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コルセットに翼 ージェシカの婚約ー

〜〜 はじめに 〜〜

*この短編小説は、作者がジェシカの瞳の色を、すみれ色だと思い込んでいた時期に書いた、2600文字ほどの短編です。
*婚約を決意した時期のジェシカとエリックの文通エピソードです。
*ジェシカのカラーの瞳はコミックスカバーの1点限りですが、ブルーグレーで描かれております。
*ボツにするには、ちょっと面白いエピソードなので、そのまま公開いたします。



 その日14歳の誕生日を迎えた、ランバート伯爵家の令嬢、レディー・ジェシカは、デスデモーナ女学校から呼び戻され、久しぶりにヨークシャーの大邸宅に戻っていた。

 通例、伯爵令嬢が寄宿学校に送られることなど有り得ない。
 彼女が10歳のとき、ランバート伯爵が再婚し、新しい伯爵夫人となったレディー・ランバートとは折り合いが悪かろう…という、伯爵の一方的な ”思いやり” によって、生母との思い出に満ちた美しい館から、閉鎖的な女学校に追いやられていたのだ。

 その屈辱的な境遇にもかかわらず、レディー・ジェシカは、同じ年頃の令嬢の誰よりも美しく誇り高かった。

 淡いすみれの瞳は一見やさしく、とらえどころのないなよやかさを漂わせているが、ひとたび獲物をみつけると、とたんに深い宵闇の色となって輝きはじめる。
 今も彼女は、そんな瞳で一枚の写真を食い入るように眺めていた。

 その写真の若い男性の名は、エリック・ローズデール。
 車椅子に座り、右目に眼帯をつけている。背丈はわからないが、膝掛けに隠された足の膝の位置と腕の長さ見る限り、すらりとした体躯の男性だと想像できる。
 少しくせのあるダークヘア。
 瞳の色はわからない。
ーーグリーンだといいわね……とジェシカは思った。

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