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モーションアクターの呼吸

中二的なタイトルww

自分が仕事をする上で大事にしていることの一つに、「お相手の呼吸に寄り添う」があります。
相手の言うのは、この場合ディレクターやアニメーター、モーションデザイナーさん達。

事前に絵コンテや映像資料などもいただいているのですが、最近は軽く内容をチェックするだけであまりイメージを作らずに撮影に望みます。
(もちろん経験の浅い頃は、徹底的に熟読して、予想出来るあるとあらゆるパターンを考え抜いてから撮影に望んでいましたが)

理由は、クリエイターさんの好みがそれぞれ違うからです。
例えば「歩く」や、「振り向く」だけのモーションでも、キャラクターによってはもちろん、そのモーションをリードするクリエイターさんによってイメージがあります。
あまり硬め過ぎていってしまうと、自分の考えたものに執着が生まれて、無意識にでもそれを通そうとし、クリエイターさんのニーズからズレた事を押し通そうとする危険性があると考えるからです。

ですので資料は事前にもらっていますが、それよりもその場で受ける説明をとても大事にしています。
クリエイターさんは、もちろん体を使って表現することに慣れてるわけでありませんが、イメージを伝える為に体を使って懸命に説明してくださいいます。
モーションアクターは、そこから様々な事が読み取る努力が必要だと思います。


集中して、その方が抱いているイメージを掴みとります。
そうするとリズム、重心、表情、テンション、言葉によるイメージ、性格、得意な体の使い方など、その方は無意識に行っているであろう好きな体の使い方、快適なテンポやリズム…生体反応やバイオリズムというか、やはり呼吸という表現が一番しっくりと来てしまうのですが、それがおぼろげながら見えてきます。
いち早くそれらを読み取り、同調させ、自分の体にインストールする。
演じるよりの先にこれを徹底します。


経験の浅い時期は、説明の理解や、振り付け、気をつけるべきポイントなどに多くに意識をもっていかれます。
自分の内側にばかり気を取られてしまってる状態ですね。
これはつまり、クリエイターさんが欲しいものではなく、「自分が上手にやろうとしてる」という状態です。

しかし、これではニーズに応える事が出来ません。
自分では納得して演じられてるつもりでも、お相手の望む気持ちの良い動きや演技とはズレが生じてしまいます。

そうするとそこからまた調整を繰り返し…といった具合にどうしてもテイクを重ねることになってしまい、当然時間がかかってします。


ですので個人には「言語化出来ていない隠れたものは何か」をいち早く読み取り、それに対してアジャストなり刺さるであろうポイントをプレゼンをしていく。そういう状態が理想だと思っています。

初めましての方やお久しぶりですの方は、特に慎重に呼吸を探ります。
振り付けなんか本番直前、最後の最後に入れればよくて。
(台詞が沢山あるときなどは、そんなこと言ってられない事もありますがww)


収録初日の朝、撮影が始まったときにはどうしてもこの工程に時間がかかってしまいます。
午前中は予定していた分を撮り切れなくて現場が焦ったりすることもあります。
ただ午後に入ると、もう呼吸は理解しているのでテンポが早いです。
(もちろんこれはアクターだけではなく、現場全体が進行のパターンを把握出来てきた事でもあります。)

コーディネーターとして現場に入らせてもらうときにも、アクターの皆さんには「自分の確認をすることよりも、まず説明してる方へ意識をフォーカスしてください」ということを推奨しております。

どんな仕事でもそうだと思いますが、敵を知り、己を知れば、、、というやつですね^^
モーションアクターの撮影ではどうしても体を使ってのディスカッションが生じますので、それが顕著に現れます。

これを繰り返しているうちに、インストールした呼吸の数が増えてきます。
指揮する方がまだ経験不足であれば、色々な呼吸を提案してリードして差し上げることも可能になってきます。


少し話がそれますが、上記の理由により自分の場合は下記の3段階があります。

①作品に寄り添う(どれくらいの誇張具合を望まれる作品なのか)
②キャラクターに寄り添う(内面を表現にするのにどのような演技が適切か)
③クリエイターに寄り添う(この人のテンションをブチ上げてやるww)

です。


ただこれが通用しない場合があって。
それは現場のクリエイターさんの権限が極端に小さくて、その場で判断出来ないときです。

「私はアリだと思うんですけど、上がどう言うか分からなくて、、、とりあえず一番無難なので」

こうなってしまうと、お力になれる事には部分は少なくなってしまいます。


逆に、「俺はどうしてもこのモーションを撮りたいんだーー!!  仕様!?? んーー、…後でなんとかします!」

なんて風に言ってもらった日には、こっちもテンション爆上がりですね!!ww
はい、もうあなたのためにこちらも出来る限りを振り絞りましょう!!
ってなりますww
トータルバランスはもちろん1番大事ですが、こういった事で作品のクオリティが上がっていくのを感じられるとやりがいを感じます。

やっぱ自分でリスクをとって、楽しそうに仕事されてる方々と一緒に作品を作れるのは最高に面白いですね!
力になりたい!! と思えますっ!


脱線しました、話を戻しましょうww
自分の場合で、大体3〜4カット、多くても5〜6カット重ねれば呼吸をインストールできると思っております。

ある瞬間、説明を受ける前から、「こんな感じでしょうか?」「それです!!」のやりとりが出来る事があります。
そうすると「よし!今日も喜んでいただけるデータをご提供できるぞ!」と安心しております^^
気は抜かないですけどね。


アクロバットや、高度なアクションであれば、クリエイターさんの中にもご自分の内部に比較できる感覚をお持ちの方々は稀なので、見た目がカッコ良ければプレゼンは通ることもあります。

ですが、日常動作など動きが単純であればあるほど、クリエイターさんも普段から見慣れています。それによって呼吸も影響してくるので、それを的確に汲み取り、クオリティを上げてアウトプット出来るアクターであり続けたいと思っております。
まだまだ自分も修行中ではありますが、意識だけは。


以上、数々の素晴らしいクリエイターさんのフィードバックによって育てられていく、【モーションアクターの呼吸】の話でした!

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