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子の成長

あの日から旦那とは平和にやっている。喧嘩はしないし、笑顔で振る舞えてる。

でも、何かが壊れていくのが分かる。今日も仕事が来ないな、と思うとリビングのソファに寝転がり、気づくと朝からスマホばかりいじって、昼になり、夕方になる。洗い物が溜まり、三角コーナーに生ゴミが溜まる。水切りカゴにも皿が山積みになり、皿が滑り落ちて割れた。リビングには子のおもちゃが散乱し、玄関では靴箱が開けっ放しになり、中の靴は玄関の土間に溢れかえっている。水槽の掃除もしていないからガラスの壁面に苔が生い茂り、何を飼っているのか分からない。

あれ。今日は何曜だっけ。あれ。今日は昼ごはん食べなかったのに、お腹空かなかったな。

現実から目を逸らし、昔の幸せだった頃を思い出そうとするほど、人は老化が進み、ボケていくのだという。まだアラフォーなのに、私の今の有様は80過ぎの老人のようである。

一方で、子の成長が目覚ましくなった。もともと、人より成長が遅い子だけど、初めて私の前でオムツを脱いで、おまるに座ってみせた。おしっこは出せなかったけど、それでも5分くらい、出そうとしてねばった。トイレトレーニングに対してようやく前向きになってきたらしい。

食事のとき、卵は、本当ならひよこになり、鶏になるはずだった、お米も、頑張って芽を出して葉をつけて太陽の光を目一杯浴びて稲穂をつけた、その命をもらって生きてるんだよ、ありがとうしようねと私が言うと子は、ひよこさんお米さんありがとうと言って卵かけご飯を食べるようになった。以前より食べ残しが減ったと感じる。ごはん、お腹の中に入れたから大きくなる、ジェットコースターに乗れる、と本人は言う。私が遊園地で一人で乗りに行ったジェットコースターが、羨ましくて仕方ないのだ。

入浴時、向かい合って抱っこした姿勢で湯に浸かると、ママだーいすき、と言って抱きついてくる。ママも大好きだよと言って抱き返した後、前髪をかきあげてオールバックにしてやると、本人はその状態を「おじさん」と呼び、喜びの奇声をあげる。さらに両手で顔のほっぺたの肉を寄せて、「ブスな人」を実演してくれる。

寝る前に絵本を読み聞かせると、文字は読めなくても数字はすこし読めるようになった。洗濯かあちゃんや7匹の子やぎ、大きなかぶ、ぐりとぐら、ノンタン等の絵本が好きで、読んでやらないと泣くし、寝てくれない。子にとって絵本は入眠の儀式だ。私が読むのを聞きながら、分からないことがあると必ず質問してくる。なんで雷さまは落っこちてきたの、なんで狼はお腹に石ころ詰められちゃったの、なんでかぶは抜けないの。なんで、なんで。なんでを解決してやると納得する。

絵本を読み終わり、明かりを消すと布団に寝転びながら、本人はアンパンマンに会いたいと祈りだす。見事、夢の中で会えると翌朝、喜んで報告してくる。大きくなったらアンパンマンになると言う。

よかった。本当によかった。子が、こんなに健やかに成長してくれていて。楽しそうに過ごしてくれていて。私たち夫婦も世の中も、対立軸が増え、こんなにぐちゃぐちゃで、溝は深まるばかりなのに。

ワクチンを打った旦那とはもう一生セックスできない。元々セックスレスな夫婦だったけど尚更、怖くて出来ない。仮に誘われたってごめんだ。だから、きょうだいを作ってやることはもう叶わない。ひとりっ子決定だ。子も、弟妹が出来ないことを何となく察しているのか、ぬいぐるみを捕まえて自分の弟だの妹だの言ってきたりする。

スレることなく真っ直ぐに育っている我が子。今は、この子のために、私は生きている。