見出し画像

めくるめくの世界へ

トップ画像は、shima_photoさんからお借りしました。ありがとうございます!


1年の中で、2月から3月にかけてのこの季節が一番好きだ。極寒の冬が少しずつ和らぎ始めて、暖かな春に移り変わろうとするこの時期。2月というのは妙に暖かい日があったり、急に雪が降って寒かったりと気まぐれだ。ためらいながらも、春は確実に近づこうとしている。

卒業という言葉がちらつく。自分がまだ大学生だった20年も前のこと。バイト先の先輩が、4月から新社会人になり、バイト先を去る。ミスチルの曲を集めた、応援ソングベスト版CDをプレゼントしようと思った。パソコンに詳しい友人の自宅で作った。パソコンのデータをCD-Rに焼くという時代の話。

社会人になってもがんばれ、というエールをテーマに、10曲程度をチョイスした。けれど、どの曲を選んだか、今ではほとんど忘れてしまった。はっきりと憶えているのは、『また会えるかな』を最後から2曲目のところに入れたことだ。

一般的に有名とは言えない曲だ。別れや卒業という季節が、自分の気持ちを焦らせて、掻き立てて、選ばせたのだろう。

19歳だった当時の自分にとって、学生と社会人の間には、大きな大きな壁があるように感じていた。もちろん今では、社会人なんてそう立派なものじゃないと知っている。ただ当時は違った。簡単には会えなくなる、いつ会えるかは分からない、もう会えないんじゃないか、そんな焦りのようなものがあった。

『また会えるかな』という曲に、あの頃の自分が不思議とピタリと重なっていた。

” 曖昧模糊とした表現なんて 金輪際とっぱらって”
(「また会えるかな」/アルバム『B−SIDE』より)