旦那とレスをやめてみた

昨夜、子を寝かしつけてリビングにいくと、旦那がいつものように仰向けになり、テレビの前でうたた寝していた。私もそこにぴったり体をくっつけて横になる。今日こそは、と願いながら。

しかし、どれだけ待っても今日こそは、にならない。この1週間、ずっと旦那にくっついてきたのに、いつまで経っても旦那から体を求められない。今日こそは抱いてもらえるかもしれないと、毎日毎日期待していたのに。旦那は私に背を向ける形で、横向きになった。

旦那に、私がくっついてくるとウザいのかと、小声で訊いてみた。すると旦那は、そんなことないよと返事する。じゃあ何で背を向けるのかと訊いた。疲れたから寝返っただけだよと言う。今だけじゃないよ、なんでこないだ家族で公園に行ったとき、私が手を繋いだり腕を組んだりしたのに手を払い除けたのかと詰め寄った。声は自然に大きくなっていった。

私が長い間どれだけ寂しい思いをしてきたと思ってるんだ、こんな冷めた夫婦仲を何とかしたかったから、最近は朝早く起きてメイクして着替えて、あなたを送り出しているんじゃないか。夕飯は何が食べたいか細かく訊いていたのもそのためだ。10キロもダイエットしたのは何故だと思う。あなたに綺麗だよって褒めてもらいたかったからに決まってるじゃないか。そんな女心も分からないのか。

私が可哀想だ。何年、放置されたと思ってるのか。妊娠してからずっとだ。私に興味がないなら興味ないと言えばいい。私を抱きたくないなら抱きたくないと言えばいい。風俗行きたいならお金渡す。私も外で浮気するから。私を自由にしてくれ。私は悲しい。女としてのプライドを捨ててセックスしようと泣いて頼んだのに、あなたはしてくれなかった。男として最低だ。私は不幸だ。女にこんなこと言わせておきながら、でも浮気は許せないのか。これは蛇の生殺しだ。離婚してくれ。私は、私を愛してくれて、キスして抱きしめてくれて、セックスしてくれる人のもとにいく。


こうなると感情が止まらない。私は泣きながら訴えた。すると、旦那もなぜか涙をぼたぼた垂らし始めた。今まで私に構うのが面倒くさかったくせに。私のいないところでオナニーしてるくせに。なぜ、そこで泣く必要がある。

ごめんね。

旦那が天井を見ながら言った。

ごめんね、だけか。また、口だけか。

私が睨んだ。

そうじゃない。ごめんね。

旦那は私の頭を撫でながら、同じ言葉を繰り返す。


敢えて、コロナだの、ワクチンだの、その手の話題には触れなかった。触れたらややこしくなる。旦那の口からそれらが飛び出すまで黙っていた。

今のところ旦那からほとんどシェディングらしいものは感じない。だから私は抱かれてもいいと思っている。多少のシェディングなら対応できる。だけど、肝心の旦那の氣持ちはどうなのか。コロナに「無症状感染している妻」「陰謀論者であたおかな妻」なんか抱きたくないと思っているのかもしれない。私のハリを失った肌やシワ、授乳後にしぼんでしまったおっぱい、垂れたお尻に興奮できないのかもしれない。でも、それにしたって酷すぎる。コロナ茶番が始まるずっと前から、私たちはセックスレスだったのだから。


ごめんね、だけか。言葉で謝られたって信用できない。態度に表してみろ。あなたは前にもそう言ってうやむやにした。毎晩あなたが私の体に触れてくれるのを期待して、でも叶わなくて、何度も何度も泣きながら寝てきたことを、何とも思わないのか。もういい。私を自由にしてくれ。私は彼氏を作るから。あなたに貞操を誓う義理はもうない。あなたは私に関心がない。抱いてくれない旦那なんか旦那じゃない。悲しい。悲しい。愛してる人に抱いてもらえない自分が可哀想。今すぐ抱いてくれないなら出て行ってやる。あなたは私を永遠に失う。


もう恥もクソもない。これは正論だし、堂々としてぶつかればいいと思った。後は野となれ山となれだ。私には、女として幸せを求める権利がある。

結局、その後は2人で抱き合って泣いた。なぜ旦那も泣くのかが相変わらず不可解だった。謎の展開である。そしてそのままセックスへ移行した。旦那が勃たなかったらどうしようとか、私が濡れなかったらどうしようとか、かなり真剣に悩んだし、緊張した。だけど、どうにかなった。上出来とは言えないけれど。

私たち夫婦はコロナでセックスレスになるどころか、コロナでレスを解消した。ワクチンを接種した男となんて、絶対セックスなんかしたくないと豪語していたくせに、した。して良かった。幸せだった。私はまだ、旦那を愛している。これからどんどんコロナ脳がエスカレートしようとも、きっと旦那を愛している。愛したいから愛しているんじゃない。心が勝手に求めるからだ。旦那の心が欲しい。諦められない。離したくない。

これからずっとセックスしろ、私が100歳のおばあちゃんになってもしろと言うと、旦那は目を閉じたまま頷いた。セックスできなくなっても、キスして抱きしめるのは何歳になっても出来るからちゃんとしろと言うと、それにも頷いた。子の前で堂々とイチャイチャしろ、子が呆れてるくらいがちょうどいいと言うと、旦那は目を開けて、少し戸惑いながら笑った。そして頷いた。私のおっぱいは今後どんどん垂れていくが、シリコン詰めればいいのか、顔がデカいの嫌だから顎を削ればいいのかと訊くと、何もするな、しないのがいいと言ってきた。じゃあ今のままでも可愛いと言え、俺だけの可愛い奥さんだと死ぬまで言い続けろと命令したら、素っ裸の旦那は素っ裸の私を抱きしめた。

私は後悔しない。後悔してたまるか。