短歌 連作15首『妄想炭酸飲料水』
水中で正しくウインクすることで炭酸水が作れるらしい
ウィルキンソン・ジンジャーエールを寂しげに飲み干すまことにジンジャーなきみ
駅前でななめになっているきみに感嘆符二個縫い付けていい?
窓際の禁煙席は夜の溝 それでもふたりはベルを押し合う
わたしたち真夏に寄り添い合うけもの チェリーコーク/クリームソーダ
妄想の溶けたあわぶく取り込んで光を屈折させるビー玉
ラムネよ その透明の自意識の中にひとつぶ入れれば溢れる ラムネよ
ビー玉を口に含んでは出すあそび もっとあまいものを知っている
耳の穴から耳たぶの窪みまで垂れちまっているわたくしのラブ
霧状の妖精たちが粛々とガラスをたたいています すずむし
彼岸花咲かせる努力惜しむなよ 死ねるくらいの愛なんてない
もう見えない場所まで遠ざかろうとしたのに真上に飛んでしまった
ひとなつが額縁に入れられている 睫毛に夜露滲む早朝
泳ぎきれないほどの広さの凪のプールでひとりきり息継ぎをする
気の抜けた炭酸水をあたためる 一杯百円で売る 「あまい。」
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