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何故企業は成長を求めるのか?

今回も会社のメンバーと対話の中で聞かれたタイトルの質問に回答してみたいと思います。

資本主義の世界に生きていると当たり前のように感じるかもしれませんが、我々は常に成長を求められるんです。これってごく基本的なファイナンス理論が分かってないと、イマイチ理解できないんですよね。理解できていないながらも、仕方ないなぁーって受け入れていた方がほとんどではないかと思います。そのあたりについて、私なりの考えを、ファイナンスを学んだことが無い人にもわかりやすく記してみたいと思います。

個人の期初での目標も毎年少しづつ上がっていくのは、みなさんも会社での期初目標設定などの際に実感しているのではないでしょうか。これは、個人が年功序列的に昇給していくからという意味合いだけではなく、会社自体も右肩上がりの事業成長を求めらているからなのです。

自社株が絶好調!

本題と全く、関係ない論点からスタートしてしまいますが、私が勤めている(雇われている)会社の株価がぐんぐん上がっている。昨年の1Qでは急落したものの、足元では、昨年安値の二倍の株価となり、ストックホルム上場企業の時価総額ランキングで一位になってしまった(ちなみに、私は自社株もってません。。(´;ω;`))。

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株価収益率(PER)は42倍を超えており、プチバブルっている感が否めない。

PER(株価収益率)はrをリスク(割引率)、gを成長率とすると下記のように表記されます。

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数式は覚えなくても、リスクが少なくて、今後の成長が大きいと株価が高くなると覚えておいてもらえればよいです。

当社の例でいうと、PER=40倍ということはr-g=2.5%となる(理論的だが)。リスク(割引率)はどのように想定するのかは、難しいところであるが、加重平均資本コスト(WACC)を8%とした場合に、毎年5.5%の成長が見込まれていると解釈することができる。株式市場からも企業が成長を期待されていることがわかりました。

前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入りたいと思います。

株式会社はお金を借りて経営しているという大前提

会社は資本金(Equity)、及び借入金(Debt)により資金調達することで、資産を形成し、その資産をベースにお金を稼ぐことを課されている。

資本金とは「投資家から会社が利益を出した際には還元しますから、投資してください」といってお金を調達する方式(返済義務なし)。

借入金とは銀行などの金融機関、一般投資家などから「XXまでに金利ZZ%をつけて返済しますからお金を貸してください」と約束してお金を調達する方式(返済義務あり)。

資本金と借入金には、期限があるかないか、金利(リターン)が事前に決められているという違い(リスクの多寡の違い)はあれど、両社ともに投資という扱いであると解釈できる。

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余談だが、株式会社であれば、決算の際に必ず貸借対照表(B/S)を作成し税務署に提出しなければならない。B/Sの右側には、どのように資金を調達したのか?(負債なのか、資本金調達なのか)、左側が資金をどのような資産に変更したのかが記載されている。

バランスシートというだけあって、右側と左側の金額が一致します。即ち、調達した資金と同額を資産(現金含む)の調達に充てているという事。更にいうのであれば、会社の資産は投資家、金融機関からのお金を使っているという事である。

利益は誰のものか?

調達した資金をどのように使って、付加価値(利益)を出すのかが、企業運営である。その利益から投資してくれた金融機関や投資家にリターンを分配しなければならない。

損益計算書(P/L)を見ると、企業がどのように利益を生み出しているのかが理解できる。基本的なことだが、P/Lの内容を確認してみよう:

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TabisLand HPより引用)

売上高:商品・サービスを販売して、顧客から得た額

原価:売上を上げるために費やした費用(取引先へ支払った額)。見方を変えれば、取引先から受け取った商品・サービスの対価。売上から取引先の取り分と解釈できる。一般的には売買契約であり、会社の業績が悪いから支払わないということは許されず、必ず支払いをしなければならない。

販管費:売上を上げるために必要な間接的な費用。人件費、バックオフィス費用などもここに入ることが多い。これは、従業員へ支払う給料(労働力の購入)であり、仕事をするために使用するオフィスの対価、よって売上から従業員、オフィスオーナーの取り分。これも必ず払わなければならない。給料の支払いが滞る企業はよっぽど経営状況が悪いケースであろう。

営業外費用:金融機関への支払金利など。返済期限、支払金利が定義されており、必ず支払いが必要となる。金融機関の取り分。

税金:利益が出た際に、所定の法人税(法律により制定されている)を支払う。国、または地方政府の取り分。

当期利益:売上からかかった全ての費用を差し引いたもの。黒字であった場合には、株主へ配当として支払われたり、来期以降の投資に回すなどがあり得る。

株主が大きなリターンを求める理由

どこから売上を作るのか?(マーケティング)、そのためにどんな原価、販管費を使うのか?等々、会社の経営は基本的に経営者が決めることができる。一方で、株主からは利益を上げること、金融機関からはしっかりと(金利を含めた)返済を実施することを強く求められている。そういう意味で会社は利益を追求するために存在していると解釈することができる。

「利益=売上―費用」であるので、投資家からは売上を最大化し、費用を最小化することが求められている。日常の業務で経費を使う際には、その費用がどうやって売上を上げることにつながるのかを常に考えていなければならない。しかし、それが利益につながるのかは100%約束されたものではなく、リスクを伴う。会社の経営は常にリスクをとって、リターンを拡大していくという作業の連続である。

借入金であっても貸し手からしてみたら、投資。毎年の金利、返済期限が明確に決められている分だけリスクは小さい。銀行への返済が滞った状態が一般に言われる倒産という状態(ここでは、破産、再生などの細かいケースは割愛)。逆に言えば、倒産しなければ予測通りのリターンが得られる(債権放棄の細かい点も今回は割愛)

一方で、資本金への投資は返済が約束されている訳ではないので、投資側からしたら、リスクが大きい。リスクが大きいので投資家はそのリスクに見合うだけの大きなリターンを求める。これが、株主が大きなリターンを求める基本的な思想となる。

お金をどこにつかうのか?

会社は誰のものか?なんていう大きなテーマを語ることは難いですが、会社の資産は誰のものかという視点であれば、上記の通りお金を出してくれた人のものであると考えられる。

少し前までは、利益は株主のものであるという考え方が主流だったように思いますが、最近は長期的な成長を見込んで、従業員満足度を高めるために役員報酬を多く出す企業があったり(役員報酬上限額は株主総会での承認マター)して多様な考え方が出てきているように見られる。

株主とのコミュニケーション

さて、もう一度PER(株価収益率)の式を見てみよう。

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割引率(リスク)と成長率というパラメータで株価が決まる。自分たちの会社の株を高い価格で買ってもらうためには(出資してもらうためには)、リスクが低くて、成長率が高いという両面を説得しなければならない。

リスクが低いというのは事業がどれだけ軌道に乗っているのか、今後利益を拡大していくということをコミットしなければならない。これが右肩上がりの成長を求められる根本的な理由である。

今後の成長がないとなると、投資家からそっぽを向かれてしまうので、会社の経営ができなくなる→自分たちの給料の出どころもなくなってしまうのである。

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