海辺のバレエ・スクール 5


 昭和3,4年頃バレエ・スクール兼住居としては未完成であったが、約600坪の敷地に建つ約150坪の西洋館はかなり目を引いたに違いない。
 江ノ電が走る北側からは2階建て、海側からは3階建て、ぐるりと広いバルコニーがある2階、一階の稽古場からは海辺に降り立つことが出来た。
 上空からは屋根には小さなドームがあるのが見えた。
 瀟洒な西洋館だが実際には現実的とは言えないような間取りだった。
 上下水道が出来るのはずっと後だし、点灯も節約せざるをえなかったようだ。
 当時は習い事をするのに月謝を納めるお弟子さんの他に住み込みで家事用事の仕事をしながら稽古をする内弟子という慣習があった。
 バレエを習うためには内弟子も通いのお弟子さんもその家族もナタリアの要求や指示に応じて働いたと思われる。
 エリアナはその美貌と優雅さで鎌倉の社交界の花形的存在であった。
 舞台や映画の出演や化粧品の広告モデルにもなった。
 芸術家や文人との交際は興行関係や実業社会にも広まりつつあった。
 
 
 

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