ツイッターで仕事を探してはいけない:詐欺窃盗(特殊詐欺受け子)

詐欺、窃盗の事件でした。このセットはほぼ特殊詐欺です。今回もそうでした。

遅れて傍聴人席に入ると、被告人質問が始まっています。今回は審理。被告人は若く、細身。弁護人が質問しています。

「どうやって仕事を探したんですか?」
「ツイッターで裏、とか、闇でバイトがあるか検索しました」

そうして稼げるアルバイトを探していたようです。最初はとあるところから「モノ」が届いて、それを発送するというもの。

「中身は見てはいけないと言われていました」

なんという妖しいバイト・・・でも、お金に困っていた被告はそのバイトを続けてしまいます。次は「○○市の××に向かってください」と指令が入ります。そこで荷物を受け取る仕事をしました。

弁護士「詐欺に気付いたのは?」
被告「実際にお客さんのところに行くと、指示役から『郵便局員と名乗ってください』といわれて、そこで・・・」
弁護士「なぜそこで辞めなかったんですか?」
被告「交通費がもうなかったし、やるしかないと・・・指示役からも『あなたの免許のデータをこちらは持っているし、やるしかないよ』といわれました」
弁護士「それから何回も(合計9回)受け子をやっていますね、辞められなかったのはなぜですか?」
被告「パニックになってしまって・・また弱みを握られてしまうと」
弁護士「取り分についてお伺いしますが、10%でいいですか?」
被告「はい、交通費は出たりでなかったり曖昧でした」
弁護士「あなたは取り分を使わずに預貯金やタンス貯金にしていましたね、100万ほどあったのに使わなかったのはなぜですか?」
被告「始めたのは生活に困ったからで、それ以外で使いたくなかったからです」
弁護士「そのお金をボクが被害者に配った時、被害者は怒りよりも困惑してました、そのことについてどう思いますか?」
被告「被害者が老後の為に貯めたお金をうばい、最低な事をしたと・・・」

被告は涙声で、震えていました。本当に反省しているようです。髪も白髪が多く、1年ほどの留置所生活のストレスからそうなったのだとか。狭く、火が無く寒い、自由の無い部屋で「なぜ、こうなってしまったのか?」考え続けました。

そんな被告には家族のサポートがあります。地元の母親からは110通の手紙がとどき、被告も週5で返信しています。兄からも70通、おまけに顔も知らない父親からも援助してくれることになりました。被告の間違いを家族全員で助けようとしているのです。その家族関係に冷たくツッコミを入れる人がいます。もちろん検察です。

「えっと、遠くの土地に引っ越したのは彼女がいるからですよね?」と眼鏡の検察官。これからネチネチとした質問が続きました。

「彼女が妊娠して初めて、お母さんに彼女の存在を伝えたんですよね?」
「最初は仕事って嘘ついて地元を離れたんですよね?」
「ツイッターで仕事探して、犯罪って気づいたら地元戻ればよかったのでは?」
「帰る交通費が無いから犯罪するって、交通費と犯罪で犯罪をとるってことですよね?どっかの交番とかにいって事情を説明すればよかったのでは?」
「パニックっていってましたけど、パニックって?」
「で、被害弁償は全部終わったわけではないんですけど、どうするんですか?」

ネチネチ攻撃は続きます。総額2000万以上の被害弁償をこれからやりますと言わされていました。

裁判官も質問します。

「2000万以上の被害で、10%の手取りってことは200万はあった?」
「200万弱です」
「じゃあ、96万円よりは上ってことだよね、何に使ったんですか?」
「彼女との生活費です」
「じゃあ、彼女にも協力をおねがいできないですか?」

なるほど、彼女が被告の犯罪で得たお金から利益を得ていたのなら、協力する義務もあるかもしれません。しかし

「一切かかわらないという約束をしています」

彼女の両親から縁を切られているのです。

「脅されるからやめられなかったということですが、実際どうゆうことをされると思いました?」

という裁判官。

「免許の住所から毎日家に来られる、実家にも若いのをよこされると言われ、ツイッターにも免許の写真を公開され『コイツ犯罪者』と流されるとおもいました・・・」

ツイッター廃人、ツイ廃ともいわれますが、被告はこんなことを気にしていたのです。ちょっと考えればわかるように、特殊詐欺の指示役が表に顔をだすことはありません。もし本当にやってきたのなら、警察が喜んで協力するでしょう。ツイッターでそんなことを呟かれたとて、拡散力はほとんどないのです。有名人でもない限り、スマホはその人の知りたい情報しか吐き出しません。

想像力の欠如、それが被告の弱点だったのかも。ツイッターの世界に入りびたり過ぎて、TLが世界のすべて脱炭かもしれません。

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