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嘘の型

先日、名嘉真朝増先生の孫弟子の方から伺った、少林流松村正統の祖堅方範先生が名嘉真先生からピンアン初段と二段を習ったという話を書いたが、その方から祖堅先生の「白鶴」の型についても興味深い話を伺った。

YouTubeに祖堅先生の白鶴の型がアップロードされているが、実はこれは外国での演武の際、即席で作った嘘の型だそうである。この話をその孫弟子の方は祖堅先生の直弟子から直接聞いたそうである。

筆者は部外者なので真偽の判断はできないが、この話を伺ったとき、いかにもあり得ると思った。なぜなら、本部朝基や上原清吉も同様のことをしばしば行っていたからである。

今日の競技空手の常識からすると、人前で「嘘の型」を演じるというのは理解しがたいことである。そもそも競技においては、型の挙動はすべてオープンであるし、その公開された挙動を正確無比に演じることに選手は日々努力しているわけだから、嘘の型を演じる何らのメリットも競技においては存在しない。

しかし、昔は型(技)を見られることは、すなわち「手の内」を知られることであり、それは自らの命の危険につながったので、人前で本当の型を見せたがらなかった。だから、祖堅先生のような、学校空手の系統でない、昔手ンカシンディ(古流空手)の使い手なら、上記の話はあり得ると思った。

古流型の研究の場合、こういうことがあり得るので、映像を盲信するわけにはいかない。もちろん映像自体は有力な資料であり得るが、しかしそれが本当かどうかはやはりその流派の人に訊かなければ確証的なことは言えないのである。

ちなみに、本物の白鶴の型は別にあるそうだが、祖堅先生は弟子に一律にそれを教えていたわけではなかった。実際、祖堅先生のある弟子の方は上の動画を見て、「外国に自分の知らない型がある。外国まで行って習ってこなければいけない」と言っていたそうである。その方は白鶴を習わなかったので動画が偽物だと分からなかったという。

トップ写真: UnsplashAndrew Perillouxが撮影した写真

出典:
「嘘の型」(アメブロ、2018年10月22日)。

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