犯罪にならない金稼ぎ:美人局
恐喝の裁判を傍聴しました。被告人は若い男性。茶髪に黒いスーツ。極道ではなさそうな外見です。検察が罪状を述べました。
被告人は同居している女性と友人Sの3人で美人局をやったのでした。出会い系サイト(マッチングアプリ)を使い、女が男を釣る。指定した場所に被告人とSが向かい、男を脅す役でした。
「相場は50万だけど、そんなにとるつもりはないから」
起訴されているのは2件で、うち1件目は22万円を詐取することができた。それから3人は多いときで週3~4回。合計10回ほど美人局を行います。2件目は6万円ほどでした。
起訴されているのはこの2件。「追起訴があったのでは?」と裁判官が確認しましたが「いえ、この2件です」と検察。
弁護士が証人の請求と被告人質問を提案します。しかるべく母親が呼ばれました。
家族について「父親と妹。一緒には暮らしていない。事件前の交流は電話をするぐらい。仕事をしていると認識していた。事件を知って悔しい、そんな風に育てた覚えはない!」
検察の質問にも答えます「生活状況は知らなかった。友達の家を転々としているなんて知らなかった。ただ、仕事は電話の折り返し時間が早かったので、休みがちなのかもと感じていた。20歳の時から家を出て7年、たまにガソリン代を渡すぐらいの援助はあった。今、妹の家にいるのは父親と折り合いが悪いから。だが父親の協力は得ようと思っている。実家に戻すのは考えておらず、ケータイを解約させ悪い友人関係を解消させる」
被告人は高校卒業後、職を転々としています。最後に土木関係の仕事に就いていました。その前職は飲食、そこでSと知り合い、土木でも同じく働いていました。
被告人が女の家に転がり込み、そこにSもやってきます。3人で話しているうちに「お金稼ぎたいよねー」という話になりました。そこで女が昔援助交際をやっていたことを語りはじめ、それから美人局をやることになりました。
「暴力や、キレたりイラついたりしない、そしてお金の話をこちらからしない」というルールを作ります。「そうすれば犯罪にならないと思った?」「その時は、軽く考えていました」
最初の数回は交渉役をSと代わりばんこにやっていたのですが、いつしかSが交渉役、被告人が運転手役となっていました。裁判を傍聴した印象では、Sの方がイケイケな感じ。被告人が運転手役にまわったのも、その方が適任だったからでしょう。
お金を引き出させるのもSの方が上手かったのでしょう。被害額としては1人目の22万が最高額だったようです。この被害者はその後もゆすられていて「今から会社に行きます」とか「毎月3万はらえ」などと言われています。
そしてこの被害者がどんどん怖くなり、警察に相談して被告人たちは捕まりました。この被害者がいなければ、被告人たちはまだ美人局を続けていたのかも。
「ヤバイと思っていたのに、やったの?」
「ズルズルと・・断れなかった」
「現金得たのは2回だけ?」
「そうですね」
「どうして?」
「後日になって連絡取れなかったり、お金の話にならなかったり」
「貯金とかはあったの?」
「少しは」
「土木の給料はいくらぐらい?」
「出張があれば、25万ぐらい」
美人局で得た利益は10万ほど、ほとんど飲食や生活費で消えてしまったとのことでした。それならば、普通に働いた方が良かったのでは・・・と思います。
被告人は22万を弁償し、さらにお金を母親から借りて20万を慰謝料として被害者に渡そうとしています。その42万は受け取ってもらえませんでした。まあ、そりゃそうかもしれませんね。
被害者は出会い系か何かで女を買っているのですからね。美人局は被害者が名乗り出ない犯罪と言えます。被告人たちがもくろんだのもここらへんじゃないかと予想しました。
裁判では軽い気持ち、甘い考えと反省の弁を述べる被告。ちょーかったるそうですが、気持ちもわかります。被告人はほとんどSと女の運転手役でしたし、軽いノリで付き合っていたのでしょう。得た金額も10回やって10万ほどです。交通前科があるだけで、犯罪とは縁遠かったのでしょう。
Sとの関係も、年齢が上ってだけの友人でした。そこに恐怖や、経済的な困窮の後はなく、本当に軽い気持ちで手をだしてしまったのかも。休憩は1年6月で、おそらく3年の執行猶予が付くと思われます。
やくざとか、本当にヤバい人に出会う前で良かった良かった。プロの美人局の才能がありそうな共犯者の女が無事なら何よりな事件でした。
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