リスタート・ライン
西日の独房で、俺はため息をつく。
最近、妙なお勤めが続いていた。意味不明なアンケートの山に、賢そうなオッサンとの面談。退屈が何より嫌いな俺には一番の苦役だ。
そもそも俺は逮捕を納得しちゃいねえのに。強盗に窃盗。で…詐欺か。犯罪っちゃ犯罪だ。だが連中、奪った額の100倍は貯め込んでんだぜ?
「西村! 西村はいるか!」
看守が俺を呼ぶ。いねえよと答えると、奴はしかめっ面で歩いてきた。
「今日から別の独房だ」「へいへい」
独房の鍵が開く。俺は渋々外へ出て…
「うぐっ!?」
首筋に、何か、刺さっ…
… … …
包丁がまな板を叩くリズミカルな音。漂ってくる味噌と出汁の匂い。夕焼けに照らされた薄汚い畳。
そうだ、ここは俺の…いや、違う。すぐに違和感に気づく。これは映像だ。VRってやつなのか?
「裕平」
俺の名が呼ばれた。この声を、俺は知っていた。
「…お袋?」
俺は震えた声で返事した。出来の悪いCGは、16の時に死んだお袋を描いていた。
【続く】
それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。