映画ダウントンアビー
映画ダウントンアビーを見てきた!
見てきたのだ!
初めてダウントンアビーのドラマを見てから、そろそろ10年になるという事実に驚いている。
この10年、わたしたちを取り巻く環境は、さほど変わっていない。
iPad Proで原稿が描けるようになったのは確かに大きな変化だが、ダウントンの人々が経験した変化(ドラマの中の10数年)を思えば、何も変わっていない…と言っても過言ではないだろう。
ドラマの第一話は、タイタニック沈没の1912年からスタートする。
郵便局に電報が届き、配達人が自転車でダウントンアビーに向かい電報を届ける。
同じ頃、蒸気機関車でダウントンに向かうベイツさん。
映画ダウントンアビーでは、郵便列車が冒頭に登場する。
この郵便列車にわたしはとてもわくわくした。
ただ郵便を運ぶだけの列車ではない、列車の車両が郵便局そのもの!と言ってもいいのだから。
この列車を初めて見たのは、ヨークにある鉄道博物館だった。
列車の中で郵便の仕分けが行われ、各駅から町へ村へと運ばれていく。
想像していた以上に躍動感のある、郵便列車内の映像が見られて、本当に楽しかった。
映画版では、手紙の配達人は自転車ではなくバイクに乗っている。ダウントンの屋敷は何も変わっていないように見えるが、電動掃除機が登場して確実な時の流れを見せてくれる。
この15年のあいだに登場人物たちは戦争を体験し、ヒロイン姉妹たちは、結婚や出産を経て、たくましく成長している。
戦争中に屋敷は病院として提供され、彼女たちは車の運転を覚え、事業にも挑戦し、愛する人を失いまた新たな恋をし、様々な経験が貴族のお嬢様でしかなかった彼女たちを、見事に自立した貴婦人へと変えていた。
長女メアリの成長は、ほんとうに眩しいほどだ。
すべてがとても美しく、かっこよかった…!
ドラマは長い。シーズン6までのあいだに、登場人物たちはそれはもう嵐のような運命に翻弄される。
わたしは中でも従者のベイツさんとメイド(後に侍女)のアンナのファンであったので、彼らがほんとうに幸せになれるのか否か、あまりにも心配で心配で、一時は見るのを止めたほどだ。(結局最後までちゃんと見てほっとしたのだが)
そして従僕から出世し、執事となるトーマス。
彼は同性愛者で、この時代にはとても生きにくい、下手をしたら投獄されて、何もかも奪われてしまうかもしれない人物だ。
彼はしたたかでありつつ、恋愛に関しては、いつも純情というか純真というか、かわいくてあぶなっかしくて目が離せなかった。
今回も、もし尺の長いドラマだったら、「はっ ……もしや〇〇に騙され、〇〇に………… トーマスー!逃げてーーー! 」となるところだが、映画は2時間だ。2時間でお話が終わるのだ。よかった!
なにがよかったのか、それは映画を見ればわかるのだけど、この映画は、とても良い意味で、ドラマのオマケなのだ。美しい箱にはいったプレゼントである。
目に星がきらきらしてるトーマスが見られるなんて、シーズン2を見ていた頃には想像もできなかった。
ドラマを見て、最後にこの映画を見ると、ほんとうにほんとうに、幸せな気持ちになれる。フルコースの料理をいただいて、最後に極上のデザートがサービスされたような、そんな満足感がある。
そしてまだドラマを見ていないが、この映画を見て、ドラマも見てみようと思った方にもギフトがある。
それは、登場人物たちが必ず幸せになれると、信じてドラマを見守ることができるというギフトだ。
未視聴の方はぜひ第一話からご覧いただきたい。
最後に映画のロケ地の写真を2枚貼っておく。
パットモアさんたちが買い物に来た場所。トラムが走り、20世紀初頭の英国が再現された、ビーミッシュ博物館だ。http://www.beamish.org.uk
4年前に拙作「天使がのぞきみ」の取材と下調べのため訪れたときも、ダウントンの時代だ!とときめいたけれど、その町を実際にパットモアさんたちが歩く姿を見るのは、また格別に幸せだった。
ダウントン・アビーという物語を見ることができて、ほんとうに幸せだった。登場人物たちには、これからまた、第二次世界大戦という試練が訪れる。けれど彼らは必ず、しなやかに戦い耐え、そして笑い、生き生きと時代を歩んでいくと信じられる。
ダウントンアビーは今も英国に、その美しい姿で佇んでいる。
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