見出しは難しい ~ 「推奨しない」の印象

WHOは3月28 日に「予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)」がCOVID-19
ワクチンの使用に関する指針を改定した旨を公表した。関連の報道を見ていて、少しだけ気になったので書いておく。

ネットニュースの見出しをいくつか並べてみる。
(時事=AFP)「健康な成人のワクチン追加接種、2回以降「推奨せず」 WHOが指針見直し」
(日テレNEWS)「WHO 新型コロナワクチン接種指針を改定 健康な成人に定期的な追加接種は推奨せず」
(TBS NEWS DIG)「WHO 新型コロナワクチンの接種指針改定 健康な成人「追加接種を推奨しない」」

WHOのリリースの該当部分は「The medium priority group includes healthy adults – usually under the age of 50-60 – without comorbidities and children and adolescents with comorbidities. SAGE recommends primary series and first booster doses for the medium priority group. Although additional boosters are safe for this group, SAGE does not routinely recommend them, given the comparatively low public health returns. 」である。

翻訳に特段の問題はない。強いていうと日テレ以外は、”routinely”のニュアンスを落としているがこれはひとまず置いておく。気になったのは、「not recommend」=「推奨せず(推奨しない)」という部分である。

英語の"not recommend"には「"recommend"しない」以上の意味はない。しかし、日本語の「推奨せず」には「”推奨すること”をしない」という意味だけでなく、(個人の語感によるのかもしれないが)「(当該行為を)するべきではない」という含意が感じられる場合があると思うのである。

記事の内容は、いずれもWHOのリリース内容に前後関係も含めて触れているので問題はないと思うのだが、見出しは文脈抜きに「推奨せず」という表現だけが使われるので、WHOが「追加的接種に否定的評価を下した」との誤解を招く可能性なしとはしない。

ワクチン接種に関しては、これまでもフェイクもしくはフェイクまがいの言説が大量に流布していることを考えると影響力のあるメディアは、「語感」的な細かいところにも気を配っていただきたいと思う。本件に関しては、下のような報じ方をしているメディアもあり、こちらの方が穏当な感じはするのである。

(ブルームバーグ)「新型コロナワクチン接種、健康な子供と青少年はもはや不要も-WHO」
(CNN)「WHO、コロナワクチンの指針改定 健康な子どもは各国の判断で」
(NHK)「WHO コロナワクチン定期接種の推奨対象を公表 高齢者 妊婦など」


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