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#10 実体験の法則 - どんなメッセージよりも記憶に残るもの

おはようございます。記念すべき#10となりました。ここまでブランディングの中でも、「ロゴ」にまつわるトピックが多めだったので、本日は別角度からのお話をできればと思います。

ブランドとは、①「違い」がわかる ②「心」が動く ③「イメージ」がつながる という3ステップで、人々の心の中に残っていく

#3 色違いの法則 より

…とこれからも、この「3つの視点」を当分こすり続けていく所存なのですが、「違い」を認識してもらった後に、最も難しくかつ最も重要なのは「いかにして心を動かすか?」そして「イメージがつながる=記憶に残る存在になれるか?」ではないでしょうか?これは私たち自身、日々の暮らしの中でも実は苦労しているところなのでは、と思います。

主張に一貫性を持たせるためには

浪費はしたくないけれど、いざ飲み会ではケチと思われたくはない。
好きな人ができたけれど、友達との仲は壊したくない。
目の前のケーキはもう一個食べたいけれど、太ったねとは言われたくない。

…世の中は、利己と利他のせめぎあい、エゴとエゴのシーソーゲームですよね。何か端的に違いを主張しようとしても、その主張に一貫性がなければ、人はそう簡単に信じてはくれません。どこをどう切ってもその主張を垣間見ることができて初めて「ホントにそうなのね!」となるわけです。

広告やPRと言った一方的なコミュニケーションでは、どうも生活者からピュアに好きになってもらえない。本当の姿を伝えきることができない。それっぽく言うと、エンゲージメントが築けない。そんな課題感が盛り上がり始めた2010年代、大手企業はこぞって「体験型の企業ミュージアム」をオープンさせていったように感じます。

進化する企業ミュージアム

そして、以前は工場見学などに留まっていた体験も、よりエンタメ化が進み、まるでテーマパークのように進化していきました。一例をまとめたサイトがありましたのでご紹介します。

企業ミュージアム進化の金字塔と言えばやはり、2011年にオープンしたカップヌードルミュージアム。そして2012年に「グリコピア・イースト」が開業し、企業ミュージアム全盛期へと突入しました。この背景にはどうも「記憶に定着するメカニズム」が影響しているように感じます。

人間の五感のうち、視覚や触覚・聴覚・味覚などは大脳新皮質を経由して、記憶に関係する「海馬」に届きます。ただ嗅覚のみ経由せず、海馬にも届きません。そのまま視床下部に送られることもあり、より記憶に強く印象が残ると言われているのです。

https://11201.co.jp/scent_brain/

どうやら鼻からの記憶が最も定着が良いようです。言われてみるとカップヌードルミュージアムを訪れた時も、そこで口にした麺の香りが一番記憶に残っているような気がしてきます。嗅覚と味覚が「食」における体験の最重要窓口だとすると、日清がこの領域に力を入れる理由も納得がいきますね。

ふと思い出すホテルロビー

そう言えば、マンダリンオリエンタルホテルのロビーって、とっても良い香りだったような…そんな記憶さえ、ふと思い出されます。これもブランド体験の一つですね。嗅覚の記憶は、視覚と違ってどこか刹那的な感じもします。だから単独ではなく、味覚や視覚との組み合わせが大事なのかもしれません。

MANDARIN ORIENTAL, TOKYO ORIGINAL BLENDED ESSENTIAL OIL」

食品を生業とする企業は、映像や紙を媒介としたコミュニケーションでは伝えきれないメッセージやブランドエッセンスがとても多い。とりわけ加工食品やお菓子は製造工程が見えにくく、ややもすると安心感を持ってもらいにくい。どうしても冷たい印象になってしまう… これは食品ブランドにとっては一大事です。そんな課題を脱却する特効薬が「企業ミュージアム形式での体験提供」なのでしょう。

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