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おばあちゃんにさよならを

大好きな祖母が、死んだ。
86歳だった。

祖母はとてもお茶目な人で冗談をよく言う人だった。お花と猫と、娘達と過ごす時間を何より愛する人だった。

祖父が白血病で若くして亡くなった時、祖母はまだ32歳だった。
その若さで3人の子を持つ未亡人になった。
その後再婚はしなかった。

遺された物のおかげで金銭的に苦労はしなかったものの、3人の幼い子供を一人で育てることはかなりしんどかったと思う。
ましてや四国の片田舎から出てきて、ずっと家庭に収まり、世間知らずだった祖母だ。
それ故に少女の様な純粋さを持ち合わせており私たち家族を和ませた。

祖母がこの世を去ったのはエイプリルフール。
冗談が好きな祖母らしいな、と思った。
桜が満開だった。
これもまた花が大好きだった祖母らしいな、と思った。

祖母は自分よりも家族を何よりも大切にしていた人で、与え続ける人だった。
冷蔵庫に貼られた紙には私を含む7人の孫の誕生日がメモされていた。
家の壁には孫と飼っていた猫の写真が沢山貼られていた。
誕生日や祝い事には必ず赤飯を炊いてくれた。
家に行くと温かいお茶を淹れてもてなしてくれて話をしてくれた。
自分は質素に暮らしていながら、家族にはお金を惜しまない人だった。

そんな祖母の死去は私たち家族に大きな悲しみをもたらした。
港を失った船のように帰る場所が無くなってしまった気がした。

祖母の死去を周囲の人間に言えるようになったのは亡くなってから半年以上経ってからだ。
口にして実感するのが怖かった。

一周忌を終え、少し気持ちも落ち着いて今祖母を思い出してコレを書いている。

私は祖母の様に「与えられる人」になれるだろうか。

祖母に貰った愛情は確かに私の中にある。
思い出として残っている。
この愛情を次は私が与えられるようになるまで、おばあちゃんに見守っていてほしい。


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