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喜屋武朝徳の組手

以前、アメブロで喜屋武朝徳の組手の写真を紹介したことがある。

出典:Karate e Kobudo Tradizionali di Okinawa - Okinawa Dento Karate-do

出典は上のリンク先にあるように、海外の空手家がFacebookにアップロードしたもので、筆者はドイツの空手研究者、アンドレアス・クヴァスト先生から教えてもらった。

喜屋武先生の弟子の組手写真はこれまでも見たことはあったが、ご自身の写真は初めて見たように思う。出典について質問されたので、当時調べてみたが分からなかった。しかし、その後、どうやら沖縄のある喜屋武系統の道場のドイツ支部の人が出版した本からコピーしたという話を聞いた。筆者はその本は未見である。

さらに、その後様々な方から情報が寄せられて、これらの写真は、喜屋武朝徳著『沖縄拳法唐手道基本組手』(1932)からのものであることが判明した。

そういえば、2017年に沖縄空手会館の落成式典に出席した際、喜屋武先生の本が発見されたと聞いた覚えがある。その時は深く考えなかったが、いま思い返すと、上記の本のことだったようである。原本は手書きで約70ページの分量があるらしい。また、より詳細な画像が、少林寺流求道館塚本道場のFacebookのページにアップロードされている。

全沖縄少林寺流空手道協会 求道館 塚本道場 Zen Okinawa Shorinji-Ryu Karatedo Kyudoukan Tokyo

これらの写真を見たとき、筆者は本部朝基の組手と似ていると思った。写真の喜屋武先生の相手役は本部朝基ではないかという指摘もあるが、そうは思えない。おそらくお弟子さんの誰かであろう。もちろん、「本永朝徳ー喜屋武朝徳の本名ー」で述べたように、二人は親戚同士で、幼少の頃から一緒に空手を稽古していたから、組手も当然練習していたとは思うけれども。

以前、古流の組手の特徴として、「入身」、「体捌き」、「外し」について書いた。上記の組手もそれらの原則に当てはまっていることが分かる。

また、上の写真についての説明文に、「背負投ヲスル型」とあり、投げ技の写真であることがわかる。つまり取手の写真である。

写真は不鮮明だが、敵の懐深くに入り込んで、右腕を敵の背中にまわして、まさに投げんとする瞬間のようである。本部流では、この種の投げ技は「入身投」と呼んでいる。柔道と違って、敵は突いてくるわけだから、突き手が当たらないようにする工夫が必要である。

さて、ここ十数年、空手界では取手が注目されている。WKF(世界空手道連盟)の団体型の分解でも、最近は派手な投げ技が披露されている。ただ残念ながらそれらは本来の取手ではない。新たに創作されたアクロバティックな取手である。

昭和の頃は、「空手に投げ技はない」とか「空手でそうした技を使うのは邪道である」といった主張がよくなされていた。いまでも年配の人にはそう信じて方も多いかもしれない。喜屋武先生の写真はそうした主張への反証になるであろう。

出典:
「喜屋武朝徳の組手」(アメブロ、2020年5月10日)。
「喜屋武朝徳の投げ技」(アメブロ、2020年5月13日)。

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