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山根流棒術の家元と師範

Facebookで山根流棒術の伝系について質問があって簡単な回答をさせていただいたが、改めてブログでもこのことについて書いておこうと思う。

山根流は沖縄では明確に「家元(宗家)」を名乗った世襲流派である。下記の比嘉清徳先生に出された山根流の師範免許でも「家元 知念正美」の署名がある。

伊舎堂博和『神道流夢幻の術―武聖比嘉清徳の神技』文芸社、2004年より

家元もしくは宗家は日本武道で使われる称号である。元来は世襲が大半だが、明治以降、武道が衰退して親族に後継者がいない場合、非血縁者の高弟の中から選ばれる場合もある。ただしその場合でも、先代家元からの後継指名が必要であり、指名がなければ家元を名乗っても単なる僭称である。

それゆえ、山根流の家元は知念家の子孫の方しか継承することができない。かりに知念家の子孫が棒術をしていなくても、家元の地位は潜在的に知念家に受け継がれている。

日本の武道流派でも、宗家は武術を稽古しておらず、代わりに師範を任命して、その者が宗家に代わって実技指導を行う例がある。

さて、家元以外に「師範」の称号が山根流にはある。これは山根流を正式に教授することのできる称号である。実は山根流の師範免許は比嘉清徳先生以外には出なかった。多くの人がこの棒術の名門流派の師範免許を欲しがったが、ほかには出なかった。したがって、山根流の正統な伝系は現在は比嘉先生の子息の比嘉清彦先生が館長を務める武芸館のみということになる。

比嘉清徳

このことを特に記すのは、現在、山根流の名称があまりにも安易に使われて、その多くが本来資格のない人達によって教えられているからである。なかには「何々派山根流」などと使われている例もあるが、そんなものは本来ないのである。

沖縄の空手、古武道関連の書籍を読むと、山根流は紹介されているが、しばしば家元や師範については全く書かれておらず、資格のない人たちの名前が系統図に並んでいたりする。これは歴史の改ざんなので好ましいことではない。

ちなみに知念三良の系統ではあるが、山根流ではない系統もある。屋比久孟伝→平信賢の系統や大城朝恕の系統である。これらの系統は広義には「山根流系」とは言えるが、知念家に継承された狭義の山根流とは区別する必要がある。

出典:
「山根流の家元と師範」(アメブロ、2018年10月30日)。


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