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私はお金を恨んでいた。

私がお金について考える時、頭に思い浮かぶのは母の姿だ。

スーパーで買い物をした後、毎回、レシートをじっと見つめる母の姿。あの時母が、何を思っていたのかは分からない。きっと「思ったより金額が高いな」とか「重複してレジ打ちされていないか」を確認していたのだろう。
そんな母の姿を、私は、みすぼらしい、恥ずかしいと感じていた。
そんな母の倹約の積み重ねで、自分は大学まで卒業させてもらったというのに。

お金のことで喧嘩ばかりしていた両親

次に思い出すのは、幼少期のおぼろげな風景。
確か、大きな公園に家族と出かけて、他にも沢山家族がいて。
周りのレジャーシートの上には、色とりどりのおかずが並んだお弁当があって、でも私の家のレジャーシートの上は、コンロと袋麺のラーメンだった。
本当に靄のかかったような記憶だけれど、周りにジロジロ見られていた気がしなくもないし、笑われていた気がしなくもない。その時の両親や兄弟の顔は覚えていない。

おそらく私の家は裕福ではなく、物心ついた時には、両親はお金のことで喧嘩ばかりしていた。毎晩、聞きたくもないような暴言が飛び交って、私にとって家は、安心できる場所ではなく、緊張する場所だった。
それでも母は、私や兄弟に良い教育を受けさせようと、習い事や塾に通わせてくれた。それが本当に、後ろめたかった。
習い事も塾も、例えばピアノの発表会のためのワンピースもいらないから、両親には普通の関係でいてほしかったし、夕食を食べながら他愛もない会話ができる家庭であってほしかった。

絶対に、みじめな思いをしたくない

そんなことも影響してか、私は高校に進学したらすぐにバイトを始めて、とにかく働いた。高校生の時から週5〜6日はバイトをして、毎月6万円前後くらいは稼いでいたと思う。家族が嫌いだった私は、バイト代を家に入れることもせず、全部洋服やコスメに使った。自己中心的な人間だ。
欲しいものは我慢したくないし、我慢してみじめな思いをしたくない。
買い物の後のレシートは絶対に見ないし、握り潰した。
自分がいくら使ったかなんて確認したくなかった。
その分、働いて稼げばよいと思っていた。

大学生になっても変わらず

大学生になっても、バイトと散財を繰り返していた。
確か毎月25万円前後は稼いで、しかし何に使っていたのか覚えていない。
どうでも良いものに使っていたんだろう。

最悪なのは、リボ払いや学生ローンにも手を出したこと。
どういう思考回路だったのか、クレジットカードの利用限度額やリボ払いの枠が自分の貯金のように思えて、全てを何だかよく分からないものに使っていた。金欠になり親にお金を振り込んでもらったこともあるし、学生ローンを代わりに親に返してもらったこともある。今思いだしても本当に本当に嫌になる。恥ずかしい、申し訳ない気持ちだ。

年収200万円台〜800万円台を経験して

大学時代、バイトばかりしていた私は就職活動も上手くいかず、せっかくもらえた内定もリーマンショックにより取り消しとなり、派遣社員のコールセンタースタッフから社会人生活をスタートさせた。年収は確か240万円〜270万円くらい。一人暮らしだったのでギリギリの生活だった。
そこから、ブラック企業2社・零細企業1社を経て、今はなぜかIT企業に勤めており、色々あって年収890万円になった。
年収200万円台から800万円台まで経験した私は、各フェーズごとで、各フェーズなりの散財をしてきた(その過程に中古マンション4,300万円がある)。収入が上がり生活に余裕が出ると、よほど意識しないと生活水準もどんどん上がり、結局手元に残るお金は限られたものになる、ということを身を持って経験した。そして生活水準を下げるのは、1度試したが想像している以上に辛い(というか、結構無理と思っておいたほうが良い)

お金を散財する時期も、極端に節制する時期も経験し、最近やっと、自分なりのバランスを見つけられそうな気がしている。

今になって思うこと

お金を散財していた時期、「私はお金を恨んでいた」ように思う。
お金は幸せを運んでくれるものというより、自分をみじめにさせてくれるもの、恥、嫌悪感、負のイメージがあって、お金を大事にしよう・大事に使おうなんてこれっぽっちも思っていなかった。そんな人が貯金なんてできるわけもない。お金が嫌いなのだから。

ようやくこんな年齢になって(遅い)、お金は自分を自由にしてくれる、安心させてくれる、コツコツ積み上げた成果、みたいなポジティブなイメージになってきていて、これからはお金を適切に大事にしていけそうな気がする。この気持ちを忘れないように記録しておくことにする。

最近ドラックストアで

最近ドラックストアで、ちゃんとレシートをもらった。支出はマネフォで管理しているのだけれど、念のため。ノーマネーデーを増やしたいから、いついくら使ったか記録しておくためにね。
回り回って、倹約を、恥ずかしいとかみすぼらしいとか思わない自分になれてよかったと思う。母への謝罪を込めて。

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