電氣屋にいるプロが好き
私は電氣屋で働く人が好きである。
電氣製品にそこまで興味はないし、必要なときにしか買いに行かない。しかし、いざ行ってみると毎回楽しいと思う。
日々、神酒を使っている関係か、ミキサーが壊れてしまった。新しいミキサーを買うために来店したのだが、ここの電氣屋にいるおじさんがまた素晴らしい接客をしてくれた。
おじさんはまず、シールを持って我が子に近づいた。適度な距離感で威圧感もない。なので私から話しかけた。ミキサーが欲しいがフードプロセッサーにも使えるものはないか?我が家にあるものは本体部分は共用で、上部のボトルだけ付け替えればミキサーになったりフープロになったりするのだが、と。
そういうのは無いが、あるとすれば多機能型のハンドミキサーはどうか、と聞かれる。
こういう形状のものをおじさんに見せられる。ああ、なんか最近、こういうの流行ってるよね。マルチなことできます的な。
おじさんに、売り場の製品を見て、カッターはボトルのどこについているのかと訊くと、おじさんは一旦消え、小走りで戻ってきた。手にはカッターを持っている。売り場では危ないから外しているらしい。
さらに、神酒の話をしてみた。重くて撹拌しづらいせいか、モーターから変な匂いがし出して壊れた、強力なミキサーはないか、と。
するとおじさんは、お米のような粘性の高いものはミキサーにはしんどいかもしれないと言う。じゃあ、フープロの方が良かったのか?フープロは水分が多いものが逆に苦手だったと思うのだが、と言うと、おじさんは眉間に皺を寄せて、また居なくなり、小走りで戻ってきた。今度は手に、印刷した説明書を持っている。
↑実際におじさんにもらった、多機能ハンドミキサーの説明書。
肉やパルメザンチーズ、チョコレートはみじん切りに出来るらしいが、この一覧にはお粥もペースト状に出来るとも出来ないとも書いていない。
おじさんはますます渋い顔をして、また居なくなった。しばらく帰ってこなかったので、ついには面倒くさくなって接客を放棄したのだろうか。
すると、おじさんは戻ってきた。今度は何も持っていない。
あれから調べたがお粥をペースト状に出来るという記載はない、大丈夫な保証もない。でも、よくよく自分で考えてみたのだが、肉を潰して挽き肉を作るときも、かなりの粘りが出る。お粥と近い状況だと思う、とおじさんは言った。
なるほど、その考えはもっともだ。そもそも、神酒なんてマニアックなもんを作る客の方が少ないだろう。記載はなくて当然だ。
この人はちゃんと自分の頭で考えられる人なんだなあと、にわかに感心した。その結果、自分にはこの多機能タイプではなく、シンプルにフープロの機能だけついてればいいように思えた。
おじさんにそれを言うと、それでもいいと思いますよと言われた。私はこの、パナソニックのがいいと思うと言った。
すると旦那が、このティファールのもいいと思うと言い出した。
確かに。おじさんは、このティファールのは何と言っても軽いと言った。ボトル部分がプラスチックだからとも言った。
プラスチックなのは嫌だな、と私が言うと、おじさんも頷いた。このボトルが傷つくと、傷ついた破片が中身と混ざる可能性もあるし、ガラスのボトルに比べると匂いや汚れが落ちにくい、とも言った。うんうん、と頷いた。
おじさんはさらに、ただ、このティファールのほうがパワーがあるし消費電力がこれだけ違う、これはTVショッピングでも紹介されていたんですよと、少し興奮気味に言った。パナソニックは120Wだった。ティファールは350Wもある。
むむむ、神酒の粘りに耐えられるのはティファールのほうなのではないか。悩む。
するとさらにおじさんはこうも言った。その分、連続運転時間がティファールのほうは3分しかない。パナソニックのほうは30分ですね、と。
むむむ。3分で神酒を完成させられるはずがない。一度に2ℓと、多めに作った場合は特に。
好みの問題です、とおじさんは言った。うん、確かにそうだ。
というわけで、かなり納得してパナソニックのほうを購入した。おじさんの助言により私はミキサーを誤用していたことに気づき、またしても同じ過ちをせずに済み、さらに一番自分に合ってそうなフープロに辿り着けて、良かった。本当に良かった。
まだ使ってないけど。