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ミュージシャン達が立つ場所を無くしてはならない、という想い。

前回、小規模ライブハウスのライブ配信の現状を「ライブ配信」は窮地に瀕したライブハウスの救世主なのだろうか?と言う記事に書いた。ライブ配信でアーティストとライブハウス双方が新型コロナ以前と同じような収益を得るには、まだまだ課題が残されているというような内容だ。

ライブ配信の場合、ミュージシャン自身がライブに対するスタンスをどうしたら良いのか?という事にみんな戸惑うらしい。実際、4/17に同行した高満洋子も観客のいないライブをどういうモチベーションで切り抜けたら良いのか考えあぐねていた。
観客がいればその反応を見ながら進行出来るが、自分一人だと空気感が作りづらいという事らしかった。
自分も何度か小規模のライブ配信を目にしたが、どうしても空々しい雰囲気が漂ってしまう。ミュージシャンもライブハウス側も音の面では普段慣れているプロの仕事が出来るのに、いざ、撮影となると写り手も撮る側も手慣れていない探り探りの進行が見えてしまう。かと言って、普段と同じ様にやれば良いのだが、自分一人で反応を見ずに進めていくわけなんで「これは独りよがりなんじゃないか?」という疑問がライブ中に過ぎったらという不安もつきまとう。

そこで高満の場合はチケットを購入してくれた人に自分の曲のリクエストを募り、それに一言コメントをつけてもらうと言う方法だ。そのリクエストを元にセットリストを作り、MCでもそのコメントを参考に進めていくというラジオ番組的な作りだ。確かにラジオ番組はリスナーの顔が見えないながらもコミニケーションを大事にしているメディアだ。全く未知の領域に挑戦するというよりも既存の成功しているフォーマットの延長線上に考える方が手堅い。

そういった方法で、演奏はリクエストの曲を中心にカメラ目線は極力抑えて、MCは位置の近いバストショットのカメラに向かってカメラ目線で語るというスタイルでやってみた。
観てくれた視聴者の評判も上々で、それを見た他のミュージシャンからもライブ配信の一つの方向性を見つけられたという反応も多かったと聞いた。
実際、チケット購入者の中には色々な地方の人も見受けられて、ライブには来れないけれど配信なら見ることができるという普段のライブとは違う客層も取り入れられることにも気付いた。
今後、観客も入れつつ配信もしていくという段階になっても新しい展開が期待できる。

そんな事を踏まえて自分が主催するMK Cinema Communityというオンラインコミュニティでも「ライブ配信」を題材に、GoodStockTokyoのオーナーの新見さんとライブ配信を積極的に応援しているカメラマンの田中和彦さんにゲストに入ってもらってZOOMミーティングしたという事に前回触れたが、その時はオーナーの立場での収支に対する考え方など赤裸々に語ってもらって、実状が具体的に見えてきた。(前回のnoteで書いた予算配分と基本的なシステムはこの時のMCC ZOOMミーティングを参考にしています。)そして、その時、何かのタイミングでまたライブ配信に参加させてくださいという話になって、丁度、4/30に自分がMVも数本撮っていて旧知の仲の倉島イーサン勲がやるというので、そのタイミングでお邪魔させてもらうことになった。

上記の映像は4/30の配信映像から5/22のバースデーライブ配信の告知を作ってみた。このライブも撮影として参加予定なので興味を持った方はぜひ観て欲しい。

今回は自分がFUJIFILMのX-T3を持ち込んで、カメラマンの安田光さんも自分のSONYのα7sⅡを用意して参加してくれた。ギター弾き語りの一人だし、カメラ台数も少ないということで、いわゆるビデオカメラよりも一眼レフの方が1カットを長く見せられるのでは?という思いもあった。
4/17の時はRolandのV-1HDに4台のカメラと音のMIXアウトが入って、それをBasiColorというキャプチャーボードに送ってPCに入れOBSを使ってYouTubeLIVEで流すという流れだったが、BasiColorの不調でCerevoのLiveShell X(現状、最強と言われている)が代替機として来ていた。

ただ、問題はRolandのV-1HDがα7sⅡもX-T3も信号を受け付けてくれなかったのである。この時はそれぞれ外部モニター経由で出力することで解決出来たが、スイッチャーのV-1HDは59.94i、50i、59.94p、50pしか受け付けてくれないのである。(しかもiかp、どちらか選ばなければいけない)FILMっぽく23.97pで配信したいと思っても無理なのだ、それを59.94iに変換して出してくれるモニターなり何なりが必要になってくる。最近はハードウェアが殆どマルチフォーマットに移行してるので気にする事は少なかったが、ここで落とし穴に出くわすとは!
トーンはコントラストの強いビデオカメラにムービー一眼を調整して合わせた。

前回はスイッチャーとして参加したが、今回はカメラマンとして参加した。私と安田さんが手持ちで、他にハンディカムとHDR-MV1という4カメ体制だ。手持ちが良いとも限らないが、他のライブ配信はスタッフ削減という事もありFIXを数カメで切り替えて行くというものが多いため、差別化の意味もあるかも知れない。
そして前回に引き続き全体を仕切ってくれている阪本光也さんが、今回はスイッチャーを担当してくれた。

今回は前回より深く関わったという事もあって、いろいろ気づく事があった。
YouTubeLIVEは約20秒から30秒のタイムラグがあり、こちらからコメントなどを書き込む場合、先行して曲目などを入れないという配慮も必要だという事。そして、配信後の映像は何故か一絞り分ぐらい暗いという事だ。
TEST配信して、実際に視聴者が観る感覚でタイムラグや明るさの調整はした方が良いだろう。

さて、実際のライブの話に移ろう。
イーサンも初めての配信で掴みづらい部分もあったので、高満容子と同じリクエスト方式を取った。
通常のステージだと40分2ステージで休憩が入る形だが、これはライブハウスが休憩時間のドリンクの売上を頼りにしてる事もある。それをアテにしない分、配信の場合は70分1ステージを目安にしているらしい。配信の場合は休憩を無くし1ステージにまとめた方がテンションも維持しやすい。

ライブ自体はというと最初は探りながらのようにみえたパフォーマンスも中盤からは加速度を増し、無観客ながらも熱いグルーブ感のあるステージで幕を閉じれた。

そして、まだまだ外出自粛は続きそうな気配だ。韓国では規制緩和後に複数のクラブで感染者が発生したという事もあり、再びライブイベントなども開催しづらくなっているだろう。
この今の現象も自然淘汰を加速化させているだけだという人もいる。
実際、YouTubeやニコニコ動画のようなネットメディアから産まれたミュージシャンが活躍している時代だ。
小さなライブハウスは役目を終え、終息へと向かえという啓示なのだろうか?

しかし、顔の見えない視聴者のコメントに振り回されて出来た音楽より、足を運んでくれて同じ空気を共有したファン達と一緒に作った音楽が淘汰されるとは考えたくはない。
そういう場所を欲しているミュージシャンとファンがいる限る、未来への新しいカタチを模索し続けなければならない。

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