時計が、太陽の光を浴びることで修正してくれます。しかしこの脳の部分にトラブルが生じると、24時間周期のリズムが崩れて時間の認識をとらえることが難しくなるのだそうです。

高齢者は諸々の機能が弱まったり、部屋にこもりがちだったりすると、「朝」を感じることがしにくい。すると太陽の光がどんどんわからなくなって、時計にズレが出てしまう……こんな理屈、私には考えも及びませんでした。

うちの母は、娘が言うのもなんですがとても明るく、賢い人です。
親戚が集まる葬儀の席では、いつも気働きが出来、目立ったところにはいません。でも台所に行くとお手伝い来てくれた近所の人たちの輪の中心には母がいて、みんなを笑わせていました。

常に人気者。
そして誰よりも周囲の人に気を使っていた母。
きっと「自分の時間が狂い始めている?」と気づいてはいるものの、その調整ができず、
「明日の予定がわからないことで、周りの人に迷惑をかけてしまう」ともがけばもがくほどドツボにはまり、その結果、ふさぎこんでしまうことが多くなったのでしょう。

認知症は怖くない⁉

この本を読みながら、一人、認知症の世界に足を踏み入れてしまった母がどんなに心細かったのかをおもんぱかると同時に、私も悲しくて絶望ふちに立った……と言うことはなく、読み終わる頃には「なーんだ、認知症の世界を理解すれば怖くないや!」と希望を持ち始めました。

そして認知症世界への旅を始めた母に「行ってはダメだよ。戻っておいでよ」と言うのではなく、
「わかった、わかった、後ろからサポートするから、好きなところに行ってください」と、寄り添う優しい気持ちも芽生えました。

私は今まで認知症と言えば、名画座で観た有吉佐和子の「恍惚の人」のイメージでした。でもこの本を読んで、「いやいや、認知症の人が見えている世界を理解すれば、母は、母の尊厳を保ったまま人生を全うすることができる!」という前向きな思いにかわりました。

認知症にかかったら全部が終わりではない。
ただ認知症世界への旅が始まった、それだけのこと……。
このガイドブックがあれば、母と一緒に楽しく旅が出来そうです。


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