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「ライブ配信」は窮地に瀕したライブハウスの救世主なのだろうか?

ライブ、コンサートが中止を余儀無くされている昨今、ライブ配信という方法で表現の場を見つけ出そうとしているミュージシャンやライブハウスも多い。
一時期、都からの援助金がライブ配信などを行った場合は対象外となるという理不尽な条件が言われていたが、それも撤回されライブハウスは配信という事に活路を見出そうとしている。

ただ、今までアリーナクラス以上でやっていたミュージシャン達はDVD収録やCSやBSなどでのオンエアのフォーマットがそのまま使えるが、その方法だと撮影規模も大きいため、この感染拡大が懸念される状況では現実的とは言いがたい。どこも危機的状況なのは変わりは無いが存続の危機に置かれているのは100人以下の規模のライブハウスだ。こういったところは個人経営の所も多く、企業のような内部留保を残しているところも少ない。ミュージシャン達も「自分達はこの状況で活動を休止していても、いつでも再び始められるが、その時に活動の場が無くなっている事の方が気がかり」という話をよく聞く。

そのせめてもの足掻きの手段が、ライブハウス主体の有料配信になるが、それも解決策とは言いがたい。

先日(4/17)に友人で近所のミュージシャン高満洋子を大岡山のGoodStockTokyoまで車で送って行った。ピアノ弾き語りのシンガーソングライターでもともとライブのスケジュールが入っていたのを、配信に切り替える事が決定していた。自分も有料配信するという事で、どういったシステムで運営しているのか興味があったというのも大きい。

ここでライブ配信についての話をしよう。実はライブ配信の敷居はかなり低い。

簡単なところだとスマホやタブレットからだ。例えばFacebookでは写真やコメントを書くところに「ライブ動画」というアイコンがある。そこをクリックした途端、ライブ配信が開始される。気がつくと友人登録してる人に公開されてしまっているので注意が必要だ。

Instagramに於いてもストーリーズをクリックして、下部に表示されている「ライブ」をクリックすれば配信開始と共にフォロワーに案内も行く。
YouTubeの場合は、スマホやタブレットからだと敷居が上がって、チャンネル登録1000人以上必要だが、PCからウェブカメラやエンコーダーを使って配信する場合はその条件は付かない。

これらの方法は基本的には収益に変えることはできない。(「17Live」のように配信して投げ銭を取得したり、「Pococha」と言われるアプリは配信するたびに貰えるポイントを換金する事が出来るらしいが、今回の話とは別だろう)

では、どうやって配信ライブを収益に変えていくのか?今は「BASE」や「Peatix」を利用している人も多いと聞く。ここでチケットを購入してもらって配信用のアドレスを伝えるという方法だ。
例えば¥2000でチケット販売したとするとBASEの場合は、かんたん決済手数料3.6%+¥40とサービス利用料3%がかかるので¥172引かれて¥1828。Peatixの場合は手数料4.9%+¥99なので¥197引かれて¥1803になる。¥3500以上になるとPeatixの方が得になるが、だいたい9割程度が主宰者に残る計算だ。
例えば、これで50人集客したとする。簡単に9割で計算すると¥90000である。ちなみに有料配信で50人集客というのは、小さなライブハウスをメインにやってるアーティストにとってはかなりハードルが高い。これをライブハウスとミュージシャンとで分けるわけだ。配分は主催側とアーティストの関係性でいろいろあるだろう。ライブハウスは本来ドリンク代などの収益も加味されるが、配信だとその収入も見込めない。
なぜ最初にお金の話をしてしまったのかと言うと、映像業界も今は全く動いていない状態なので、配信に活路見出そうとしてるところもある。ただ、さっき言ったような100人規模以下のライブハウスにとっては、もう一つ業者が入ることはいまの動員規模では無理な計算だ。もし入り込むとするなら通常の動員を倍増出来る思索とセットだったら受け入れられると思うが、この状況で旨い話というのはなかなか無い。ただ、配信の利点はハコの大きさに左右されずに動員できるというメリットがある。小さなハコでも魅力的なコンテンツで、事前告知が行き渡れば収益に還元できる方法があると思う。

さて、話を4/17のライブにもどそう、その時はプラットフォームをYouTubeLIVEで行っていた。YouTubeのPCからの配信方法は、通常ビデオアップロードに使うカメラアイコンから「ライブ配信」を選ぶと「エンコーダー配信」と「ウェブカメラ」の選択肢が出てきて「エンコーダー配信」を選択して任意の設定を行う。(これについては組合せによって色々あるので今回は省きます)

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その時は4台のカメラをRolandのV-1HDスイッチャーにMIXアウトの音と共に入れて、それをBasiColorというビデオキャプチャーボードを使ってPCに入れていた。(4/30に行った時には既に調子が悪くなってて、急遽、別のキャプボになっていたので信頼度となると「?」だ)それをOBSというライブ配信では一番ポピュラーなアプリでYouTubeのエンコーダーとして認識させていた。ビデオカメラは通常HDMIで出力するがこれがPCは受け付けてくれない。それでゲーム実況などをする時に使用するこのビデオキャプチャー(ゲームキャプチャー)が威力を発揮する。今回の現場ではスイッチャーで1系統になったHDMIをUSB3.0に返還してPCに送るというシンプルな考え方だ。

(実はBlackMagicDesignのATEM Mini Proというスイッチャーを使用すると、たった7万円台でスイッチャー+ビデオキャプチャー+PCと全ての機能を一つで網羅しているのだが、現在は人気が集中していて入荷待ち状態。)そのATEM Mini以外では、上記のような方法が一般的だろう。1カメのみの配信ならばスイッチャーの必要性も無い。YouTuber達の間ではCamLink4Kというキャプボが重宝されているらしく、自分も同じメーカーのGameCaptuerHD60sを持っている。

さて、4/17のライブはピアノ弾き語りだったために、ミュージシャンひとり、そしてスタッフとしては、GoodStockTokyoのオーナーの新見知明さんとこれら機材をセッテングしてくれた阪本光也さんと自分の4人という密度の低い状態で出来た。

この時は、曲を知っているということもあり自分が映像のスイッチャーを担当した。カメラはSONY HDR-MV1が2台とハンディカム2台という組合せで、その中のハンディカム1台だけ坂本さんが撮影していた。そして、新見さんが音のミキサーを担当するという方法を取った。
経営者的な気持ちとしては、どうにかそれをひとりのスタッフで賄えないだろうかという想いが強い。確かにはじめに言ったような予算配分だとアーティストにギャラに残すためにはスタッフの人数を減らしていくしかない。音のMIXが安定していて、カメラも固定だけだったらできるかもしれない。
Rolandの新しいスイッチャーはフットペダルでコントロールが出来て自動スイッチングのモードも備えているらしい事からワンオペで音も映像もこなすことも考えられている。もう、ライブハウスのスタッフはどれだけマルチな才能を必要とされるのだろう。。。

ともかく映像と音の方は、こういった方法で一応かたちになった。

その後、自分が主催するMK Cinema Communityで、ZOOMミーティングをした時に、この時のGoodStockTokyoのオーナーの新見さんとライブ配信を積極的に応援しているカメラマンの田中和彦さんにゲストに入ってもらって、ライブ配信をテーマに語り合った。
いまの状況を鑑みると、どうしても先行き不安な状況に暗くなりがちだが、一度、現状を掴むためにライブ配信の現場を見せてほしいという事になり、ちょうど4/30に自分がMVを撮った事もある倉島イーサン勲がライブ配信やるというのでお邪魔することになった。

ミュージシャンから見たライブ配信に対する考え方もそれぞれあって、普通のライブとも違えば、MVの収録とも違う。今回は長くなってしまったので、その話とカメラも持ち込んで参加した倉島イーサン勲のライブの時のレポートはまた次回に。

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